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現役と引退の狭間

日本競馬界にとって2~3月は出会いと別れの季節です。今年も多くの人が引退し、新しい人が競馬界の扉を開きますが、近年は騎手の不祥事による引退が多く、新しい門出を迎えて去って行くという形にはなかなかなりません。調教師は年度の途中で引退されるケースは事故や病気で亡くなったケースを除けばほぼ無かったはずです。

今年はちょっと特殊な例もありましたし、見ていくことにしましょう。

■騎手の引退

まず、騎手の引退ですが、大塚海渡、白浜雄造、鈴木慶太の3名が引退となりました。

大塚君はやっとか・・・という印象しかありません。ここ何年間でほとんど騎乗していません、というかデビュー年以外は落馬負傷の影響でほぼ騎乗していない上に、騎乗技術もかなり未熟で、キムテツへのパワハラ訴訟などもありましたので、美浦の競馬村で騎乗できるほど馬は集まらないのは仕方ありません。

元々父親が勢司先生のところの大塚哲郎調教助手であり、キムテツも同じく調教助手をしていたんですよね。つまり、父親と先輩後輩の関係で、その縁あって息子の海渡を任せた、という流れでしょうか。知った間柄+色々な面で未熟だったことがパワハラに繋がったのかなぁ。まぁどっちも悪くて、どっちも悪くないですけど。

今後は勢司厩舎で調教助手となる予定だそうで、父親の伝手で厩舎入りという形になるのか、あるいは父親が身を引いて後釜として入るのか、分かりませんが、今後の活躍に期待します。


続いて白浜騎手ですが、こちらは2022年8月27日、小倉サマーJでマイネルプロンプトに騎乗した際に落馬しまして、頭部外傷で一時は意識不明の状態が続いたのですが、長期療養を経て、2023年4月にはリハビリや栗東トレセン内で厩舎作業を行うなど復帰へ向けて取り組んでいたと報じられていました。

しかし、頭部外傷による記憶障害など後遺症の影響が継続しているそうで、今月一杯で騎手免許を更新せず、引退することになりました。非常に残念ですね。 障害重賞21勝、内J・GⅠ2勝は立派です。今後に関する情報はありませんが、脳をやると元通りとはなかなかいかないのが現状です。競馬界に残れるように、とも思いますが、家族の事もありますし、幸せな人生を送れるように願っています。頑張ってください。

白浜騎手のコメント
「騎手を続けたかったというのが本音ですが、後遺症のためそれは叶いませんでした。子どもの頃に競馬と出会い、その魅力に惹かれ、今日まで馬と共に歩んできました。騎手でなくなる自分は、いったい何者なのか。正直、今はまだ答えを見つけられずにいます。人生はこれからも続いていきます。騎手として、そしてホースマンとして得た経験を胸に、夢中になれる何かと出会うために、一歩一歩、新しい人生を歩んでいこうと思います。出会ってくれたすべての馬たち、馬主の皆様、調教師の先生方、騎手仲間のみんな。そして、応援してくださったファンの皆様。リハビリ生活を支えてくださった医療従事者の皆様、JRAの皆様へ。心から感謝しています。本当にありがとうございました」


それからJRA騎手による最長勝利間隔記録を持つ鈴木慶太騎手ですが、2003年デビューで通算12勝で、障害騎手という点を除いても本当に乗鞍が少なく、最後に馬券に絡んだのが2020年8月ですから、普通の競馬ファンからすれば誰それ?という感じでしょうか。納得しての引退であればいいのですがねぇ。でも、これだけ勝てなくても、20年以上騎手を続けられるわけですから、今の若い騎手も諦めずに納得して引退できるように頑張ってほしいですね。鈴木騎手、お疲れ様でした。


■調教師の引退

今年の引退調教師は8名でした。その内の一人、河内の御大もついに引退です。長かったねぇ。同時に今でも勿体ないなぁと思います。騎手引退時は歴代2位となる2111勝を挙げ、3年前にダービー、2年前にタキオンで皐月賞を勝ってましたし、前年の2002年は60勝でリーディング14位ですからね。辞めるはなかなか見つけにくく、1000勝騎手の調教師転向時の試験免除が廃止されることを理由に辞めざるを得なかったというのが、大きな理由とされていますが・・・調教師としても先日の東京新聞杯が7年振りの重賞勝利となったように、騎手時代と比べると目立つ成績を残せたわけじゃありませんから、騎手を続けて欲しかったと今でも思います。今後は、競馬サークルに残るのかなぁ。解説とかしてほしいですが、表に出てペラペラ喋るタイプじゃないんですよねぇ。ともかくお疲れ様でした。


それから音無先生も引退ですね。GⅠ勝利数は現役6位の14勝、計11頭のGⅠ馬を管理しました。意外とこれってスゴんですよ。現役1位の友道先生は15頭で24勝なんで、1頭あたりのGⅠ勝利数は1.6勝ですが、音無先生は1.27勝です。つまり、1頭の強い馬を引き当ててGⅠ勝利数を稼いだのではなく、たくさんの馬でGⅠ勝利数を稼いだわけですから、調教師としての腕は大変素晴らしいと言えるでしょう。通算1000勝まであと5勝ですし、残り3週で達成なるか。松若、何とかしろ笑

ちなみに、海外を含むGⅠ勝利数が10勝以上の現役調教師の中で、1頭あたりのGⅠ勝利数が最も高いのはキムテツで3勝、次いで国枝・矢作両先生が2.3勝、さらに須貝先生の2.28勝と続きます。


