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JRA理事長の功罪は?①

2014年(平成26年)9月に土川健之理事長が退任され、新たに後藤正幸が第15代JRA理事長に就任されました。前任の土川理事長に続いてJRAとしては2人目となる生え抜きの理事長で、事務職出身者からは初めての就任となりました。しかし、農林水産大臣表彰旭日中綬章を受章した前任者と異なり、どうにも評判がよろしくない理事長との噂が絶えず、ネット上でも改悪だなんだって話も聞きます。そこで後藤理事長が就任してから変更された制度や方針などを功績と功罪として検証する事にしました。

まず、後藤理事長が就任後の大まかな流れはHPにあるJRAのあゆみから確認できます。就任前から動いていたものもありますが、そこら辺は検証しようがないので見逃している点をご了承下さい。

2014年(平成26年)
  9月 理事長に就任
11月 ロンジン社とパートナーシップを締結
   ジャパンCがロンジン賞ジャパンCとして施行
12月 ジャパンCダートを中京競馬場に移行、名称をチャンピオンズCに変更
   有馬記念の枠順決定をテレビで生中継

2015年(平成27年)
  2月 ミルコとルメールが通年免許試験に合格
  3月 全レースの映像をJRAのHPで配信
  8月 WSJSを札幌競馬場に移行し、名称をWAJSに変更
10月 いちょうSの廃止
11月 競馬法の改正に伴い、海外競馬の馬券発売が可能に

2016年(平成28年)
  9月 ケンタッキーダービー出走馬選定ポイントシリーズを開始
10月 凱旋門賞で国内初の海外競馬の馬券発売を実施
   ジャパンオータムインターナショナルの褒賞金の増額
   指定外国競走の勝ち馬なら出走するだけで約1000万円

2017年(平成29年)
  1月 短期免許制度の改正
   全レースのパトロールビデオをHPで配信
  4月 大坂杯がGⅠに昇格
10月 ジャパンCの褒賞金を倍増
12月 ホープフルSがGⅠに昇格

2018年(平成30年)
  1月 騎乗依頼仲介者(エージェント)制度の見直し
  4月 スマッピー投票を開始
  9月 UMACA投票を開始
11月 JBC3競走を京都競馬場で実施
   ジャパンCでの世界レコードに東京競馬場の馬場問題が顕著に

2019年(平成31年)
  1月 一部オープン競走をリステッド競走に格付け
   若手騎手競走の騎乗資格を見直し、勝利度数を撤廃
  3月 女性騎手の減量制度を導入
  6月 降級制度を廃止
   降級制度の廃止に伴い、クラス呼称の変更
   飼料添加物への禁止薬物混入が発覚し、156頭が競走除外に
   それに伴い、給与の10%を3ヶ月返上
11月 ジャパンCの外国馬出走0頭を達成

2020年(令和2年)
  3月 弥生賞の名称をディープインパクト記念に変更
  9月 馬場情報の追加【芝馬場のクッション値】


ざっと挙げればこんなもんでしょうか。不足分があれば足しますのでご一報下さい。順に見ていくと、まず理事長が就任した直後のジャパンCダートの移行と名称変更ですが、コレは事実上の新設ですよね。レースレーティングを見ると平均115を超えていますので新設してもGⅠ昇格はできたと思います。東京競馬場のGⅠを減らした事は大英断でしたが、東京大賞典に配慮したとはいえ2000mが欲しかったですね。

続いて有馬記念の公開抽選会ですが、これも同年に始まったイベントです。正直、空いている好きな枠を選べるというのは恣意的な感じがしますし、有利な枠を選択できるので公平だとは思いません。しかも1,2番手で枠順を選択した馬が1,2着となったので、ますます公平性に疑いが残る結果に。翌年からはゲストが抽選した馬の関係者が、枠番を抽選する方法に変わりました。

ただね、コレ必要かなぁ。関係者を席にぼーっと1時間半も座らせて、司会者のはしゃいだ様子を見せ付けられるのですよ?毎年、海外の騎手が不機嫌そうにしている印象しかないのですが。どうせするならJRA賞授賞式のような立食形式のパーティーみたいにして、呼ばれたら登壇するくらいが良いのでは?むしろ、やるなら全てのGⅠ抽選はトレセンでガラガラポンにして、youtubeで放送すりゃ良いと思いますよ。時間も掛からないし、ネット上ではGⅠ毎に阿鼻叫喚が渦巻いて面白いと思います。

