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今週の全米アルバムチャート事情 #257- 2024/10/12付

MLBポストシーズンがどんどんと佳境に入って行く中、ナショナルリーグの優勝決定シリーズ(NLCS)は我がNYメッツとドジャーズの激突に決定!いやしかしどちらのチームも直近数試合でのモメンタムが強烈なので、来週からのマッチアップは楽しみでしかないです。大谷には頑張ってほしいですが、自分としてはやっぱりメッツを応援。2000年以来24年ぶりのメッツヤンキースのワールドシリーズになったらいいなあ。今週はこのMLBの連日の熱い試合をフォローするのと、新しく始まった病気の治療でかなり時間を取られたのと、今週末納期の仕事にかかりっきりだったので、この記事もいつもより随分遅い掲載になってしまいましたが、どうかご容赦を。

"Short N' Sweet" by Sabrina Carpenter

今週の全米アルバムチャート、10月12日付のBillboard 200の首位ですが、先週の自分の予想は大外れ。レディ・ガガ出演の映画『Joker: Folie á Deux』にインスパイアされたアルバム『Harlequin』は残念ながら20位初登場に終わってます。これについては後ほど。そしてそれ以外に対抗馬のない中、やはり3曲のシングルをHot 100のトップ10に送り込んでいてストリーミング・ポイントがなかなか落ちないサブリナ・カーペンターの『Short N’ Sweet』が今週100,000ポイント(うち実売14,000枚)で消去法的に2週ぶりに首位に復活、通算4週目の首位になってます。

実はチャペル・ローンの『The Rise And Fall Of A Midwest Princess』が先週はポイント出力をぐっと上げて10万ポイントを超えてきてたので、その調子でチャペルが出力を伸ばせていれば今週念願の1位!というのもあり得たんですが、残念ながら今週は40%も出力を減らして6万ポイントまで落としてしまってます。これによって1位と2位の間がまた結構空いてしまったので、来週以降強力な新譜が10万ポイントを超える出力で登場しない限り、またしばらくサブリナが首位をキープしそうですねえ。

"Harlequin" by Lady Gaga

さて今週のトップ10は初登場がゼロです。そして11位以下圏外100位までの初登場の一番人気は先程触れた、レディ・ガガの『Harlequin』の20位初登場。ガガDCコミックスの悪役、ジョーカー(映画ではホアキン・フェニックスが演じてますね)の相棒の女性悪役、ハーリー・クインを演じた映画『Joker: Folie á Deux』の劇中でも聴かれるジャズのスタンダード・ナンバーをガガが歌ってるアルバムです。それに加えてガガのオリジナル2曲「Folie á Deux」「Happy Mistake」が追加されてます。

アルバム全般において、ハツラツとしたガガのジャズ歌唱は概ねメディアの評価はいいようで、確かにガガが楽しそうにミュージカル『雨にぬれても』(1952)からの「Good Morning」とかを歌ってるのは聴いててなかなかいい感じです。ただ、そういう意味ではオリジナル・アルバムではないので、まあ初登場1位の出力が出ないのは無理のないところでしたね。私の予想ミスでした。なおガガとジャズといえば、故トニー・ベネット翁との2枚のジャズ・アルバムが思い起こされるわけですが、それに続くガガのこの本格的ジャズ・アルバム、その2枚同様今週ジャズ・アルバム・チャートの1位に輝いてます。

"Highway Prayers" by Billy Strings

続いて22位に初登場してきているのは、つい最近7月にライブ盤をリリースしたばかりだったブルーグラス・ギターの若き雄、ビリー・ストリングスの4作目のオリジナル・アルバムになる『Highway Prayers』。レコードでもCDでも2枚組になる全20曲を収録したこのアルバム、基本全編ビリー自身もしくは共作の、スタンダードなブルーグラス・ナンバーが並んでるんですが、ちょっと驚いたのは共同プロデュースにジョン・ブライオンの名前があること。

ジョン・ブライオンというと、ここ10年くらいインディ系ロックの作品のプロデュースの仕事で実績を積んできている人で、個人的にはマック・ミラーの遺作となった『Circles』(2020)の音源を見事な統一感ある音像でまとめ上げていた仕事がとっても気にいってた人なので、その彼がビリー・ストリングスをプロデュース、というのはかなり意外。でも収録された曲を聴く限り、変に自分のスタイルを主張することもなく、ビリーの素晴らしい演奏と楽曲の魅力を引き出すことに徹してるようで、そういう意味ではマックの仕事と共通するところ多し、なのかも知れません。

"+-=÷x (Tour Collection)" by Ed Sheeran

そのちょっと下、28位にチャートインしてきたのは、エド・シーラン初のベスト盤、『+-=÷x (Tour Collection)』。彼のデビュー曲「The A Team」(2012年16位)から直近の全米トップ40ヒット「Eyes Closed」(2023年19位)まで10年余にわたるほぼほぼ主要なヒット曲をカバーした全24曲収録の豪華版です。今月末にはブラック・フライデーでショッピング・シーズンが到来するわけですから、一足先にそれに向けた商品投入、ということでしょう。UKアルバムチャートでは今週5位初登場です。

