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短期免許の条件は?

一昨日のヒューイの記事を書いてて思ったのですが、短期免許の条件って皆さんはしっかり理解してます?私はめっちゃ曖昧です。一応、JRAのHPで一般事項とか短期免許とか調べたんですけどね、コレ!という項目が無くて、例えば競馬用語辞典の免許には『ただし、外国の調教師又は騎手に対しては臨時に試験を行うことがあり、試験に合格した者は有効期間3ヶ月以内の免許を受けることとなる』としか書いてないし、データファイルにも競馬のルールにも書いてないんですよ。

競馬ニュースを見ても2017年から短期免許の基準シビアになるという部分がメインで全体像は全く分かりません。辛うじて分かるのは【母国のリーディング順位(前2年以内)】または【JRAが指定する外国競走を通算2勝以上】という部分のみです。それ以外は【新規及び騎乗停止が受けた、もしくは制裁点数が15点以上の場合の免許期間】と【同時に5人まで】というくらいでしょうか。

その【母国のリーディング順位(前2年以内)】も細かく分かれているようで、北米地区では賞金リーディング30位以内、英仏では勝利数リーディング10位以内だったのが5位以内、愛国と豪州は3位以内に変更されたとの事。ドイツとニュージーランドは1位のみで、障害騎手は【本拠地において過去2シーズンで1位の騎手】だそうです。

【JRAが指定する外国競走を通算2勝以上】は、ジャパン・オータムインターナショナルの4競走(ジャパンCやエリザベス女王杯、マイルCS、チャンピオンズC)で褒賞金の対象となる『指定外国競走』58レースで通算2勝以上していれば良いとの事。この『指定国外競走』はJRAのHPにPDFがありました。

短期免許は【同時に5人まで】発行されますが、5人を超える場合は審査があるそうで、実績から判断し、それが甲乙つけ難い時は日本での成績、制裁の少なさで判断するそうです。

以上の内容は、ほとんどの人が競馬ニュースを見ていれば何となく聞いた事がある内容だと思います。ただ、上記の内容は複数の競馬ニュースを総合して判断した内容であってJRAが発表しているかどうかの裏づけは取れていませんし、細かい部分は分からないままです。そのため、どなたか『JRAのHPのここに載っている』という情報がある方、ぜひとも一方頂ければと思います。

なお、以下の記事は、上記に書いたとおりの内容のみを理解している者が執筆していると考えて読んで下さい。

短期免許の条件が曖昧だという話はしましたが、何がどう曖昧なのかという点は人それぞれだと思います。私個人は緩いと思う点がいくつかあり、そうした部分は改正するか、しっかり説明する事を求めたいですね。

母国のリーディング順位

まず、【母国のリーディング順位】については【母国】という定義が曖昧です。欧州、香港、南アフリカなどは運営組織が統一されている所は良いですが、豪州のように地区毎に分かれている場合は地区毎の成績となるようです。

レーン 2019年

これは昨年、レーンが短期免許を取得した際のリリースなんですが、母国というより豪州の【ヴィクトリア地区】のリーディング2位という記録で条件を満たしているのが分かります。

豪州は地区毎に統括団体が分かれていますが、それならアメリカのように統一機関が無い国は、各州の運営組織が発表するリーディングでも良いのでは?と思ってしまいます。昨年度のカナダリーディング3位で、今年日本人初のエクリプス賞を受賞した木村和士も条件を満たしていると考えるべきですよね?なぜ北米リーディングという大きな括りにしているのでしょうか?

もしアメリカの各州やカナダを地区分けしたリーディングで判断すると来日する騎手のレベルに疑問符が付くというなら、南アフリカで2年連続でリーディング及び見習い騎手チャンピオンに輝きながら、香港でワースト記録となる140連敗を喫したヒューイのレベルはどうなるのでしょうか?結果的には満足するレベルの騎手でしたが、来日前はそんな事分かりませんよね。
だからこそリーディングやGⅠ勝ち鞍で判断するのではないでしょうか。

また、【前2年以内】という条件も基点をどこにするか曖昧です。今年来日したミナリクの記録をリリースで見てみると

ミナリク 2020年

2018,2019年のリーディング順位で条件を満たしていないので、条件を満たしたのは2017年のドイツ1位という事が分かります。おかしいですよね。2017年中にシーズンが終了してリーディングが確定するので、少なくともこの条件で来日できるのは2018,2019年のみのハズですが?