あと、最強のGⅡ番長バランスオブゲームを管理した宗像先生も引退ですね。懐かしいなぁ。当時8つあった中山GⅡの内、4つ(弥生賞、セントライト記念、中山記念、オールカマー)を計5勝し、毎日王冠含めてGⅡ6勝は今でもGⅡ最多勝のはずです。ダイヤモンドS3勝の長距離番長フェイムゲームなども管理していましたし、面白い先生だったのを覚えています。


それからコパノリッキーなどを管理した村山明先生は勇退されるそうです。まだ53歳なのですが、ずいぶん早いですね。特に大きな理由があるわけではないそうですが、先生のコメントは以下のとおりです。

「体調というわけではありません。ジョッキー時代はそんなに活躍できませんでしたが、調教師になれて良かったなと思います。いろんな経験をさせてもらいましたし、思い出に残っているレースがどれというのはないです。コパノリッキーは信じられない馬でしたね。今後は決まっていないですが、ゆっくり過ごしたいです。これからも競馬が盛り上がることを願います。みんな仕事をしてエンターテインメントで競馬を楽しんで欲しい。これからの時代、ストレスの多い社会なだけにリラックスして楽しんで遊べる場所として競馬が癒やしになってくれれば嬉しいです」  

普通に考えて何か裏がありそうな感じもしますが、単に余生を過ごす分の貯蓄もできたし、全く休みのない世界ですから、第2の人生を考えて早期リタイアとも取れます。何はともあれお疲れ様でした。


■新規騎手

新規騎手は、女性一人を含む7名となりました。第41期生ですね。この期は女性がもう一人居たのですが、どうなったかな。この1年で女性騎手が2名辞めた中での新人なので、頑張って欲しいとは思いますが、美浦かぁ・・小林美はいるけど、どうなんだろ。それから和田の息子のデビューしますが、2世がどこまでやれますかね。どっち転んでも関西若手の3年目のジンクスがありますから、そこまでは様子でしょう。


■現役と引退の狭間で

最後に小林勝のことを書きましょう。う~ん・・個人的にはJRAやったなぁという印象が一番です。記録が確認できる中では、騎手免許の更新に失敗したのは彼だけだそうで、逆に言えば暴力事件を起こしても、交通違反をしても、スマホの不正使用をしても通った更新試験をパス出来なかったわけですから、JRAが見せしめとして厳しくしたのか、あるいは小林勝がバカすぎたのか。前者のような気がしますよね。

一応、更新試験は面接や筆記があるのですが、問題児には当該問題に関係する法規や内規に関する筆記試験を免許課が個別に作成して課しているそうで、彼は公正確保に関する筆記試験と、口頭試問を受けたが合格基準に達することができなかったとのことです。これを素直に受け止めるにはちょっとねぇ・・・JRAだし。

現在保有している騎手免許は2月一杯が期限となるので、3月1日以降はJRA所属の騎手ではなくなります。こうした場合の取り扱いはどうなるのか、誰か突っ込んで取材してくれないかなぁ。普通に考えれば、身分喪失ですから調教騎乗や厩舎手伝いはもちろん、トレセンに入ることもできないハズですから、2月末で強制引退ということになるでしょう。JRAもその準備をして待ってるのかな。28日、または3月1日のHPを確認しなきゃいけませんね。

今後は、来年の騎手免許試験を受けるために法規や内規に関する筆記試験を勉強するしかないのですが、その間、収入はもちろん、騎乗技術を磨くことも忘れずにしなければいけませんので、なかなか大変だと思います。このまま引退も有り得ると思いますが、それなら10月の段階で辞めてるだろうしねぇ。

あと、気になるのが騎手免許の更新ができなかったという点が、騎乗停止1年間と二重処分になるんじゃないかという部分が、う~ん・・・となるんですよ。確かに違う事象に対することなので、問題ないと言えるのですが、ただ、これまで騎手免許の更新ができなかったケースがないことを考えると、二重に処分したんじゃないかと邪推できてしまうんですよね。これに対してJRAは何かしらのアクションを起こした方が組織としては良いのですが、ガバナンスが???の組織ですからスルーされる可能性も十分あります。

仮に小林勝が引退届を出して、海外で騎手免許を取った場合、騎乗停止は適用されるのか。当該国の判断で、免許を継続保持しているのなら相互主義で騎乗停止を適用するが、一回引退しているのだから適用なしとする国だって可能性としてはありますよね。その場合、JRAはどう対処するのでしょうか。

まぁ考え出したらキリが無いのですが、一番無難なのは、JRAが騎乗停止、あるいは今秋の騎手免許試験まで、特例で調教などに騎乗できるよう取り計らって、その中で公正競馬を叩き込むというやり方でしょうか。色々と批判がありそうですが、こうした特別扱いをしてでも公正競馬の確保に努めているとアピールする方が組織として有益だと思いますよ。特にお上からやいのやいの言われている現状では、問題児は見捨てます、はいお終い、では冷たい組織だと思われますし、臭い物に蓋をするだけと見られてしまいますからね。

ともかく、今週の定例会見で誰か詳細を取材して下さい。そうじゃないとよう分かりません。小林勝は、猛省して真摯な姿勢を見せることが重要です。かつて西田騎手が不祥事で引退した時、復帰までの5年間、牧場で働きながら毎年JRAに現状を報告していたそうです。その後、再び試験を突破して騎手として復帰した経緯がありますから、小林勝にはぜひそうした部分を見せてもう一度、ターフに戻ってきてほしいですね。


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