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今週の全米アルバムチャート事情 #259- 2024/10/26付

我がNYメッツは残念ながらあともう一息というところでワールドシリーズには辿り着けず。かくなる上は大谷翔平LAドジャーズに是非ヤンキース撃破を期待したいところですが、冷静に考えて投手力(特に先発陣)はヤンキースにかなり分があり、打撃陣はジャッジがまだ半分眠っている現在でややドジャースが有利なものの、ジャッジが完全覚醒してしまうとこちらもヤンキースに分があるということで、正直予想としては4勝2敗でヤンキース、というのが現実的なところではないかと思ってます。とはいいながら、大谷、そしてドジャース応援しますけどね!これからハロウィーンの週に入っていこうという今週、MLBもいよいよ大詰め、音楽共々盛り上がって行きましょう。

"Beautifully Broken" by Jelly Roll

今週の全米アルバムチャート、10月26日付のBillboard 200の首位、先週はサブリナロッド・ウェイヴジェリー・ロールの三つ巴で、ロッド・ウェイヴに僅かに分があるのではないか、という予想をしてましたが何と意外にタトゥーだらけの無頼のカントリー・スター、ジェリー・ロールが強く、彼の通算10枚目のオリジナル・アルバム『Beautifully Broken』が161,000ポイント(うち実売114,000枚は今週のアルバム・セールス・チャート1位)というかなり力強い出力で堂々、初登場で初の全米ナンバーワンを達成しています。昨年、ブレイクスルーであると同時にHot 100クロスオーバーヒットにもなった「Son Of A Sinner」(2022年Hot 100 31位、カントリー・チャート7位)、続く「Need A Favor」(2023年Hot 100 13位、カントリーチャート1位)、レイニー・ウィルソンとのデュエット「Save Me」(同35位、カントリーチャート1位)と立て続けにヒットを飛ばして昨年のCMA(カントリーミュージック協会)アウォードの最優秀新人賞を見事受賞、シーンに旋風を巻き起こしたジェリー・ロール、また大きな勲章を一つ手にしたことになります。

全身を覆うタトゥーもあってとかく色物に見られやすいジェリー・ロールですが、そのロックやR&Bに軸足を寄せながらも、しっかりとカントリーのメインストリームも意識した楽曲を紡ぎ、歌唱もしっかりしているとあって、若手から中年層のアメリカ中南部のカントリーファン層からはかなり手厚い支持を受けているような印象がありますね。またゲスト陣も、今回も先行シングルでジョン・デンバーのあの有名曲を使ったmgk(マシンガン・ケリー)との「Lonely Road」など2曲やホールジーとの「Take A Bow」らのロック系の他、ヒップホップのウィズ・カリファとの「Higher Than Heaven」との共演だけでなく、キース・アーバンアーネストなどメインストリームのカントリーアーティスト達も配し、なかなかバランス取れた構成にしています。それだけでなく、今回はCD4種類、ヴァイナル7種類の14曲入り標準エディットの他、デジタルでは22曲入り拡張アルバムや27曲、28曲入のデラックス・バージョンもリリースしているようで、マーケティングにも抜け目なく目配りした結果が今回の成功につながったようで。まずは初の全米ナンバーワンおめでとう。

"Last Lap" by Rod Wave

そのジェリー・ロールに及ばなかったのが、普通だったら充分1位レベルの127,000ポイント(うち実売2,000枚)で2位初登場となった、ロッド・ウェイヴの6作目『Last Lap』。3作目の『SoulFly』から3作連続全米ナンバーワンで来てたんですが、今回は実力充分なるもジェリー・ロールの前に2位で涙を呑んでいます。でも、今回もロッド・ウェイヴ得意のアコースティックなトラックやピアノやギターも多用したエモでチルなトラップ、というユニークな世界観を展開しているアルバムで、ファンの期待を裏切らない内容と言えるでしょう。

