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藤沢和雄先生、顕彰者に選定されるの巻
6/7に顕彰馬選定記者投票の結果が発表されましたが、同時に顕彰者の選定結果も発表され、藤沢和雄先生が選定されました。当然と言えば、当然ですが、やはり素晴らしい評価をされたのだと思います。本当におめでとうございます。
この顕彰者制度は、平成16年および平成26年にJRA創設50周年および60周年の記念事業の一環として始まった制度です。平成27年以降は現行の選定方法に基づき、該当する者がいる場合に選定される制度になりました。
選定基準は、以下の全ての要件を満たした者となっています。
①通算勝利数1000勝以上
②GⅠ勝利数が5勝以上
③年間最多勝など特に顕著な成績を記録している
これまでに顕彰者として選定された調教師は合計10人おりますが、尾形藤吉先生をはじめ、松山吉三郎先生、藤本冨良先生、武田文吾先生など名だたる先生方が選定されています。藤沢和先生はそうした方々に引けを取らない素晴らしい人だと思いますし、現代日本競馬においてはもう二度と現れない稀有な先生だと思います。
藤澤和雄先生の成績
藤沢和先生の成績はJRA通算1570勝、GⅠ勝利数は34勝(他海外1勝)です。1988~2022年度までの35年間の中身を見てみましょう。
年間最多勝 10年連続14回(JRAのみ)
年間最高勝利数 68勝(トレセン開場以降、最多記録)
年間50勝以上 15回(5年連続)
年間40勝以上 26回(20年連続)
年間30勝以上 31回(31年連続)
GⅠ勝利数 34勝(他海外1勝)
管理GⅠ馬頭数 17頭(内顕彰馬一頭)
八大競走勝利数 13勝
重賞勝利数 126勝
正直、ちょっと異常な数字ですよね。年間最多勝は尾形藤吉先生の122勝なんですが、これは馬房制限もない時代の記録であり、トレセンが開場してからの記録では藤沢和先生が最多です。トレセン開場以降、年間60勝を超えたのは5回の内、3回が藤沢和先生ですからねぇ。さらに年間50勝以上は15回、30勝以上なら31年連続と、とんでもない記録ばかりです。なお、JRA賞の最多勝は地方と海外の指定競走を含むので、JRA単体の記録ではありません。
それから管理GⅠ馬17頭を輩出とか、かなり多いです。例によって最多記録は28頭の尾形先生なんですが、これも前述のとおり時代が時代ですから。それに続くのが藤沢和先生の17頭で、引退した角居先生の16頭、現役最多の友道先生の12頭を見れば、高い壁だということが分かります。
また、八大競走の勝利数は現代であればかなり多い方です。戦前戦後の先生方は尾形先生の39勝をはじめ7名が10勝以上の成績を残している一方、現代では藤沢和先生の13勝、角居先生と池江寿先生の12勝、池江郎先生の11勝、
二本柳俊夫先生の10勝と、5名しかおりません。
藤沢和雄先生の記録を抜けるのか
もうスゴいとしか言いようがない記録ですが、この記録を抜ける人がどれだけいるのでしょうか。
■通算勝利数
これは無理でしょう。現役最多の国枝先生でも996勝ですからね。可能性がありそうなの方は以下の先生です。
池江寿先生 現在786勝、残り784勝、残り期間16年半(年平均47.5勝)
藤原先生 現在803勝、残り767勝、残り期間13年半(年平均56.8勝)
堀先生 現在691勝、残り879勝、残り期間15年半(年平均56.7勝)
年間50勝を10年以上続けてやっと届く数字なんですね。中央競馬はレース数が決まっているパイの奪い合いですから、非常に難しい記録と言えます。なお、今をときめく矢作先生は残り817勝で年平均86勝、友道先生は残り931勝で年平均80.9勝でした。
■年間最高勝利数
こちらは爆発すれば70勝を狙える先生が出てきそうな雰囲気はあります。ただ、今の中央競馬の調教師界隈は群雄割拠な様相なので、有力馬がバラけて勝利数も分け合う可能性も大いにあります。記録を更新しても驚かないが、難しいという感じでしょうか。
■GⅠ勝利数
最有力だった角居先生がリタイヤしてしまい、一躍最有力に躍り出たのは池江寿先生です。現在20勝で、残り16年半ですから、毎年勝っていけば辛うじて超えられる数字です。それに続くのは16勝の友道先生ですが、残り11年半で18勝は結構キツイですね。15勝の矢作先生や14勝の堀先生は海外志向が強いので国内GⅠはそんなに伸び無さそうです。矢作先生は、海外含んでいいなら尾形先生だって超えられると思います。
■管理GⅠ馬頭数
現役で管理したGⅠ馬が10頭以上いるのは友道先生の12頭、音無先生の11頭です。堀先生(8頭)と矢作先生(7頭)は、海外GⅠのみを勝利した馬を含めるとそれぞれ10頭となります。JRA記録なので海外GⅠはちょっと置いておきましょう。
音無先生は定年間近ですが、友道先生は残り5頭なので十分超える可能性があります。堀先生は残り9頭ですが15年半残っていますし、矢作先生も残り10頭であるものの現在の勢いから可能性は決して低くありません。
■八大競走勝利数
こちらは池江寿先生があと1勝で並びます。歴代で見ても尾形先生を除けば藤本冨良先生と田中和一郎先生の14勝が最高ですので、歴代2位も目の前ですね。その他の方は、現状では可能性すら見えません。
■重賞勝利数
大昔と比べて重賞数が大幅に増加していますので、そもそも公平かどうかという点が気になりますが、歴代で70勝以上を挙げた先生方は以下のとおりです。
1位 尾形藤吉 189勝
2位 藤沢和雄 126勝
3位 橋口弘次郎 96勝(他海外2勝)
4位☆池江泰寿 87勝(他海外2勝)
5位 伊藤修司 83勝
5位☆音無秀孝 83勝
7位 角居勝彦 82勝(他海外5勝)
8位 武田文吾 80勝
9位 伊藤雄二 77勝
10位 松田博資 73勝(他海外1勝)
10位 池江泰郎 70勝(他海外2勝)
☆は現役
繰り返すようですが尾形先生は除くとして(笑)、やはり藤沢和先生は驚異的ですね。馬房が多く重賞が少ない時代と馬房が少なく重賞が多い時代の違いはあれど、これ以上ない成績だと思います。
これを超える可能性としてはやはり池江寿先生でしょうか。あと16年半で39勝ですから、年2~3勝で追いつけます。その他で可能性があるのは、現在64勝の堀先生や61勝の藤原先生などでしょうか。それでも年4~5勝は必要ですのでぶっ飛んだ馬が1~2頭ほしいところです。矢作先生や友道先生は年7~10勝必要なので、ちょっと時間が足りないですね。
というわけで、藤沢和先生の成績を眺めてみました。顕彰者にふさわしい記録ばかりですね。これほど稀有な先生はもう二度と現れないんじゃないかなとすら思います。
まぁ記録だけで言えば今の若い先生方が超えそうな空気はありまして、特にGⅠ勝利数、重賞勝利数あたりは現在の数が違いますので可能性は高そうですし、年間最多勝は名調教師が運に恵まれたらイケると思います。
そんな記録を苦々しい表情で眺めるんだろうなぁ。そして懐古厨とか言われるんだろうなぁ。時代が違うから仕方ないとは言え、藤沢和先生の記録は破られて欲しくないなぁと思いつつ締めます。