ちなみに2019年に初来日したブロンデルのリリースはこちら。

ブロンデル 2019年

ん~2019年1月の来日なら2017,2018年の成績で判断するハズなんですが、なぜか2016年のフランス4位で免許を取得できたようです。あれあれ?【前2年以内】はどこに行ったんでしょう?それとも【JRAが指定したGI競走を通算2勝以上】という条件なのでしょうか。

JRAが指定したGI競走を通算2勝以上

では【JRAが指定したGI競走を通算2勝以上】という条件を見てみると、上記のとおり、ジャパン・オータムインターナショナルの4競走で褒賞金の対象となる『指定外国競走』58レースで通算2勝以上している必要があります。この条件にも前2年以内が付くとする競馬ニュースと、遡って2勝していれば良いというニュースがありました。どっちなんでしょう?

他の短期免許のリリースを見てみると、主なGⅠ勝鞍は前2年~当年までの計3年分が記載されています。この事からこの条件にも前2年以内が適用されるのではないかと思うわけですが、しかし先ほどのミナリクのリリースには2017年バーデン大賞、バイエルン大賞、2018年ドイツオークスしか記載されていません。『指定外国競走』58レースの中でドイツの競走はバーデン大賞のみなので、前2年以内を適用するとミナリクはこの条件を満たせない事になります。すると今年ミナリクが条件を満たす事はできないハズなんですが、普通に短期免許で乗ってましたよね。つまり、この条件は前2年以内という縛りは無く、遡って2勝以上していれば良いう条件である事が分かります。

そうなると今度は別の問題が浮上します。『指定外国競走』を2勝以上していればいつでも短期免許が取得できるって・・条件緩くない?そうりゃそうですよね。どんなヘッポコ騎手でも、たまたま2勝してしまえば来日できるんですよ?日本人に例えるなら、母国の大レース(八大競走など)を2勝している騎手が短期免許が取得できるとしたらどうでしょう。北村宏や吉田豊、内田、相談役、熊沢などが来日するんですよ?『はぃ?・・えっ?』となりません?

ちなみに先に挙げたブロンデルは『指定外国競走』どころかGⅠ未勝利でした。おぉい!GⅠ未勝利で、リーディング5位以内をギリギリ満たしただけかぁい!短期免許の外国人で史上最低の呼び声高いのも納得だわ。

あと、調べていく内に気になったのが【GⅠ競走を通算2勝とはJRAのGⅠも含まれる】【過去2年において、インターナショナルカタロギングスタンダーズに定めるPartⅠ競走の内、GⅠ競走に優勝している】という条件があるらしいです。個人ブログに書かれていた事でソースがハッキリしないのですが、少なくとも競馬ニュースでは見た事はない条件なので、コレがそうなら『周知徹底しろよJRA!!』となるのですが。

短期免許制度の目的を再確認しよう

私は、短期免許はあくまで【外国人騎手の招いて日本人騎手の技術向上】を目的とする制度ですので、落ち目とは言いませんが【巧いけど、そこまで言うほどじゃないよね】という騎手に発行する必要はないと思います。コレ重要なんでもう一度言います。【そこそこ巧い程度なら短期免許を認めるな】

だってそうでしょ?女性騎手のリサ・オールプレスならともかく、G・ブノワやD・バルジュー、K・ティータン、M・デュプレシス、D・マクドノー、F・ミナリク、F・ブロンデル、S・フォーリー、薬物のL・コントレラスなどの3着内率は0.250以下なんですよ?

これは今年の5/4現在の日本人騎手(ミルコ、ルメール、障害騎手を除く)のみで3着内率並べた場合、20位以下の数字ですからね?そんな騎手を呼んでどれだけ日本人騎手の技術向上に寄与できるのか甚だ疑問ですよ。

じゃあ、なぜこのレベルの騎手を呼ぶのかと言えば、馬主が傭兵を欲しがるからです。日本人騎手じゃ信用できない、だから来れる外国人はレベルに疑問符が付いても呼べ、とね。そうなるとJRA所属騎手、特に若手は大打撃です。そこでJRAは前述のとおり2017年から短期免許の条件を厳しくして対応しました。【一定の成果が得られた】との理由には、薬物コントレラスの問題はもちろん、JRA所属騎手の騎乗機会の確保という隠れた名目も存在するわけです。