それから翌2015年には史上初めて外国人騎手に対してJRA騎手免許の通年免許が交付されます。これは功績と思いたいところですが、その後のルメールとミルコの二党体制⇒ルメールの一党独裁を見ると、う~ん・・どうかなぁと思います。そもそも吉田照氏にお願いして短期免許で来日してから、力で信頼を勝ち取ってドンドン日本人に変化していくイタリア人は、通年免許を取るまでの16年間で通算354勝、重賞31勝、GⅠ10勝の他、ヴィクトワールピサでドバイWCを制しており、通年免許を与えるのは誰しもウェルカムだったと思います。

一方の陽気なフランス人は13年間で通算245勝、重賞18勝、GⅠ5勝とミルコの半分ちょっと程度の成績であり、ハーツクライでドバイシーマを勝っていますが、そこまで日本に思い入れあった?という状況だったと記憶しています。まぁペリエ並みの成績を・・とは思いませんし、地方も含めてインパクトがあった事は認めますが、どうしても日本競馬に!という状況ではなく、アーガー・ハーン4世との騎乗契約を切られた事によるモチベーションの低下が移籍の理由ですから、JRAにしては珍しい決断だなと思いました。理事長の鶴の一声があった可能性は高いですよね。

3月にはHPで全レース動画を配信する事になりました。これは助かりましたね。仕事上、どうしてもリアルタイムで見れないケースが出てきますし、毎回録画してレースだけ見直すのも大変でしたから。2017年1月にはパトロールビデオも配信される事になり、レース展開や研究、評論に非常に役に立っています。ただ一つ問題点があるとすればレース映像に問題がある場合でも修正をしない事ですね。

例えば、悪名高いハープスターのオークスのように特定の馬をドアップにして、レースの全容はおろか他の馬さえ見せないという事があります。特に大きなGⅠにアーモンドアイのような超がつく有力馬が出走してきた場合などがそうですね。あるいは、ドゥラメンテの皐月賞のように4角で大きな動きがあったのに写っていないとか、ダービーのようにゲート下からのスタート映像とかも止めてほしいです。リアルタイムでは失敗したが、公式の映像として残すために修正を加えるのは大いに結構だと思うのですよ。そうでなければレースの全容を把握できないですからね。それでも清濁を全て受け入れる姿勢は評価できます。

8月になると毎年12月に行っていたワールドスーパージョッキーズシリーズを、札幌でワールドオールスタージョッキーズとして開催します。12月だと短期免許の外国人が多いし、選出騎手が重複して注目度が下がるから夏にって話らしいですが、国際騎手招待を行う意義はどこまであるのかな、と思ってしまいますね。札幌に移った2015年は世界最多勝のラッセル・ベイズ、凱旋門賞4勝のティエリ・ジャルネ、雷神ジョアン・モレイラが参戦しましたが、それ以降はパッとしない騎手ばかりですし、だったらヤングジョッキーズシリーズを25歳以下の国際騎手招待にした方がマシかなと思います。理事長は国際畑出身だったので、もう少し裾野を広げる事はできないもんでしょうか。


また、11月には競馬法が改正され、海外競馬の馬券発売が可能になりました。これは朗報ですね。理事長の功績と言えるかは微妙ですが、就任以前から推進していた立場である事は間違いありません。JRAとしては海外遠征馬の増加で海外馬券発売の需要を知っていたでしょうし、ネット上やら非合法の手段等に流れるくらいなら取り込みたいと思って当然でしょうから、随分と根回しをしたんですな。いやっお見事。

あと個人的にですが、10月のいちょうSが廃止されたのは憤慨ものですね。かつてはシンボリルドルフ、メリーナイス、ヤマニンパラダイス、エアグルーヴ、メジロドーベル、イスラボニータ、クラリティスカイなどのGⅠ馬を輩出し、やっとこさ重賞に格上げされたと思ったら、サウジアラビアとの外交関係樹立60周年を記念するという名目のもと、サウジアラビアロイヤルカップに改称されてしまいました。しかも名前だけでなく、格付けも回次も奪われたので、事実上の新設レースですよ。富士Sとか副名称としてサウジアラビアロイヤルカップを使用しているのだから、その名前を付けるならそっちが先でしょうに。2歳戦なら影響ないとでも言うのでしょうか。

②に続く

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