今週の全米No.1アルバム事情 #37 - 2020/7/25付
東京の毎日の新規感染者数が3桁で高止まりする中、週末4連休に突入する今週。Go Toキャンペーンももはやボロボロだし、羽根を伸ばしたいところですがこの連休もどのくらいおとなしくできるかが今後の感染拡大防止に大きく影響しそうです。
さて、今週末のBillboard 200は、先週に続き大方の予想通り、しばらく前から評判が盛り上がっていた、ジュースWRLDの遺作、その名も『Legends Never Die』が、497,000ポイント(実売209,000枚)という、今年一番のポイント数(従来の最高ポイントは4/4付ザ・ウィークンドの『After Hours』発売初週の444,000ポイント)、売上枚数もヒップホップでは今年最高(というか、2018年9月のエミネム『Kamikaze』の252,000枚以来最高)というぶっちぎりの勢いで1位初登場でした。
先週もちょっとお伝えしたように、今回のジュースのアルバムには、トリッピー・レッドやポロGといった最近のヒップホップの若手に加えてマシュメロやホールジーといったポップ畑の共演者が色を添えている他、ジュースの「Lucid Dreams」やポスティの「Hollywood’s Bleeding」のプロデュースで知られるニック・マイラをはじめ、スクリレックスやDr.ルーク、リック・ルービンなど多彩なプロデューサー陣が参加したまあ超豪華盤。その分シーンでは「いろいろ詰め込みすぎでは」といった反応もあるようですが、生前未発表曲を2,000曲以上録音しているというジュースの音源から選ばれた楽曲でのジュースのエモ・ラップの旗手としての安定のパフォーマンスは評価が高いですね。自分も通して聴いてみましたが、特に押さえたビートでジュースが語りかけてくるような「Righteous」とか「Can’t Die」とかいった曲はなかなか迫るものがあります。
そして多くのヒップホップ・ファンが待ってた作品らしく、今週のHot 100のトップ10にはマシュメロとのロック・タッチのコラボ曲「Come & Go」の2位初登場を筆頭に4曲が初登場。先週74位初登場から今週一気に9位に急上昇した、ホルジーとのコラボ曲「Life’s A Mess」も含めて、今週何とトップ10内に5曲同時チャートインという、ビートルズ(1964年に2回5曲チャートイン)、ドレイク(2018年に7曲同時チャートイン)に次ぐ史上3組目の「トップ10内最低5曲以上同時チャートイン」アーティストとなったんです。また、先週1位で今週2位のポップ・スモークの『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』に続いてアーティスト没後の作品が連続1位になったのも史上初なら、トップ2が没後作品というのも史上初らしいです。あまり喜ぶべきニュースではないと思いますが、これもジュースがいかにシーンからも期待され、リスペクトされていたかを如実に示すファクトだと思いますね。返す返すも彼が生前グラミーから新人賞部門でもラップ部門でも全く無視されていたのが残念です。
ということで今週はBillboar 200もHot 100も完全にジュース一色なのですが、もう一枚、トップ10に今週初登場しているのが、R&Bのサマー・ウォーカーの5曲入りEP『Life On Earth』。28,000ポイント(実売3,000枚)で8位に初登場して、去年の10月に華々しくデビュー作『Over It』(最高位2位)で登場して以来2枚目のトップ10を決めてます。H.E.R.あたりを意識してるかも知れない感じの、今回もR&Bファンの琴線に触れる曲を聴かせてくれてて、次のフルアルバムに期待が膨らみますね。
ということで今週もトップ10のおさらいです。ハミルトンもしぶといですね(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。
*1 (-) (1) Legends Never Die - Juice WRLD
2 (1) (2) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
3 (2) (251) Hamilton: An American Musical - Original Broadway Cast ▲6
4 (3) (20) My Turn - Lil Baby ▲
5 (5) (45) Hollywood’s Bleeding - Post Malone
6 (4) (13) Blame It On Baby - DaBaby
7 (7) (31) Fine Line - Harry Styles ▲
*8 (-) (1) Life On Earth (EP) - Summer Walker
9 (6) (17) After Hours - The Weeknd
10 (8) (9) The Goat - Polo G
さて来週の1位予想ですが、7/17-7/23リリースのラインアップでは、もう何度かリリースが延期となってる間に、レディAに続いてディキシー・チックス→ザ・チックスに改名したあの3人の14年ぶりの新作が普通なら来そうなんですが。ビルボードも今週号で巻頭インタビュー特集してるくらいなんで。でも、ひょっとしたら、というのが6/22にリリースされるポップ・スモークのデラックス盤。最近のヒップホップのデラックス盤攻撃が当たってるだけに、チックスの票が伸びないと来週ポップが返り咲き1位、という線も充分ありそう。ではまた来週。