騎手の成績 2024年4月
藤岡康太騎手が亡くなってから1週間が経ちましたが、ネット上では関連動画が沢山上がっており、それらを見てしまうとなかなか心の整理がつきません。JRAでの落馬死亡事故はずいぶんありませんでしたからね。こればかりは時間が解決してくれるのを待つしかありません。
騎手界隈ではクラシックが始まり、春のGⅠシーズンが本番に入ったものの、ルメールや藤岡康太の代わりとなる騎手が現れる気配は無く、未だにベテランと短期免許が幅を利かせています。若手騎手は推しの坂井瑠星が頑張っていますが、他は勝ち星だけのケースが多く、もうワンパンチ足りません。開催変わりで流れが変わってくれるといいのですが。
■4月期リーディング&通算リーディング
さて、4月期のリーディングを見る前にひとつご報告があります。実は先月、3月期の情報が間違っていました。本来であれば、第2回中山が終了した3月17日で一開催が終了、記事をまとめなければならないところ、なぜか翌週の高松宮記念の週まで含んでしまいました。どうりで数字が大きいわけだ・・・今から3月期の記事を直すのもなんですし、あれはそのまま放置します。大まかなもんだと思って下さい。4月期の分は、皐月賞が終わったので間違いようがありませんので、ご安心を笑
では改めまして、4月期のリーディングは川田が獲りました。ドバイに遠征してコレですからねぇ。2番手はさすがの中山巧者、横山武が入り、その次に鮫島克が食い込んできました。さらに少し下に斎藤新、10番目に岩田父の復活と、ルメール不在の中、ベテランと若手が入り混じる面白い展開となってきました。
通算リーディングを見ると、トップは不在のルメールを抜いて川田が躍り出ました。勝率は驚異の0.432です。頭おかしいんじゃないですかね。もう川田だけ買ってれば馬券は当たるでしょうが、そんなんしたら回収率はお察しなんで・・それと今月は重賞未勝利でしたね。強奪側なのに珍しい。
続いて戸崎ですが、ルメール不在なんでもっと伸びるかと思ったものの、そこまでではありませんでした。ただ、関東リーディングを堅守し、皐月賞も獲り、盤石感があります。先週のインタビューは泣きました。
そして4位に鮫島克が入りましたねぇ。これは素晴らしい。ローカルに回らず、裏開催できっちり勝ち星を重ねてきた戦略は成功でしょう。まだまだ騎乗馬にムラがあり、人気馬が集まったかと思えば、二桁人気ばかりという日もありますが、1番人気に乗せても勝率3割、3着内率3分の1という基準前後の数字ですので、一流騎手並みに乗れる騎手だと思いますよ。あとは重賞で結果を残せるかどうかですね。
5位の横山武は中山巧者感を見せつけてくれました。3月期と合わせて2開催で21勝なら彼として及第点でしょう。ルメール復帰までの東京でどれだけ活躍できるか、それが彼の今後の評価に大きく影響すると思います。
それから8位の岩田Jrは勢いに陰りが見えています。昨年は上半期に二桁勝利をバンバン記録していたのですが、今年は昨年同時期比で10勝も減っています。昨秋から二桁勝利はありませんし、そろそろネームバリューに限界なのかなぁとニヤニヤしながら見ています。
あとは、前述した岩田父と斎藤新も驚きですが、松岡や永島、吉田豊、小林美、藤懸、長浜などが3月期から勝ち星を大きく上げています。逆に、武豊や戸崎、ミルコ、松山、和田、吉田隼人などは勝ち星を大きく減らしていますね。武豊はドバイ遠征分、戸崎や松山は3月に大きく上げた分ですが、和田や吉田隼人はしっかり乗って未勝利ですから困惑しますね。何があった。
■重賞成績
3月期はGⅠ勝ちの坂井瑠星や戸崎以上にモレイラの活躍がスゴかったですね。来日直後なのに騎乗機会3回で3勝は頭が痛いですよ。一方、最近存在感が薄れてきている横山和がGⅠ勝ち、斎藤新や太宰などのリーディング中位から下位も勝っているのは面白いですねぇ。案外、裏開催の重賞ならそういう騎手がバンバン勝つ流れになっているのかもしれませんね。
人気馬での成績は10戦以上が順位の対象となりますが、順位が付いたのは今月も2名だけで、来月にはもう2~3人は入ってきそうですね。ここに入って来る騎手が少ないという事は、それだけ人気馬が特定の騎手に偏っているということですから、由々しき事態なんですよホントは。何とかならんかなぁ。
■記録
荻野極 『JRA通算200勝』
石田 『JRA初勝利』
石神深 『JRA初勝利』
