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騎手の成績 2024年8月
やっと夏競馬が終わりましたね。例年は苦手で、休みがちな夏競馬ですが、今年は序盤から調子が良くて150%弱の回収率となりました。完全に予想外で、オリンピック効果が出たのかな笑
騎手関係では不幸な事故もありましたし、例年より多く休養を取る騎手が居て、酷暑と言われる日本の夏で昼間に屋外で競馬を行うのはやはり危険だと思いました。私が提案しているように、せめて2週間だけでも開催を止めても良いと思うのですよ。今夏で言えば、7月中旬から下旬が最もきつく、毎日40℃近い気温で命の危険を感じましたが、8月の中旬以降はそうでもなく、暑いは暑いものの35℃くらいまでで何とか頑張れる気温が続きましたからね。7月下旬は鬼門です。止めましょう。
■8月期リーディング&通算リーディング
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さて、6週間続いた8月期の成績を見てみましょう。まず、7月期はルメールや川田の2トップが休養でしたが、復帰した後の成績は明暗が分かれました。8月期に断トツでトップだったのはルメールで、川田は10勝以上差を付けられた4位。川田はWAJSでも最下位でしたし、らしくない感じはします。
その他はリーディング上位が順当に入りましたが、7月期2位だった松山はまさかの圏外。11勝を挙げてはいるのものの、6週間で11勝はリーディング上位からすれば少ないですからねぇ。丹内のように大爆発した騎手もいますし、埋もれてしまったのは致し方無い。
また、松山以外の騎手が軒並み数字を上げている中、もう一人落としている騎手が2ヵ月の海外武者修行を終えた岩田Jrです。帰国後2週間での成績であるため落ちて当然なんですが、勝率や3着内率を見ると、出国前とほぼ変わらないか、少し落とした感じになってます。確かにネット上でも良くないという話は出てましたが、言うほど酷いわけではなく、そんなに変わっていないというのが正解かも。もちろん良い時と比べたら悪いのですが、勝率が0.100ちょっと、3着内率が0.350前後の騎手ですからね。こんなもんです。
あと先月3位だった菅原が勝ち星を半減させたのは、急性虫垂炎の再発防止の手術を受け2週間休みだったからです。4週で6勝なら菅原クラスなら妥当な数字ですが、GⅠジョッキーになったわけですし、もう一皮剥けるためには10勝弱が欲しいところですね。
通算リーディングを見ると、ルメールがトップを奪い返し10勝差を付け、早々にリーディングの当確ランプを灯しました。予想外の大勝でしたね。これであと数年で引退するって?またまたぁ~って感じですよね笑
2位の川田は普通にこんなもんでしょう。15勝もすれば十分じゃないですか。WAJS最下位でネット上では相当叩かれましたけど、川田が勝てるのは強い馬を厳選して乗っているからであって、高い勝率も3着内率もそれがあってこその数字だって昔から言ってるから今さら感がねぇ。
確かに上手い部分もありますよ。さすがって部分も多々ありますよ。しかし、いざそうでもない馬に乗って、さらにホームとはいえ世界の名手を相手にすれば、こういう成績でも全くおかしくないと思えるような腕前ってことなんです。だからこその厳選なんでしょう。川田の褒められる部分は、そういう事ができる立場に、自分を持っていき、それを維持している事だと思います。
坂井瑠星は、4位ですけど上位3人と随分と差が開いた印象を受けます。というか、今年5回も海外遠征をしている坂井瑠星より勝ち星が少ない横山武や松山、鮫島克、西村などはもっと頑張らないとマズイんじゃないですか。坂井瑠星は、3着内率は高いのですが、勝率に結びついてないんですよね。取りこぼしというほどではないのでしょうが、もう2つ3つ勝ち星を増やせるようになると上位3人に挑戦状を叩きつけられると思うのですが。
あと気になるのは11位の佐々木でしょうか。関西若手の3年目のジンクスも関係ないとばかりに夏の重賞2つと、キャリアハイを更新する勢いで成績を残しています。まだまだムラがありますし、ローカル専門のような感じですが、西村もそんな感じでしたし、中央四場での活躍が大きな転換期になるでしょうねぇ。個人的には西村、岩田Jrより期待しています。
■重賞成績
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8月期は13の重賞がありましたが、複数勝利は幸だけでした。最大7Rに騎乗できますので、巧い具合に分かれた感じでしょうか。上位陣がほとんど勝てず、中位以下の騎手が勝っているのが特徴で、あれだけ勝ちまくったルメールが重賞を勝ててないのは面白いですね。
また、坂井瑠星、横山武、岩田Jr、西村、鮫島克などリーディング上位の若手は、夏競馬にもう1つ2つ重賞を獲って欲しかったですね。特に鮫島克はローカルでの勝ち星が6割を超えますから、秋競馬の騎乗馬確保のためには重賞獲ってアピールが欲しかったところですねぇ。
人気馬での成績は10戦以上が順位の対象となるため、松山がランクインしましたが、12戦4勝、着外8回と、これまた両極端な数字です。松山の成績を眺めていると分かりますが、さもありなんという数字です。
逆に最も数字が良いのが横山武で、3着内率0.636です。ここまで安定していると馬券を買う時に安心ですよね。勝率も0.273と4分の1以上勝ってますし、人気馬に乗った時は買いでしょう。また、最も多く人気馬に騎乗している川田は29戦で3着内率0.552、有力馬ばかりの川田にしては物足りない数字です。というか、オッズの低い人気馬で2分の1しか当たらないなら、回収率で見たら厳しいんじゃないでしょうかね。7勝しているのは立派ですが、数多の敗戦があるのも忘れてはいけません。
ちな、ルメールは22戦で3着内率0.500で、これまた物足りない数字です。というか、今年は重賞3勝しかしていない点がどうなんでしょうか。落馬による休養や夏季休暇があった影響はあるでしょうが・・ねぇ?