いつものロッド・ウェイヴ節が炸裂したタイトル・ナンバーや「25」、そして先行シングルの「Passport Junkie」といったトラックもさることながら、リル・ヤティリル・ベイビーをフィーチャーした「Fuck Fame」なんかはトラップ・ビート一辺倒にならず、この2人のキャラを活かしたレイドバックでドウプなヒップホップ・トラック、なかなかキャッチーですね。ちょうど今週からこのアルバムリリースに合わせて、アリゾナ州フェニックスを振り出しに全米36箇所を回ってクリスマスの前の週にフロリダのフォート・ローダーデールで完結する「ラスト・ラップ・ツアー」をキックオフしているようで、しばらくはこのアルバム、チャートの上位に居座りそうです。

"Brat and it’s completely diffrerent but also still brat" by Charlie XCX

そして初登場ではないんですが、今週14位→3位にリバウンド、最高位タイに戻って来たのが6月にリリースされたチャーリーXCXの『Brat』のスーパー・デラックス・バージョン(105,000ポイント、うち実売48,000枚)。基本このスーパー・デラックス・バージョンはオリジナル15曲のリミックストラックとオリジナルトラックをペアリングしたものにボートラを追加した34曲収録、というもので、タイトルも『Brat and it’s completely diffrerent but also still brat』(完全に別モンだけどそれでもこれはBrat)と言うだけあってかなりもうこれは別モンですね。昔はこれだけ内容が違うリミックス・アルバムだったら別チャートインしていたんですが、最近はビルボードの方針も甘々なので両方同じアルバムとしてチャート上は扱うようで、今回のリバウンドになった模様。

このリミックスがなかなか豪華で、「360」のロビンヤング・リーン・リミックス、「Sympathy Is A Knife」のアリアナ・リミックス、このアルバム、リミックスも含めて基本エレクトロ・ダンス・ビート満載なんですがその中で一際異彩を放っている、先週のコールドプレイのアルバムの冒頭にもフィーチャーされていたジョン・ホプキンスThe 1975リミックスのアンビエントで静謐な「I Might Say Something Stupid」などなど、ファンにはなかなかたまらんバージョンなんでしょうなあ。

"Glorious" by GloRilla

今週のトップ10はなかなか賑やかです。続いて5位に初登場してきてるのは、メンフィスのかっ飛び娘、グロリラのデビュー・アルバム『Glorious』(69,000ポイント、うち実売12,000枚)。現在ミーガンをフィーチャーしたシングル「Wanna Be」(11位)や「TGIF」(28位)が絶賛ヒット中のグロリラ、いきなりデビュー作をトップ10に持ってきました。

おなじみのダミ声ラップで明らかにミーガンあたりを意識したスタイルのグロリラ、今回のアルバムのゲスト陣もそのミーガンをはじめ、ラット、R&Bシンガーのマニー・ロングとの「Don’t Deserve」、類似路線(笑)のセクシー・レッドフライデーと、女性アーティストを中心に固めてます。ただ目を引くのが、南部のラッパーらしく、ゴスペル界のゴッドファーザー、カーク・フランクリン師をはじめアトランタのメイヴェリック・シティ・ミュージックをフィーチャーした正統派ゴスペルナンバー(にグロリラのダミ声ラップが入る)「Rain Down On Me」。このあたりはいかにも南部の黒人アーティスト、って感じですね。それ以外にも懐かしやT-ペインをフィーチャーした「I Luv Her」などなかなか聴きどころは多そうです。

"Take Care" by BigXthaPlug

トップ10初登場もう1枚。ちょっと驚いたのですが、ダラス出身のB級アングララッパーだと思っていたビッグXザプラグ(本名:ザヴィエル・ランダム)のセカンド・アルバム『Take Care』が今回大躍進で初のトップ10入り、8位に初登場しています(48,000ポイント、うち実売1,500枚)。しばらく前からビルボードのヒートシーカー・チャート(100位以上にアルバムをチャートインしたことのないアーティストのアルバム・チャート。新興アーティストの指標的チャート)の首位を続けていたので、一定の人気があるんだな、と思ってたら今回いきなりトップ10ブレイクしました(ファースト『Amar』は昨年97位でこの時点でヒートシーカーの資格は消えてますが)。