すると馬主側は数少ない外国人に有力馬を集中させます。数が少ないから当然と言えば当然ですが、その結果、3着内率は跳ね上がり、驚異の外国人騎手が誕生する事になります。これが分かる数字として、2015~2019年の短期免許外国人の勝率と3着内率を挙げてみます。

2015-2019短期免許

ちょっと小さくて見づらいですが、これは短期免許時のみの成績で、ワールドスーパージョッキーズシリーズの分は含まれていませんし、2016年のモレイラは2週間のみなので異常な数字となっている点に留意して下さい。

さて、この表の見ると勝率は2015年に最高24.6%だったのが、2017年の制度改正後は33.7%まで上がっており、昨年も30.4%と大台と突破しています。
3着内率も最高43.1%だったのが61.3%まで上がっており、今年のマーフィーやレーンも0.500を超えています。かつて『3着内率0.400超えってすげぇ騎手だな!』と言っていたのが、今では『3着内率0.400?まぁまぁだな』と言われるわけですからね。たった5年前の話ですよ?

こうなるともうイタチごっこですよね。JRAと馬主側の愉快な追いかけっこですわ。きっとJRAも馬主も騎手も調教師も関係者もファンも満足する制度はできないでしょう。他にやるとしたら、私が前々から口を酸っぱくして言ってる【短期免許の外国人に対する騎乗数の制限】くらいしかないかなと思います。

※【短期免許の外国人に対する騎乗数の制限】については、『短期免許の外国人騎手成績と制度改革の必要性② 』の記事に書いてあるので、良かったら見てください。
https://note.com/boost_quinty/n/n2c4162dc2857

あとは、できるかどうかは別として契約馬主の制限でしょうか。【短期免許の契約馬主は年間一人まで。契約馬主になるには前2年において出走数、勝利数等の一定の条件を満たす場合に限る】とかね。そうなると吉田某は契約馬主を探す必要がありますし、さらに【契約馬主は期間中、短期免許を受けた騎手に対し、一定数以上の騎乗機会を与える事】なんて条件を付けたら、さぁ大変。吉田某本人が所有する馬に一定数以上乗せないといけないから、その期間中に所有馬を走らせないといけませんし、前2年の勝利数をクリアするのは厳しい面があるかもしれません。

もちろん、サンデー、シルク、キャロットなら可能でしょうが一人までですし、そもそも法人名義を認めないとなれば某大手馬主グループは大打撃でしょうね。そうなったら某大手馬主グループとJRAの壮絶なケンカの始まりです。

制度改正の効果

ただね、制度改正後にデビューした新人騎手は乗れる騎手が多いのも確かなんですよ。改正直後の2017年は武藤雅、横山武、川又、2018年は山田(笑)、西村、2019年は菅原、岩田Jr、斉藤新、団野大成など、私が頻繁に取り上げている騎手ばかりで、印象にも数字にも残る騎手達です。新人が騎乗馬を確保できているのも短期免許の外国人が少なくなったとも考えられます。

一方、改正前の2016年にデビューした藤田、坂井瑠星、荻野極、2015年の野中君、鮫島克、2014年の石川などは、なかなか殻を破れない印象を受けます。藤田はネームバリューがあるので辛うじて騎乗馬を集めやすいですが、坂井瑠星は昨年重賞3勝、鮫島克も今年初重賞を獲りながら勝ち星では伸び悩みましたし、野中君や荻野極は一度失った信頼を取り戻せていません。これらは短期免許制度が改正された事だけが理由ではありませんが、大きな要因の一つと言えるでしょう。


長々と書いてきましたが、詰まるところ【短期免許制度はJRAがどう考えるか】なんですよね。制度を厳しくした結果、『若手を中心に成績が上がっており、成果は出ている』と考えるのか。それとも人数を絞った結果、『特定の騎手に馬質が集中し、1ヶ月の短期免許の勝ち星を抜くのに4ヶ月掛かるという事態を重く見る』か。自前の兵隊を取るか、傭兵を取るか、ですよ。

あと短期免許制度の運用については、マスコミも誰も突っ込まないので真相は闇の中でしょう。だって半年前のとある競馬コラムで『ミナリクは2020年に短期免許を取れない』と書いた記事がありましたが、その2ヶ月後にはしっかり短期免許取ってるのに何も続報が無いんだから。お上相手にゲフンゲフンしたのでしょうか。

こうなると誰か突っ込むのかwktkしながら待つのもまた面白いですね。誰かJRAに質問状とか送ってくれないかな。私?面倒ごとは某SNSでお腹一杯です。

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