今週の全米アルバムチャート事情 #98- 2021/9/25付
今週連休の合間の火曜日の夜は中秋の名月。大きくまん丸く輝く神々しい満月を夜見ながら、自然の大きさ、宇宙の大きさに思いを馳せながら気持ち穏やかになる夜でした。コロナ新規感染者数は減少傾向にあるものの、今こそ「検査体制強化による感染実態のより正確な把握と再拡大防止のアクション実施」「医療体制の国や自治体によるサポート強化」「ワクチン確保と接種体制拡大・強化」の3つの改めての推進が(最初からそうだったのだけど)必要ですね。実り多い秋と普通に暮らせる年末年始のために、これから政府や自治体のトップに立つ皆さんには(誰であろうと)このことを最優先して実行してもらわなければなりません。そのために我々一人一人ができることは最大限やりましょう。」の3つの改めての推進が(最初からそうだったのだけど)必要ですね。実り多い秋と普通に暮らせる年末年始のために、これから政府や自治体のトップに立つ皆さんには(誰であろうと)このことを最優先して実行してもらわなければなりません。そのために我々一人一人ができることは最大限やりましょう。
さて今週もお送りする「全米アルバムチャート事情!」、いつものように連動ポッドキャストも週末までには配信しますので、それまでは上記のリンクからこれまでの配信をお楽しみ下さい。
さて今週9月25日付のBillboard 200全米アルバムチャート、1位は先週断言したとおりにドレイクの『Certified Lover Boy』が余裕で2週目の1位をキープ。ポイント的には先週比で61%減の236,000ポイント(うち実売6,500枚)と、予想の半減よりは余計目にダウンしてしまいましたが、それでも2位のカニエ『Donda』が79,000ポイントですから約3倍のポイントということでこの分では来週もドレイクの1位は堅そうです。
Hot 100の方でも、先週は1位初登場の「Way 2 Sexy」を筆頭に上位5曲でHot 100を独占という、1964年のビートルズ以来の記録を達成したのを含め、トップ10中9曲独占、アルバム収録21曲の全曲トップ40内初登場(!)という凄まじい記録を達成していたのですが、今週も2曲がHot 100から落ちただけで、未だに「Way 2 Sexy」の2位を筆頭に19曲(うち11曲がトップ40内)がランクインされています。同一アーティストによる2週連続でのHot 100ランクイン曲数記録、というのもあるのではないかと思うんですが、これは調べてません。どなたか時間ある方いたらお願いします。なお、今週ストリーミングポイントも227,000ポイント(オンデマンドストリーミング3.05億回相当)と対先週比60%減、ということでこちらも予想よりは大きく減らしてます。
一方、先週予想で名前が出た、ケイシー・マスグレイヴスの5作目になる『Star-Crossed』が77,000ポイント(うち実売が47,000枚で、今週のアルバムセールスナンバーワンです)で今週3位に初登場。ケイシーと言えば、前作『Golden Hour』(2018)はカントリー・ポップというジャンルから大きく踏み出したコンテンポラリー・ポップ作品としてメディアからも高く評価され、2019年の第61回グラミー賞ではドレイクやH.E.R.、ポスティといった強豪を退けて見事メインの最優秀アルバム賞を受賞するという、彼女のキャリアの頂点を極めた作品でした(自分も2018年の個人年間ランキングで、年間2位に挙げていた、大好きなアルバムでした)。
あの時はその前年2017年に同じナッシュヴィルのシンガーソングライター、ラストン・ケリーと結婚したばかりで、『Golden Hour』はタイトルが示すように、個人的にも幸せの絶頂にいた彼女の心境やヴァイブがビンビンに伝わってくるポジティヴの塊のような作品で、本当によかったね、といっしょに喜んでたものですが、何とその後昨年2020年にラストンと離婚。今回の『Star-Crossed』はコロナロックダウン期間中に書きためた40曲から選ばれた、彼女の離婚以降の痛みや苦しみ、後悔といった心情を詞に忍ばせた15曲が収録されたアルバムのようです。確かに「Good Wife」なんていう曲を聴くと「ああ、こういう形で二人の間にすれ違いが起きた、というのを歌ってるんだなあ」と感じますね。
でもテーマの割に、いつものケイシーのポップでキャッチーな楽曲は健在ですし、前作同様エレクトロなサウンドやドラム・ループなどを多く使いながら、靄に包まれたような彼女のボーカルと音像が気持ちのいいアルバムに仕上がってますね。前作ほどではないですが、メディアの評価もなかなか高いようです(メタクリティックで79点)。また今回の新作リリースに併せて、50分に亘る映画も制作したということで、ケイシーとしては全く別の意味で気合いが入っている作品のようです。自分のところには昨日届いたところなので、もっと聴き込みたいと思ってます。
