見出し画像

今週の全米No.1アルバム事情 #64 - 2021/1/30付

最近仕事で海外の人とZoomやると必ず訊かれるのが「いつワクチン打つの?」という質問。特にアメリカ人は既にワクチン接種の予約が始まっているところが多いらしく、日本がまだいつワクチン接種が開始されるかもわからないんだ、と言うと不審そうな顔をされるのがちょっと嫌な最近。最初から予想されたことながら、緊急事態宣言もどうやら延長は避けられないみたいですが、この国のコロナ対策、ホントに現実を直視してほしい。国会で未だにオリンピック開催とコロナ対策は別だなどと言っているスガシの良識を疑いますね。

画像1

さて今週末のBillboard 200の1位ですが案の定、先週1位初登場だったモーガン・ウォレンの『Dangerous: The Double Album』がポイントを40%減らして159,000ポイント(実売22,000枚)だったんですが、それでも2位のポップ・スモークの3倍以上のポイントでブッチギリの2週連続1位を決めました。これ、圧倒的ですね。でもこんだけ売れてるし、去年からずっと高いテンションでブレイクしてきているのに、彼が今回のグラミー賞で、主要部門はおろかカントリー部門にすらノミネートされてないってのは何なんでしょうかね。この間のグラミー賞受賞予想のカントリー部門編でもちょっと書いたけど、今年のグラミーは、特にカントリー部門は例年以上にダイバーシティ重視というか、見方によってはやや偏重気味なところがあって、女性ノミニー(含む黒人女性ノミニー)が溢れてて、彼なんかは割を食ったのかもしれません。彼もこの次に、多分2022年くらいにリリースする作品が勝負かもしれなくて、その時にグラミーとかの場でどう評価されるか、興味ありますね。

画像2

さて今週のトップ10内の初登場はわずかに1枚。3位に46,000ポイント(実売38,000枚)で初登場してきたのは、2016年にLAで結成、今回のアルバム『The Good Times And The Bad Ones』が2枚目になる19際〜22歳の5人組によるボーイズ・バンド、ホワイ・ドント・ウィ。今やUSもボーイズ・バンドというとBTSを代表選手とするKポップ勢に席巻されてる印象がありますが、いやいやこの子たちもかなりのもんです。20種類以上の楽器をこなして、曲の殆どを他のメンバー達と共作して、今回のアルバムではプロデュースもこなすというダニエル・シーヴィー君を中心に、どの子も歌うまいし、ライブでは楽器もちゃんと演奏するホワイ・ドント・ウィ。音楽性もジャスティン・ビーバーショーン・メンデスとかの線の今どきのメインストリーム・ポップに90年代ロック的テイストも時々見え隠れする、なかなかの音楽性も持ってて、今回の人気もむべなるかな、という感じです。

友人の音楽ジャーナリスト、沢田太陽くんもここnoteで書いてましたが、個人的に一番ビビッと来たのは、あのスマパンの「1979」のギターリフをまんまサンプリングしてループしたところに全く別のポップなメロディを乗っけてる「Slow Down」。いやあこれ、当時のスマパン知らない今の若い子が聴いてもカッコいいと思うし、僕らオジサン達もラジオでこの曲が流れてきたらオッ!と思ってしまうこと必至。これ以外にもジャスティン・ビーバー系のアップテンポなポップの「Lotus Inn」とか、何とカニエの『Yeezus』からの曲をサンプルしてる「Fallin’ (Adrenaline)」とか、楽曲クオリティも高くて、これは2021年、Kポップ勢に十分に対抗できるボーイバンドが出てきたな、という感じですねえ。

その他の動きでは、新年早々デラックス・エディションを出して一気に199位→3位というチャートアクションを見せたエミネムの『Music To Be Murdered By』がそのデラックス・エディションのCDリリースでまたトップ10内に返り咲いたのが目立つくらいで、相変わらず圏外初登場もめぼしいものはなく、44位に元ワンダイゼイン・マリックの新譜が入ってるくらい。もうしばらくは静かなチャートが続きそうです。Hot 100の方は新星オリヴィア・ロドリゴの「Drivers License」が先週初登場1位から今週も1位と威勢がいいんですが。では今週のトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (1) (2) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
2 (3) (29) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
*3 (-) (1) The Good Times And The Bad Ones - Why Don’t We
4 (2) (6) Evermore - Taylor Swift
*5 (7) (12) Positions - Ariana Grande
6 (5) (5) The Voice - Lil Durk
*7 (19) (52) Music To Be Murdered By ● - Eminem
8 (6) (44) After Hours - The Weeknd
*9 (9) (28) Legends Never Die - Juice WRLD
10 (8) (63) What You See Is What You Get ▲ - Luke Combs

さて来週の1位予想ですが、対象リリース期間1/22〜28は今回も目ぼしいリリースが見当たりません。となるとまた来週半分近くポイントを減らしても1位キープの可能性があるモーガン・ウォレン3週目というのが一番ありそうなシナリオで、対抗する可能性のあるのは、リル・スカイズか、ラテン勢のアニュエルAAオズナのコラボ・アルバムくらいかなあ。ではまた来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?