それからランク外ではあるものの、横山和は6戦して着外1回とキッチリ馬券に持って来ている点がありがたいです。菅原も7戦して着外2回ですし、リーディング上位には入れないものの、腕が立つ騎手は重賞でも結果を残していますし、もっと騎乗馬が集まってもいいような気がします。
■記録
ルメール 『JRA通算1900勝』
『夏の新潟リーディング(21勝)』
鮫島克 『JRA通算500勝』
武豊 『札幌リーディング(17勝)』
北村友 『JRA通算900勝』
石川 『JRA通算300勝』
木幡初 『重賞初勝利』
ルメールは2015年3月にJRAに移籍してから今年で10年目です。それで通算1900勝とはすごいですね。移籍前の240勝があるにせよ、年間160勝以上を積み重ね続けての記録ですから、いかに社台Gに寵愛されているか分かります。
鮫島克は、コロナ禍で勝ち星を伸ばした若手騎手ですが、もっと勝ってると思いましたね。猛烈な末脚で迫る坂井瑠星を抑えている現状ですが、今年度末で逆転されそうな雰囲気があります。もっとやれると思うものの、何だか恵まれないというか、持ってないんですよね。
武豊は38年目で初めての札幌リーディングだそうですが、メディアの皆様は急に北海道リーディングという言葉を使い始めてませんかね。函館&札幌の合計勝利数によるリーディングだそうですが、では昨年の北海道リーディングは誰かと言えば答えられないんじゃないですか。だって普通に検索したら函館リーディングは〇〇騎手、札幌リーディングは〇〇騎手、とは出ますが、北海道リーディングは〇〇騎手って見ないですよ?
こういう記録って、以前はどうなの?それと比べてどうなの?って部分が大切で、今年は誰誰が獲得しました、去年は誰で、一昨年は誰です、って部分を見て、そういう記録なんだ、すごいねぇ~となるのであって、今年だけの記録をポンッと出しても・・・・で?となるわけですよ。そうなると、こういう記事は、ただ記録達成した!!すごい!!って持ちあげたいだけの太鼓記事って見られてしまうので、避けた方が賢明かなと思います。よく野球のメジャーリーグの記事でもあるでしょ。〇〇年以降、○○という条件で、○○という数字以上を残した選手は〇〇人しか居ない記録です、みたい記事。そこまで細かく条件を設定した上で、5とか10とか刻みではなく、3とか7とか微妙な数字で区切った成績を見せられてもねぇ~と思ってしまう老人なのです私は。
あと、木幡初は重賞初勝利おめでとうございます。木幡3兄弟の長男ですが、デビュー11年目で待望の重賞初制覇ですね。お父さんに似たのか、なかなか勝ち星に恵まれませんし、次男が先に重賞2つも獲って200勝以上挙げる活躍を見せていて、兄として悔しい部分もあったでしょうが、これからも精進して頑張ってほしいと思います。
■騎乗停止等
松山 8月4日、検量に間に合わず、8月17~18日の騎乗停止
松若 8月2日、酒気帯び運転及び物損事故により検挙されたため
裁定委員会の議定があるまで騎乗停止
松岡 7月28日、新潟7Rで鞭の不適切使用、8月10日の騎乗停止
大江原比 8月31日、新潟8Rで体重調整ができず、過怠金
松山は、航空券の購入手続きを錯誤し、翌日の検量に間に合わなかったため騎手変更となりました。今年から始まった暑熱対策の一環で、昼休憩を長くして夜まで開催していた事と関係あるような印象を受けますが、どうなんでしょうか。錯誤だから松山自身が間違えたって話なんですが、もし間違えた場合のプランBは無かったという事でもありますし、来年も同じ暑熱対策をするなら開催日の移動は慎重にする必要がありそうですね。
松若は、故意というより過失という感じでしょうか。前日9時まで普通に酒を飲んで翌3時過ぎに車を運転して調教に向かったところ、道に倒れていたカラーコーンか何かを踏んで、自ら警察に連絡。そしたら飲酒運転が発覚したという流れだそうです。普通に考えて故意なら自ら警察に連絡なんてしないでしょうし、残っていないと思ったんでしょう。そう考えると運が悪かったですよね。自費でアルコール検知器とか用意しなければ普通は分かりませんから。もう9月になりますが、未だに裁定委員会は開かれていないですし、早く騎乗停止期間が確定して師匠の引退までにターフに戻って来れるといいですね。引退まで半年しかないのに最後引き取ってくれた音無先生への感謝は忘れてはいけませんよ。