今週もう一枚、トップ10に初登場してきたのは、あのケンドリック・ラマーの従兄弟ということでも注目を集めている若手ラッパー、ベイビー・キーム(本名:ハイキーム・ジャマール・カーターJr.)のデビュー・アルバム『The Melodic Blue』が53,000ポイント(うち実売1,000枚)の5位初登場。すでにケンドリック・ラマーをフィーチャーした「Family Ties」が先々週18位に初登場してブレイクしているベイビー・キーム、ラップのスタイルは従兄弟のケンドリックよりはやや下世話(笑)な感じがしますが(「Family Ties」のMVの印象かも)それ以外のトラックも含めていずれもなかなかタイト。この手の最近のヒップホップ系のよくできた作品に共通なんだけど、トラップ・スタイルは最小限に抑えて、いろんなサウンドビッツを駆使しているので聴いてて飽きません。
とは言うものの、全体的には荒削りで、ケンドリック・ラマーがフィーチャーされてる2曲でも、ケンドリックがいつもと違う感じでラップしててややお遊びっぽくやってる感じもするので、まあこれからなんでしょう。デビューとしては上々ということで。
そして今週トップ10では、初登場ではないのですが、最近のジョージ・ハリソン『All Things Must Pass』やアーリヤ『One In A Million』同様、オリジナルリリースからxx周年記念盤リリース、というパターンで今週大躍進してトップ10に返り咲いたのが、メタリカの5作目『Metallica』、通称ブラック・アルバムです。これがオリジナルリリース30周年盤リリースで先週の158位から一気に9位に急上昇してきました(37,000ポイント、うち実売29,000枚)。1991/8/31付BB200に1位で初登場してそこから4週連続1位を記録して、彼ら最初のナンバーワン・アルバムとなったこの作品、最初のチャートランでは281週チャートに残り、その後も何度か再登場して今週で通算625週目、MRCデータによると1,730万枚を現在までに売り上げているという(でもRIAAの認定は16xプラチナ)オバケロングラン・ベストセラー・アルバムです。
今回のバージョンは有名マスタリング・エンジニアのボブ・ラドウィッグによるリマスタリングが施され、基本180g重量盤2枚組LP+CDのパッケージでリリース。ただ、限定ボックス・セットは、これにライブ盤LP3枚組、未発表音源収録のCD14枚とDVD6枚セットというもの凄い仕様になってるようです。何しろ彼らの代表曲であの、元NYヤンキースの名クローザー、マリアノ・リヴェラの登場曲としても有名な「Enter Sandman」(1991年最高位16位)や「The Unforgiven」(同35位)など代表曲満載の彼らの代表作。先週もお伝えしたようにこれを記念して様々なアーティストがこのアルバムをカバーしたトリビュートアルバム(リナ・サワヤマやアレッシア・カーラ、ウィーザーら6アーティストが揃って「Enter Sandman」やってるのは圧巻)もリリースされてて、こちらも今週132位に初登場してます。いやでも改めて聴くとこのアルバム、やはり傑作ですね。
ということでトップ10内初登場(含む再登場)に続いては、今週10位圏外100位までの初登場アルバムのご紹介。今週も初登場は2枚と少なめですが、再登場でもう1枚ご紹介したいのがあるので、併せて3枚のご紹介です。まずは12位に初登場、先週トップ10来るかも、と言っていたJバルヴィンの6作目になる『Jose』。
Jバルヴィンというと何と言ってもカーディBの2018年のナンバーワンヒット「I Like It」にバッド・バニーと共にフィーチャーされて一躍メインストリームにその名を馳せたのが記憶に新しいわけですが、その後もラテン・チャートの方ではバッド・バニーとのコラボシングル「La Canción」(2019、Hot 100 84位)、久々に名前聞いたブラック・アイド・ピーズをフィーチャーした「Ritmo (Bad Boys For Life)」(2019, Hot 100 26位)、そして直近デュア・リパ、バッド・バニー、テイニーをフィーチャーした「Un Dia (One Day)」(2020, Hot 100 63位)とコンスタントに1位を記録してその筋での人気を確立。今回のアルバムはその「Un Dia (One Day)」を収録ということでかなり高いポジションでの発進になってます。ちなみに「Jose(ホゼ)」は彼のファースト・ネームですね。いやしかしこのジャケはベタだな。