ちょっと改めて聴いてみましたが、なるほどちょっと70年代ブラック・ムーヴィーのサントラ風のなかなかスルドイトラックに載って、ちょっと(ちょっとが多いw)ビギーを思わせるような野太い声のフロウがなかなか魅力的ではありますね。もともと高校大学時代はアメフトの選手として結構活躍してたらしいですが、大学在学時代に学内でマリファナを売買していた(笑)門で退学を食らって、フットボールのキャリア断念を余儀なくされた(ってそれ自業自得やんw)というなかなか情けないやつでもあります。この後ビッグになるのかこれ一発で終わるのか、要注目かも知れません。

以上今週のトップ10初登場は久々に多めの4枚。一方圏外11〜100位は今週珍しく初登場ゼロでした。さて今週のHot 100ですが、いよいよシャブージーの「A Bar Song (Tipsy)」が15週目の首位キープ。これでハリー・スタイルズの「As It Was」に並んで歴代長期1位滞在記録歴代5位タイの大ヒットになってます。しかしねえ、この曲、そこまでの超大ヒット、という存在感が希薄なのが不思議です。ここで歴代の長期1位記録のトップ10、おさらいしておきましょう。(1位週数、タイトル、RIAAマーク、アーティスト、1位日付、*は継続中)

1.(19週) Old Town Road ▲17 - Lil Nas X f/ Billy Ray Cyrus (2019/4/13-8/17)
2.(16週) One Sweet Day ▲4 - Mariah Carey & Boyz II Men (1995/12/2-1996/3/16)
2.(16週) Despacito ▲13 - Luis Fonsi & Daddy Yankee f/ Justin Bieber (2017/5/27-9-9)
2.(16週) Last Night ▲7 - Morgan Wallen (2023/3/18 & 4/15-22 & 5/6-7/8 & 22 & 8/12-19)
5.(15週) As It Was ▲6 - Harry Styles (2022/4/16 & 30-5/7 & 6/4-25 & 7/9-23 & 9/3-10)
5* (15週) A Bar Song (Tipsy) ▲3 - Shaboozey (2024/7/13 & 27-10/19*)
7.(14週) I Will Always Love You (From “Bodyguard”) ▲10 - Whitney Houston (1992/11/28-1993/2/27)
7.(14週) Macarena (Bayside Boys Mix) ▲4 - Los Del Rio (1996/8/3-11/2)
7.(14週) I’ll Make Love To You ▲ - Boyz II Men (1994/8/27-11/26)
7.(14週) Candle In The Wind 1997 / Something About The Way You Look Tonight ▲11 - Elton John (1997/10/11-1998/1/10)
7.(14週) We Belong Together ▲6 - Mariah Carey (2005/6/4-25 & 7/9-9/10)
7.(14週) I Gotta Feeling ▲10 - The Black Eyed Peas (2009/7/11-10/10)
7.(14週) Uptown Funk! ▲11 - Mark Ronson f/ Bruno Mars (2015/1/17-4/18)

うーんこうやって並べて見るとやはりシャブージーの存在感が他の超メガヒットの顔ぶれに比べて希薄ですねえ(笑)。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) Beautifully Broken - Jelly Roll<161,000 pt/114,000枚>
*2 (-) (1) Last Lap - Rod Wave<127,000 pt/2,000枚>

*3 (14) (19) Brat - Charli XCX<105,000 pt/48,000枚>
4 (2) (8) Short N’ Sweet - Sabrina Carpenter <85,000 pt/13,656枚*>
*5 (-) (1) Glorious - GloRilla<69,000 pt/12,000枚>
6 (3) (30) The Rise And Fall Of A Midwest Princess - Chappell Roan <55,000 pt/15,178枚*>
7 (5) (22) Hit Me Hard And Soft ▲ - Billie Eilish<50,000 pt/8,303枚*>
*8 (-) (1) Take Care - BigXthaPlug <48,000 pt/1,500枚>
9 (4) (85) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <48,000 pt/1,139枚*>
10 (6) (26) The Tortured Poets Department - Taylor Swift <44,000 pt/5,260枚*>

久々にトップ10が大いに賑わった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週1位の予想です(チャート集計対象期間:10/18~24)が、来週は上位がまた下がってきて、9万~10万ポイントの攻防だと思いますが、これまでリリースごとに着実に順位を伸ばしいてるラッパーのイートが9万ポイント台を叩き出せば首位、でなければサブリナが消去法的に1位返り咲き、というのがシナリオのような気がします。ではまた来週。

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