大江原比は、騎乗停止ではないものの、3月デビューのアンチャンが50キロを乗れないってのは問題でしょう。太りやすい体質など人によって様々な問題はありますが、体重調整は騎手の基本ですからね。失った信頼を取り戻すためには相当な努力が必要ですし、悪い印象は早々変わりませんから。猛省しましょう。
■その他
最後に角田大河騎手の逝去について話をしましょう。正確な情報や細かい情報については、遺族から公表を控えて欲しいというお達しがあったため、公的に発表したところはありません。しかし、ネット上の情報をまとめると以下の通りになります。
1.8月1日の夜に、函館競馬場の芝コース内に車が侵入したことが発覚。警備員が止めると運転していたのは角田河騎手であり、同乗者が1名。
2.翌2日にJRAによる事情聴取を受けた際は、事の重大さに一人では立てないほどの落ち込みようだったとのこと。同時に、裁定委員会の議定があるまで騎乗停止処分を受ける。
3.2日午後、JRAは裁定委員会に送付されることを通知するため連絡を試みたが本人と連絡が取れず、所属の石橋先生に通知する。
4.2日15時10分頃、JR上野幌駅で人身事故が発生。栗東市の20代男性が電車に跳ねられ、死亡したとの報道がある。
5.数日間、栗東に戻った、死亡した、などの情報が錯綜した。元騎手の藤田氏は信頼できる筋からの情報として、亡くなったことを公表。
6.9日夜、家族から死去の報告を受けたJRAが逝去を発表。亡くなった日時、場所などの状況については遺族のご意向により、回答を控えるとのコメントを出す。なお、逝去は免許取り消し扱いのため、裁定委員会の開催は未定とのこと、
7.北海道の地方ニュースによれば、防犯カメラから男性が自ら線路に侵入したことが分かっており、警察は自殺と見ているとのこと。
という流れですね。発表まで時間が掛かったのは電車に引かれたことで遺体がバラバラになり、DNA鑑定をして本人と断定する作業に時間が掛かったためと推測されます。
まぁ何と言うか・・・なんで?というのが最初の感想でしょうか。最初の函館競馬場の芝コースに車で侵入がまずなんで?ですし、その処分として裁定委員会の送りになった際に、事の重大さを気が付き、フラフラと外出し、駅で飛び込み自殺もなんで?ですし、そこまで思い詰めた行動があったのであれば周りが謹慎という形の軟禁、あるいは外出時には誰かを付けるなどの処置をしなかったのか、という点もなんで?ですし。
とは言っても、行動制限や外出時の見張りもJRAがする事じゃないですし、所属厩舎がすることでもないですし、そこに責任を求めるのは酷なんですが、最悪の事態になると対処はできなかったかと考えてしまいます。
そこは置いといても、なんで芝コースに車で侵入したかね。花火大会があったから花火見たくて、という話が有力ですが、開催が終わっても調教に使用しているコースですから普通に考えればしないですよね。緊急車両が芝コースに入るのとは話が違うのですよ。
また、JRAは同乗者の存在は認識していても、個人情報の観点からそれを公表しませんし、それもなんで?ですよね。確かに逝去の発表が遅れた件についてはJRAを責めることはできません。JRAは所属機関ではあるものの私生活まで管理しているわけではありませんし、開催中の移動など競馬に関する事業の最中であれば別でしょうが、それ以外でJRAが身内でもないのに警察に「亡くなったのはウチ所属の角田大河ですか?」なんて聞けないでしょう。警察だって教えてくれんですよ。
でも、同乗者の存在は公表できるんじゃないですか。個人情報保護の観点とは言うものの、関係者だったか、一般人だったくらいは公表できるわけで、それをしないのはJRA騎手が同乗していたために隠ぺいしたなんて噂を後押しするような行為ではないでしょうか。
