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短期免許制度の弊害

今年も中央競馬は全日程が終了しました。昨年に続き、はやり病に振り回された感がありますが、有観客を継続できた点は良かったと思います。現在、新しい株が猛威を振るっているように報道されていますが、日本は感染症対策を徹底するお国柄ですから第6波のような事にはならないでしょう。来年は海外を飛び回って挑戦を続ける日本人騎手が見たいですね。


一方で、渡航制限が解除されるとやって来るのが黒船、もとい傭兵集団、もとい短期免許組です。12月期に3年ぶりに来日したCデムーロは、わずか一月で17勝、JCの招待騎手として参戦したJC当日も含めれば18勝も挙げました。先月11月期の騎手の成績でも述べましたが、この短期間でこれだけ勝たれたら若手騎手なんか伸びるかよって本気で思いますね。

短期免許で参戦したこの一月の間、Cデムーロの成績は17-9-6-26です。58回の騎乗回数の内、実に54回が1~5番人気、37回が1~3番人気であり、占める割合で言えば5番人気以上が93.1%3番人気以上が63.8%です。さすがにコレは酷いですね。勝率29.3%は、ルメールはおろか騎乗数を絞っている川田すら上回る数字ですよ。過去の短期免許組の1~3番人気の占有率を見れば、モレイラは約90%ムーアやレーンは約80%マーフィーは約70%でありそれに比べれば数字的にはマシですが騎乗馬のほとんどが有力馬という状況に変わりありません。

たった一人の短期免許組でこれなら限度一杯の5人が同時に参戦したらどうなります?何勝奪われるんですか?短期免許の目的は『日本人騎手の技術向上のため』です。それなのに大量に有力馬を奪われ、例年100勝以上も短期免許組に奪われています。そのしわ寄せはドミノのように日本人騎手に来るのですよ。私が持っている2015年以降のデータでは、最多勝は2018年に67勝を挙げたモレイラ、それに続くのは2020年に41勝を挙げたレーンですが、今年のリーディングに当てはめてみればモレイラは15位、レーンは31位です。最高で3ヶ月しか居ないのに、この結果です。『日本人騎手の技術向上』を得るために失った代償が多いとは思いませんか?


弱肉強食だから仕方ないと言う方もいらっしゃいますが、それなら若手の減量特典も、女性騎手の減量特典も全て排除するべきですし、若手騎手限定戦を行うのもおかしいでしょう。弱肉強食なんですから。しかし、JRAも様々な特典を付けて若手騎手や女性騎手の育成を試みています。それはなぜかと言えば、一定の保護区域を定める事で日本競馬に即した騎手を自組織で育て、将来にわたって継続的に確保するためです。組織が継続していくという観点から考えるのであれば人材育成を外部に頼るのは不安定ですし、リスクを内包する問題にもなりますからね。

つまり、現行の短期免許制度はその目的が形骸化しており、日本人騎手の保護、特に若手騎手の育成という面においては非常に大きな損失をもたらす制度と言えます。他方でそのメリットと言えば・・・何があります?短期免許組が大挙して押し寄せてきて、人気馬に乗ってガンガン勝てばファンが喜びますか?むしろJRAはギャンブルの胴元としての側面も強いのですから、配当妙味等を考慮すれば決してプラスになるとは言えないでしょう。

そのため私は、現行の短期免許制度の改革を口を酸っぱくして何度も何度も何度も何度も申し上げているのです。短期免許組は1日6鞍、週に10鞍までに制限しろ、と。傭兵としての需要を満たしつつ、日本人騎手の騎乗馬を確保するには騎乗制限が最も手軽に行え、かつ現実的な方法です。

今年のCデムーロで見てみると、12/5は5鞍、12/11,12の週は16鞍、12/18,19の週は16鞍、12/25,26,28は21鞍で、合計8日間で58鞍騎乗しています。週に10鞍(3日開催は15鞍)に制限されれば約1/3にあたる18鞍が他に回ります。勝利数も単純計算で17勝から11勝まで減少するわけです。たった一人でコレなら、最大5人の短期免許組が参戦してきたら30勝前後が日本人騎手に回るのです。勝つ事で馬主や調教師に名前を覚えてもらい、信頼を得て騎乗依頼に繋がるとすれば、これは非常に大きな改革になるでしょう。

はやり病下において、図らずも短期免許組の参戦が阻まれました。その間に横山武をはじめとした日本人騎手が初重賞、初GⅠ、初リーディングを獲るなど躍進したのはたまたまでしょうか。元々上位に居た戸崎や三浦、浜中、北村机などが怪我で数ヶ月離脱したのもプラスになったでしょうし、チャンスを掴めた若手が多かったという側面もありますが、私にはきっかけがあれば伸びる日本人騎手が、短期免許組が居ないがためにきっかけを与えられて伸びたように見えるのです。

短期免許組の来日できた時期と不在時の数字は取れたわけですから、そこをしっかりと分析し、短期免許制度の弊害が見えたのであれば、そこを早急に改善するのがJRAの重要な仕事ではないでしょうか。


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