荻野極は坂井瑠星や藤田と同期の9年目の中堅騎手ですが、100勝を達成したのが4年目ですから、ずいぶんと時間が掛かったような気がしますね。関西若手の3年目のジンクスを地で行く騎手で、素行の悪さから信頼を失ってからものすごく遠回りをし、一昨年にやっと重賞初制覇とGⅠ初勝利を達成したのに、そこから飛躍に繋げられませんでした。ポジション的にもう少し上に来てほしいものです。
石田は2年目、136戦目での初勝利となりました。長かったねぇ。昨年の3着内率は0.019という滅多にお目にかかれない数字を叩き出したわけですが、今年は大きく改善しています。2、3着も増えていますし、ひとつひとつを丁寧にする事で信頼を積み重ねて行けばもっと勝てるようになると思いますよ。
ルーキーの石神深は全33回の乗鞍で、唯一の人気馬でのチャンスをモノにし初勝利を挙げましたが、まだまだこれからです。同期には4勝を挙げた長浜を筆頭に複数勝利をしている者もいます。まだ未勝利の同期がいると思うのではなく、上を向いて精進して欲しいですね。
■騎乗停止等
斎藤新 4月7日、福島10Rで斜行、4月20~21日まで騎乗停止
■短期免許組
まずは先週で短期免許期間が終了したムル様ですが、あまり目立った活躍が見られなかったという意見があります。確かに重賞勝利などはありませんでしたが、今年来た短期免許組の中で、現在のところ勝率、連対率でトップ、3着内率で2位となっており、話題になったキング姐さんより数字は良いです。キング姐さんが尖がった成績なら、ムル様は安定した成績という感じでしょうか。
一応、2022年のドイツリーディングジョッキーであり、短期免許期間を一ヵ月残しているので秋に来ようと思えば来れますが、リーディング獲らないと来年以降の来日は難しくなります。今回、ドイツ騎手免許で来ているので、たぶん今年はドイツを主戦場にすると思いますが、ドイツだと短期免許の取得要件はリーディングジョッキーまたはGⅠ2勝以上であり、ドイツの指定外国競走はバーデン大賞のみなんで、リーディング獲らないと来年、ムル様見れなくなっちゃいますねぇ。
そして上で少し触れたモレイラですが、皐月賞でも7番人気のコスモキュランダを2着に持ってきており、重賞4回騎乗で3勝、連対率100%とかどこのマジックマンでしょうか。ルメールが不在な分、モレイラ買ってれば良いという状況になりかけています。
まぁモレイラは現状、来年以降の短期免許が取れない状態です。ブラジルリーディングは前々シーズンに86勝で6位だったのに、今年は50勝と絶望的で、GⅠ要件もブラジルや豪州で勝ちまくっているものの、指定外国競走は一つも無し。JRAのGⅠで、やっと1つ勝ちましたが、安田記念までの6つのGⅠを勝てるかどうかと言う状況です。
そう言いつつ、ヴィクトリアMあたりであっさり勝つ場合もありますし、去年みたいにダービーでブッコ抜くことだってあります。というか、社台グループが全力でサポートすれば3~4つくらい勝っても全然不思議じゃありません。ただ、それをしたらJRAが黙っていないかもしれませんね。何事もほどほどが重要ですから笑
そう考えると、GⅠ2勝という要件は少し厳しくした方が良いかもしれません。これまでの流れを見ると、ムーアのように各国のGⅠを勝ちまくって来日するケースがある一方、凱旋門賞など大きなGⅠを獲った騎手が記念に来日するケースもあります。様々な騎手が来日してくれるのは日本競馬にとってプラスになる反面、マイナスになっていることも事実です。
例えば、JRAのGⅠならワンシーズンで3勝、2年で5勝とか、指定外国競走であればGⅠ2勝だが期間を3年に延ばすとか、初めて取得する場合は要件を緩和するとか方法をいくらでもあります。
リーディング要件だって3年連続3位以内とか惜しいところまで来ている騎手を拾う方策だって取れるでしょう。そうすることで、例えばCデムーロのようにリーディング上位に食い込むものの微妙に足りない騎手が来れる一方で、モレイラやレーンのようにGⅠ要件での来日を望む騎手が一回の来日で有力馬を集中させ、JRAのGⅠを2勝して要件を満たすなんてケースは減るわけです。
レーンの時に、内規に関わることだから情報公開しないなんて言ってないで、短期免許制度自体を再検証する時期が来ているのではないでしょうか。
■その他
さて、今月はやはり藤岡康太騎手の話は避けて通れません。
先週までの分は、こちらの記事にまとめておりますので、お時間ご都合よろしい方はどうぞご覧頂けたらと思います。
そんな藤岡康太騎手のJRA・日本騎手クラブの合同葬が15日(月)に執り行われました。関係者のみの開催となりましたが、報道陣は入っており、多くの関係者が故人と別れを告げていました。
