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フォーエバーヤング、JRA賞での扱い
2024年度のJRA賞が発表されました。なんだかんだでJRA賞について書くのは3年振りですか。前2年はウシュバとレモンポップが競ったくらいで、比較的平穏な形でしたからねぇ。
さて、今年は年度代表馬など主要項目はおおむね妥当な決着となり、個人的に違和感がありません。最優秀マイラーはロマンチックウォリアーがもっと入るかなと思ったくらいです。
しかし、最優秀ダートホースは賛否がありますね。レモンポップの受賞は妥当と言えますが、フォーエバーヤングでもおかしくないと思いましたし、投票する側が海外や地方のレースといった重賞の格付けをどのように判断しているかが垣間見える結果かなぁと思います。細かく見ていきましょう。
■戦績
レモンポップ 4戦3勝(GⅠ 1勝、JpnⅠ 2勝)
チャンピオンズC、南部杯、さきたま杯
フォーエバーヤング 6戦4勝(GⅠ 1勝、JpnⅠ 1勝)
東京大賞典、ジャパンDC、UAEダービー、サウジダービー
(ケンタッキーダービー3着、BCクラシック3着)
戦績を見ると一見、レモンポップの方が良いように見えます。ただ、対外的に見るとJpnⅠはリステッド扱いですから、レモンポップは重賞という括りではGⅠを一つ勝っただけとなります。
一方、フォーエバーヤングは東京大賞典、UAEダービー、サウジダービーと、GⅠ、GⅡ、GⅢを一つずつ勝っており、JpnⅠも勝っています。
■印象
レモンポップは今年初戦のサウジCで大敗している点で印象が悪く、JpnⅠを連勝して臨んだチャンピオンズCでも辛勝でしたので、1番人気に応える強さはあるもののどこか例年いる実力馬という印象から脱せません。
フォーエバーヤングは、重賞の各カテゴリーで1勝ずつ、JpnⅠをLとするならOP馬として獲れる範囲は取ったということになります。また、ケンタッキーダービーとBCクラシックで3着、特に前者ではハナ差の3着であり、さらに東京大賞典ではチャンピオンズCでレモンポップにハナ差に迫ったウィルソンテソーロに完勝していますし、JRAで走っていないだけで印象はかなり良いです。
■投票結果
フォーエバーヤング優勢の中、投票ではレモンポップが160票、フォーエバーヤングが96票となり、レモンポップが最優秀ダートホースに選出されました。
これを見ると、投票者は中央競馬のレースであるチャンピオンズCに重きを置いていることが分かります。単純にチャンピオンズCと東京大賞典ならチャンピオンズCを取るような感じでしょうか。どちらも同じ国際GⅠであり、出走馬次第では評価が入れ替わるようなレースなんですがねぇ。
またJpnⅠも前者は古馬戦の2勝であるのに対し、後者は3歳戦の1勝ですから、JpnⅠをGⅠと混同するような投票者であればレモンポップを優勢と見るでしょう。フォーエバーヤングが中央で走っていないという点も影響したのかもしれません。
■競馬の評価は重賞にあり
言わずもがなのことですが、競馬の本質はGⅠに勝つことであり、いかにGⅠやそれに近い重賞を勝ったかという点で競走馬は評価されるべきです。どれだけ素晴らしいレコードを出したとしても、それが未勝利戦なら同じ土俵で比べることは難しいですし、恣意的な運用がされるレーティングでも難しいでしょう。
であれば、こうした中央、地方、海外で走る競走馬の評価は、重賞の格付けを基に行うべきであり、中央で走っているから優遇するということがあっていけません。今年であれば、前述したようにフォーエバーヤングの重賞実績は、レモンポップのそれを上回っていますし、GⅠの中身、負かした相手の格などを見てもレモンポップに劣るようなところは見当たりませんし、このような投票結果になったことは非常に残念です。
矢作先生が「彼の業績で部門賞を取れなかったのは残念です」とコメントしてましたけど、これはそうした国際的な重賞格付けがある重賞での実績を基に評価してもらいたいという意味も含まれているのではないでしょうか。
また、海外GⅠでの惜敗をどう捉えるかという点について、99年のエルコンドルパサーの凱旋門賞2着を持ち出して、過去にこういう事例があるという記事を見掛けました。そうした評価がされているのだから、今回のケンタッキーダービーやBCクラシックでの3着も評価するべきだとという意見ですね。
しかし忘れてはいけないことがあります。それは、エルコンドルパサーは日本調教馬として初めて欧州の中長距離GⅠを獲ったという点です。凱旋門賞2着も当時の日本競馬界からすれば素晴らしい結果ですが、サンクルー大賞を日本調教馬が勝ったという事実は非常に価値があります。そのため競馬記者やネット民もその点を過小評価しているように見え、まるで凱旋門賞2着だから年度代表馬に選ばれた、というような風潮は違うだろと思ってしまうのです私は。
さらに言えば、99年の凱旋門賞は勝者が2頭いたと言われるほど2着馬の評価が高い一戦でもあったこと、欧州初戦のイスパーン賞でも2着に入ってること、そして当時の日本競馬界のレベルを考慮すれば、エルコンドルパサーが年度代表馬なのは妥当と言えるでしょう。それだけ日本と欧州の差があった時代ですからね。ちなみに欧州の2000m以上のGⅠを勝った日本馬はエルコンドルパサーだけで、1600m以上ならタイキシャトル、エイシンヒカリ、ディアドラがいます。現在でも唯一無二の存在である点は、顕彰馬選定でも評価されたと思いたいです。
以上のことから、たんにケンタッキーダービー3着、BCクラシック3着だから評価するという点もちょっと違うのかなと思います。評価はしてもいいが、それだけで中央GⅠの価値があるというような形は違うと思いますし、中身や負かした相手などを精査した上での慎重に評価した方が良いのではないでしょうか。
■まとめ
まぁなんだかんだ言っても、レモンポップが最優秀ダートホースでもおかしくはありません。ダート路線は若駒から古馬まで整備されているとは言い難く、中央、地方、海外と飛び回って走り続けることになるため評価が難しくなりますし、JRA賞が人気投票という点を考えればあり得る話ですし。
しかし、いい加減、競馬記者は地方GⅠやGⅠ級などといった曖昧な表現をするのではなく、国際的な格付けである重賞の価値をしっかりと把握するべきです。JpnⅠは国際重賞ではありませんからね。
そしてレースの質がどういうより、着差や負かした相手なども評価の対象の一部に加えることで、できる限り多くの人に納得してもらえるような評価になればいいなと思います。
顕彰馬もそうですけど、JRA賞もやり方を変える時期に来ているのではないでしょうかね。自分たちの組織が顕彰、表彰するわけですから、内部の人間が全く関わっていないのはどうかと思いますよ。