ただ、JRAからしたらたまったもんじゃないという感じでしょう。競馬場の芝コースを所属騎手に荒らされ、処分をしようとしたら自殺していてなぜ公表が遅いんだと言われ、厳しい尋問したから自殺したんだなんて言われるわけですから。
一方で、できることを全てやったかと言えば、まだできる事はあったんじゃないかと思います。例えば、競馬場の芝コースに接続する場所に関係者の車が勝手に入れること自体が問題ですし、同乗者の公表の件もそうです。全部を詳らかにせよとは言いませんが、法の許す範囲内で最低限の情報は公開するべきです。
公表が遅れた件についても、騎手の私生活については関知するところではないため、そうした情報(死亡のニュース)があったとしても、遺族なり公的機関なりから情報が来ない限り公表できないと最初にハッキリ言えばよかったと思います。
JRAの発表前に、デイリー新潮がJRAに取材を申し込んだ際の回答は下記のとおりです。
1、電車事故に遭ったという話は事実か。
「承知しておりません」
2、本人と連絡を取れているのか。
「お答えすることはできません」
3、飲酒していた事実はないか。
「本人は飲酒していないと主張しています。侵入した理由については『花火大会を見たかった』と話しております」
4、同乗者はどういった人物なのか。
「同乗者は1名おりましたが、それ以上についてはお答えできません」
仮定の話をするのがマズイ場合もあるでしょうが、こんな回答じゃJRAの姿勢を疑われて当然です。1.はまだ分かりますが「一般論として公的機関または家族からの連絡がない限り、把握できる立場ではありません」と付け加えたらいんですよ。だって普通に考えたらそうですよね。例えば、会社が自社の社員が捕まったかどうかってどう把握するんですか。警察なり家族なりから連絡があって初めて知るわけでしょう。ニュースで顔出しで逮捕映像が流れているならともかく、それ以外で会社が警察に確認なんてできませんよ。だから、それをハッキリさせるためにも最初に言っておくのです。
2.は難しい質問です。私なら逆ギレ的にお答えする必要性を感じませんとか言うかもしれませんが、「裁定委員会送りなどの通知は師匠を通じて本人に通知しています」と濁すこともできますし、あるいは「今現在、連絡を取る必要がありません」というのが正解かなと思います。だって、裁定委員会の通知はしたんだから、次は開催日程の通知でしょ。それまで連絡を取る必要がないじゃないですか。
むしろ、1.でしっかりと自分たちが動いて把握する、把握できる立場ではないし、それをする事もできないと言っておけば2.の質問もないのですよ。だって仮に連絡が取れなかったとしても、それが角田大河死亡の裏取りとするには乏しいですし、JRAが外部に答える必要がない質問ですし。
淡々と必要な事を伝えたらいいのですが、JRAは端折りすぎですよね。というか、最低限度の言葉で済まそうという意思を感じます。こうした姿勢って短期免許制度でも同じで、聞かれたら最低限度のことは答えるけど、それ以上については深く突っ込まれない限り答えないってことでしょ。実際、それをやってきてるからね。
まぁ何にせよ永遠に解決しない疑問を残したまま角田大河騎手は逝ってしまわれたわけですが、ただただ残念という感情が残りました。後藤が逝ってしまった時も同じ感情でしたね。第一声で「なんで?」となり、色々な感情が錯綜してから出てきた気持ちが残念でした。
残された家族はJRAに所属したままですし、JRAもその家族に対してどう対応すればいいか分からないでしょう。例えば、函館競馬場の補修費用は請求するのか、とかね。大河騎手に処分を下すことはできないし、かと言って残された家族に、というのは違うでしょうし。
松若風馬の裁定委員会の開始が遅いのはそのせいでしょうか。もうひと月も経ちますし、そこまで内容が分かっている以上、そこまで遅らせる必要はないと思いますが、開いたら開いたで角田大河騎手の件はどうなったんですか?と聞かれるわけですから、JRAの対応がまとまるまで開かれないんだろうなぁ。松若、お疲れ。