タイトルの付け方から察するに、数学記号シリーズのタイトルはこれで一旦完了、次のオリジナル・アルバムからはまた新しいスキームでタイトルが付けられるんでしょうね。「ツアー・コレクション」と言ってますが、現在展開中のここまでの10年間を総括する「+-=÷xツアー」からのライブ音源が入ってる、というわけではないようです。なおこちらのツアーは9月19日のリオデジャネイロでのライブを最後に現在お休み中ですが、来年5月に再開、ヨーロッパをぐるっと回って来年9月ドイツのデュッセルドルフのライブで終了の予定です。その後はしばらく休暇に入るんでしょう。まあこんだけ稼いでますからゆっくりやってもらえばいいと思うけど。

"Mind Of A Country Boy" by Luke Bryan

ちょっと下がって51位に初登場しているのがカントリーのルーク・ブライアンの8作目のアルバム『Mind Of A Country Boy』。何と今回彼のキャリアで最低のチャート成績を記録してしまってます。わずか2作前の『What Makes You Country』(2017)までは3作連続全米ナンバーワンを記録していただけにこのギャップには驚いてしまいます。内容的にそんなに大きくスタイルが変わったとかいうことはないので、単にルーク・ブライアンというアーティストへのファン全般の興味が下がってしまったということか。

確かに今回のアルバムからのシングル3枚「Country On」「But I Got A Beer In My Hand」「Love You, Miss You, Mean It」はいずれもカントリー・チャート1位を逃してますし(前作は3曲がカントリー・チャート1位)Hot 100でも40ヒットになってるのは「Love You, Miss You, Mean It」が何とか今週39位に上昇してきているくらい。ここ最近のカントリー・リヴァイヴァルの風潮に乗り切れない何かがあるのかは判りませんが、今後はカントリーでもこういう二極化が進むんでしょうかね。

"You’ll Be Alright, Kid (Chapter 1)" by Alex Warren

今週の100位までの初登場の最後は、62位初登場、YouTubeインスタTikTokでこれまで動画やポッドキャスト、そして最近では音楽も配信してきたという、今のSNS世代を代表するようなアーティスト、当年24歳のアレックス・ウォーレンのデビュー・アルバム『You’ll Be Alright, Kid (Chapter 1)』。風貌に似合わず(笑)意外と渋いバリトン・ボイスで歌う曲は、明らかにエド・シーラン世代のシンガーソングライター然としたもので、かなりメロディもいいものが多いので、聴いてて一発で気に入りました。いやこれならアトランティックエド・シーランのアメリカでのレーベル)が契約するわ。

今のところHot 100ヒットはアルバムオープニングの「Burning Down」(今週チャートイン2週目で69位上昇中)だけだけど、他の曲もシングルリリースすれば問題なくヒットしそう。ちょうどエド・シーランのベストがリリースされた週にこうして、エド・シーランフォロワー的な(うちのカミさんに言わせると「おっさんぽいエド・シーラン(笑)」)新しいアーティストが入ってくるというのも何かの流れなのかも。とにかくこれから秋が深まる中、なかなか素敵なサウンドトラックになってくれそうなアルバムです。今週一番のオススメ。

ということで今週の100位までの初登場は5枚でした。一方Hot 100の方はというと、もう何だか既定路線的に今週もシャブージーの「A Bar Song (Tipsy)」が13週目の首位を継続している以外では、先々週14位に初登場していた「Dancing In The Flames」に続いて、来月ニューアルバムリリース予定のザ・ウィークンドが、プレイボーイ・カーティをフィーチャーしたシングル第2弾「Timeless」をいきなり3位にぶちこんで来ています。ザ・ウィークンドの世界観とプレイボーイ・カーティのフローが絶妙にマッシュアップした感じの、なかなかキャッチーなトラックになってますね。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (3) (6) Short N’ Sweet - Sabrina Carpenter <100,000 pt/14,000枚>
2 (2) (28) The Rise And Fall Of A Midwest Princess - Chappell Roan <63,000 pt/14,225枚*>
3 (1) (2) Mixtape Pluto - Future <55,000 pt/384枚*>
4 (5) (83) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <50,000 pt/834枚*>
*5 (8) (20) Hit Me Hard And Soft ▲ - Billie Eilish<50,000- pt/6,443枚*>
6 (4) (7) F-1 Trillion - Post Malone <47,000 pt/3,082枚*>
7 (7) (24) The Tortured Poets Department - Taylor Swift <44,000 pt/4,025枚*>
8 (10) (97) Stick Season ▲2 - Noah Kahan <37,000 pt/2,084枚*>
9 (11) (14) The Great American Bar Scene - Zach Bryan<32,000+ pt/178枚*>
10 (12) (195) Dangerous: The Double Album ▲6 - Morgan Wallen<32,000 pt/358枚*>

サブリナが消去法的に4週目の首位を奪回した今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:10/4~10)ですが、来週は今週リリースされたコールドプレイの新作が多分10万ポイントくらいは叩き出すでしょうから、サブリナを蹴落として初登場1位を決めそうです。ではまた来週。


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