賞金アップで解決すると思うのか?
11日の報知の速報で、JRAが2025年度の一部GⅠ競走の本賞金額を増額することが分かりました。対象となる競走は、宝塚記念、天皇賞・春と秋、大阪杯の4競走であり、1着賞金は3億円になるそうです。
宝塚記念 2億2000万円 → 3億円
天皇賞 2億2000万円 → 3億円
大阪杯 2億円 → 3億円
今月の経営委員会での議決後、農水大臣の認可を受けて正式決定となるそうですが、これは・・どうなの?先日の米国BCに大量遠征があったように、これまでドバイ、凱旋門賞、香港に限られてた海外遠征に、豪州や米国、夏の欧州が加わったように近年は海外遠征が活発になりました。一流馬の海外遠征が続くと、いつも国内競馬の空洞化が叫ばれますが、JRAが対応したのは褒賞金や本賞金のアップという金額面での優遇のみ。これではなかなか海外流出を止めることはできませんよね。
そもそも競馬は様々な国で国際的に行われているものであり、国内のみで完結するわけじゃありません。より強く、よりハイレベルで、より価値のあるものを求めて海外に出ていくのは間違っていないのですよ。
一方、一流馬の海外遠征が続けば、国内競馬が下火になるのは明白でありますが、私個人は仮に海外遠征が減少したとしても、国内競馬は下火になっていくのではないかと思うのです。それは一流馬の厳選されたローテ、特定の騎手や競走馬に対する忖度(作られた人気)、短期免許制度などを見ると分かります。
例えば、東京競馬場を改修して非常に走りやすいコースにした結果、一戦ごとのダメージは大きくなりました。故障は少なくなったかもしれませんが一戦ごとの負荷は大きくなったために、春や秋のシーズンに2戦しか走らないケースも珍しくない状況ですし、GⅠの前哨戦を使って本番へ向かうケースなどは一流馬、有力馬であればあるほど皆無に近くなりました。これでは特定のレースに有力馬が集うより、使い分けてより勝てるレースを狙って有力馬が分散するようになります。現に、前哨戦を使った馬が本番に出ないケースは散見されていますよね。
また、モアイやキタサンが枠順で有利な枠を何度も引くなど、単純な計算でも天文学的な確率になるケースもあったように、有馬記念を除くGⅠレースはコンピュータで自動的に枠順が決められています。それは枠順を操作できる環境下で枠順決定が行われていることを意味し、恣意的な枠順操作が行われている疑惑もあります。本来、最高峰のレースであるGⅠでは、完全なる公平を期すためにガラガラポンなど、誰の目から見ても明らかな抽選を行わなければいけません。それが競馬法に守られた日本競馬の公正競馬を体現する事になるのですが、JRAはそれをしません。
何も有馬記念のように大掛かりなことをしろと言っているのではなく、JRAの事務所で50音順にガラガラポンして順番を決め、その順番に基づいてもう一度枠順を決めるガラガラポンをする二段階の抽選をYoutubeでライブ配信しながらやれって話なんですがねぇ。こうした事ってすぐできるじゃないですか。コンピュータで自動的に決める抽選と、ガラガラポンのどちらが公正競馬に資するかなんて議論の余地はないでしょうに、なんでしないんですか。できない言い訳が官僚のそれと同じに感じるんですけど。
それに短期免許制度によりドンドン外国人騎手を受け入れた結果、日本人騎手の騎乗機会は大幅に減少しています。特にリーディング上位に入るような騎手でさえ、短期免許組にGⅠでの騎乗機会を奪われていては育つもんも育ちません。だいたい短期免許制度における契約馬主を確認して見ると、約6~7割が某大手馬主グループやその関係者なんですよ。年によっては8~9割になるケースもあります。それを加味すると短期免許制度は某大手馬主グループの傭兵制度のように見えませんか。