ニュースの写真などを見ると、いつも笑っていて、負の感情を表に出さない武豊がかなり涙を流していたり、ミルコの沈痛な表情などは感情がストレートに伝わります。また新人の高杉吏麒も涙を流しながら手を合わせていたのが印象に残っていますし、これに皐月賞での友道先生の涙とかを合わせてみると・・見るもんじゃないですね。こちらの涙腺が大変になります。
そんな中、藤岡康太騎手と同期の浜中が弔辞を読みました。何と言うか、心に響くんですよね彼の言葉は。今でこそ浜中は「もういいでしょう」と言われて久しいですが、そのきっかけとなる最初のレース、マイルCSの時は、自分を競馬の世界に導いてくれた祖父が亡くなった直後だったんですね。
なんでも、前週に会いに行った時点で1週間持つかどうかという状態で、奥さんに先に福岡の実家に戻ってもらい、レース後の月曜に行くと伝えてあったそうですが、マイルCSの当日に奥さんは競馬場に来ており、表彰式のあとに「実は・・」と切り出された時には「もう分っていた」そうです。
既に話すこともできないような状態の祖父が、もしかしたら見ていてくれるかもしれないと思い、あのレースはとにかく勝ちたかったとがむしゃらだったと本人は回顧しています。
そして気持ちをコントロールできず、必死になった結果、あの大斜行を引き起こし、多くの人に迷惑を掛けただけでなく、GⅠ勝利は認められるという非常に複雑な状況になってしまいました。
若くしてリーディングを獲った逸材でしたが、GⅠ未勝利でのリーディングだったりと、なかなか名実が一致しない現状に苦しみ、騎手として大恩ある祖父を大舞台の直後に亡くしただけでなく、多くの人に迷惑を掛けた斜行を繰り返して「ジョッキーを続けていく自信がない、辞めたい」と言葉にするほど追い詰められていた浜中。「もういいでしょう」と言ってしまう気持ちは分からんでもないです。たぶん、繊細なんでしょうね。
師匠の坂口先生の定年時にも、阪神に来れない先生に頼み込んで午後から来てもらい、目の前で勝利をプレゼントして、後検量前に先生と一緒に大泣きしたエピソードなんかも、飄々というか、泰然自若というか、普段のそういう面からは見えない隠された浜中の繊細さが見えるような気がします。今村のような図太い神経を少しでも持ってもらいたいと思いますねぇ。いやっ、むしろ今村が浜中のような繊細な心を学ぶべきなのか・・・
そんな浜中の弔辞がこちらです。
「康太。今日はこんなにたくさんの人が集まってくれて、よかったな。一般のファンの方も来てくれたみたい。本当によかったな。(同期の)丸田が食あたりになったらしくて、来られていないんだよね。ありえないと思って、説教してやろうと思ったけど…。あいつは昨日、福島のメインで康太が乗った馬に乗って、しっかり勝ってたよ。めちゃめちゃかっこいいレースをしていたよ。だから許してあげよう。
俺が弔辞を読むことになったと聞いて、心配していると思うけど、最後まで聞いてやってな。康太とは15歳のときに競馬学校で出会って、20年たつから、俺の中では康太が一番の親友であり、ライバルであり、本当に特別だった。誰にでも優しくて、気配りができて、人が集まって、人気者だったよな。そんなところが最大の良さだと俺は思っている。
初騎乗初勝利で、ジョーカプチーノでG1を勝って、帰ってカプチーノを飲みますって言ってすごく滑って、でもそんなところもやっぱり華があったよね。去年のナミュールは乗り替わりで素晴らしいレースだった。あれは康太でなければ勝っていなかった。本当に誇らしかったです。
もっと騎手を続けたかったよな?康太が一番悔しかったと思うし、もっともっと活躍すると思っていた。康太の分は、俺たち23期がしっかり頑張るから。奥さんや子どもの分もしっかり頑張って、俺たちが助けるから。ちゃんと見ててな。康太に会えてよかった。康太が同期でよかった。今まで仲良くしてくれてありがとう。康太は23期の中で宝物です。本当にお疲れさま」
一般的に心に響く弔辞という感じではないですが、号泣しながらこれを読む浜中の姿に、私には心を打たれるのです。なぜかな。
同時に、浜中にこうさせた藤岡康太の大きさが分かります。普通に23期生の潤滑油のような存在だったのが、いつしか騎手界隈、競馬サークルの潤滑油になっていったように思うのですよ私は。
あぁ・・なんかもう書くのがしんどいですね。必死に応援していたわけじゃありませんが、彼の存在の大きさは良く分かります。本当に惜しい騎手を失いました。
繰り返しになりますが、心よりご冥福をお祈りしたします。
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