そしてそのすぐ下の13位に初登場ではなく、再登場なんですが是非ご紹介したいのが、そう、アリーヤの2001年のナンバーワン・アルバム、『Aaliyah』。以前彼女のセカンド・アルバム『One In A Million』が20年ぶりのリイシューとストリーミングで10位に再登場した際に触れましたが、この『Aaliyah』も9/10にリイシューと同時にストリーミング配信開始したことを受けてここに入って来ました。このアルバムは何といっても、2001年の7月にBB200の2位に初登場後下降していたところ、アリーヤが8月25日に非業の最期を遂げた直後の9/15、まさにほぼ20年前に再上昇して1位を記録していた、アリーヤファンに取っては忘れられないアルバム。
自分的にはやはりこのアルバムでは、アリーヤが事故に巻き込まれる直前までバハマでMVを撮っていた「Rock The Boat」の幽玄的なグルーヴが忘れられないですね。この傑作アルバムが、今回のストリーミング配信で、今の若いR&Bファンに広く聞いてもらえるようになって本当に良かったな、とつくづく思います。改めてR.I.P. アリーヤ。
そして今週最後の初登場はまたしてもK-Pop勢、8人組のボーイズバンドのエイティーズ。彼ら初のBB200チャートインとなった『Zero: Fever Part. 3 (EP)』が42位に入って来てます。既に韓国ではアルバム3枚、EPもこの作品を含めて2018年から8枚リリースしてますが、このグループ、BTS同様日本でもかなり人気があるようですな。
彼らはこれまでEPをシリーズでリリースしているようで、このアルバムは「Zero」シリーズの3作目。その前には「Treasure」シリーズで5枚出してます。こういうテーマを決めてシリーズで作品リリースするっていう手法、BTSやTXTも含めてK-Popのアーティストに多いですね。作風自体はソツなく作られた今風メインストリーム・エレクトロ・ポップにラップが絡む、という美味しいところを幕の内的に取り揃えた内容で、まあ今どきのメインストリーム・ポップ・ファンには受けるでしょうね。
ということで今週の100位までの初登場アルバムのご紹介でした。ここでいつものように今週のトップ10のおさらいです。今週キッドLAROIにプラチナ・ディスクのマークが付いてます(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。
*1 (1) (2) Certified Lover Boy - Drake
2 (2) (3) Donda - Kanye West
*3 (-) (1) Star-Crossed - Kacey Musgraves
4 (4) (17) Sour ▲ - Olivia Rodrigo
*5 (-) (1) The Melodic Blue - Baby Keem
6 (5) (12) Planet Her - Doja Cat
7 (8) (60) F*ck Love ▲ - The Kid LAROI
8 (6) (36) Dangerous: The Double Album ▲ - Morgan Wallen
*9 (158) (625) Metallica ▲16 - Metallica
10 (7) (7) Happier Than Ever - Billie Eilish
今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。では最後に恒例の来週の1位予想ですが、ポイントはとにかく来週のドレイクのポイントがどこまで落ちてくるかということと、それを凌駕するだけのポイントを叩き出せる新作(または旧作のデラックス・リイシュー)があるかということに尽きます。前回『Scorpion』の時の2週目、3週目のポイント減衰率は初週ポイントの54.2%、64.5%でした。今週の『Certified Lover Boy』の減衰率が61.5%とやや多めなので、ここから類推すると来週の予想ポイント数は165,000ポイントとなってまだまだ強めの数字。で、来週の対象期間、9/17-23リリースの顔ぶれはというと、リル・ナズXの初フル・アルバムが多分一番可能性高そうです。ただドレイクの勢いから6:4でドレイク3週目とみてますがどうでしょうか。その他トップ10に来そうなのは、ドートリーとエンリケ・イグレシアス、それぞれ久しぶりの新作くらいか。ではまた来週。