盛り上がるからいいだろという意見もありますが、それは短期免許組が来ない時期は競馬は盛り上がり欠けるって言うのと同じじゃないでしょうか。興行と育成は二律背反するもんですが、現状はそれが興行に振り過ぎていて育成がないがしろにされており、それはレーンやモレイラを見れば明白というか露骨なんですよね。例えば、これまでの短期免許制度の説明では、レーンは2025年度は短期免許を取得できないはずでしたが、無理矢理解釈を変えて6月中旬以降から取得できるようになりました。
モレイラだって短期免許要件を満たさなくなった事が分かったら直ぐにWAJSに呼んで、5回中4回でクリアした5位以内という条件を新設しました。WAJSにおけるモレイラの騎乗馬の平均人気は、今年を含めた過去6回の全てでJRA騎手以外の最も高いのですよ。今年なんかモレイラが4.5番人気に対し、続くオシェアは7.5番人気ですよ?モレイラが騎乗するだけで人気になるとはいえ、有力馬の区分からして間違ってると思いませんか。その区分を決めているのは誰ですか。JRAでしょ。
また、これらの問題を語る際に、競争の原理を持ち出す人がいます。実力の世界なんだから、世界の一流騎手が揃う短期免許組と若手騎手やアンチャンが騎乗馬を求めて争うのは当然だ、という意見ですね。その理屈は分かります。ただ、それは競争の原理が公正に守られていることが前提です。
簡単に言えば、国内には独占禁止法がありますが、これは資本主義の市場経済において、健全で公正な競争状態を維持することを目的に、それを不公正な行動を防止するための法律です。それを守らせるために調査し、是正を命令できる組織が公正取引委員会ですが、同じようなルールと組織が日本競馬界にあるでしょうか。それが答えなんですね。JRAがそれを担っている時点で公正でもなければ、適正でもないのですよ。公正競馬を謳いながら、説明責任からは逃れる姿勢を見せる組織なんだから。
こういう事をしても盛り上がりは一過性という事に気付いた方がいいのではないでしょうか。作られた人気馬や外国人騎手を買えば馬券が当たるわけですから、馬券をメインに買うファンはそれでいいかもしれません。しかし、JRAが最も盛り上がっていた時代のドラマ性は全くと言っていいほど皆無になりました。名を棄てて実を取ると言えばいいのでしょうかねぇ。それは日本競馬を衰退に向かわせるように思えるのです。
本来、日本競馬が持つ良さって人馬一体をはじめとしたドラマ性なんですよ。だからこそ、ドウデュースやパンサラッサのような馬が人気を集めるのです。彼らの人気は、モアイやイクイノの人気とは異なり、長く語り継がれるタイプのものですが、モアイやイクイノの人気は一過性のもので、似たような馬が出てきたらどっちが強かったか論争を巻き起こす燃料のようになるだけのものなんですね。
とすれば、かつてのドラマ性がある日本競馬の良さを取り戻しつつ、現代の世界競馬の流れに沿うような形になることが、日本競馬の発展になるのではないかと思いますが、それにはJRAが日本競馬の良さはこれだと明確に認識しなければいけません。でもJRAはなぁ・・・儲かればいいんでしょ?
結局、何をしたって海外遠征を止めることはできませんし、それを賞金上げて万事解決なんて考える方がおかしいのです。どんなに大阪杯の賞金を上げたって、ドバイに行く馬は行きますよ。それだけ格も名誉も違うのだから。
JRAができることは海外遠征を抑制する方向に対策するのではなく、海外遠征を日本競馬に組み込んだ上で、国内競走に一流馬が参戦しやすい環境をつくることであり、それは番組表の改革や、馬場の改修、施設やルールの整備などが該当するのです。そうすれば外国馬も日本に参戦しやすくなりますし、海外で行われてきたハイレベルな戦いを日本で行えるようになり、それが日本競馬の発展に寄与するわけです。
そうした中長期的な考えを持って事にあたらないと、日本競馬の良さは消えて、ただ賞金額やGⅠ勝利数でしか日本競馬を語れなくなりますよ。それは非常に悲しく、寂しいことです。
どうか、先人の知恵を借りつつ、適切、かつ妥当な方策を一刻も早く実現してほしいですね。
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