今週の全米No.1アルバム事情 #28- 2020/5/23付
検察庁法改定法案の成立見送りが決まったみたいですね。いいことです。今の重要事態での優先順位にそもそも疑問があったのと、行政の恣意的介入に道を開くとも読めるおかしな法案を充分審議もなしに成立させようと言うこと自体が無理筋だったし。論点はいろいろ錯綜してるけど、広く国民からの批判が山を動かしたことは大きな意義があったと思いますね。それはそうと、コロナ引き続き皆さん兜の緒を締めて参りましょう。
さて今週末のBillboard 200の1位、僕はてっきりシーンからも評価が集まっていた元パラモアのヘイリーのソロが来る、と思ってたのですが何とトップ10にも入らず。先週の予想ではヘイリー、ノラジョン(ちなみにノラジョンはリリースが6月に延期になったようです)に続く三番手に予想していた、インド系カナダ人ラッパーのNAVの『Good Intentions』が135,000ポイント(実売73,000枚)という、思ったより力強いポイントと枚数で初登場してきました。これは彼にとって去年4月にやはり初登場1位だった『Bad Habits』に続く2枚目のNo.1なんですが、特に実売枚数が前回24,000枚から今回3倍規模にグンと増えているのが目に付きます。これ、ビルボードの記事によると、何とこのアルバムリリース(5/8)の2日後に、オリジナルの18曲入りのバージョンに加えて、更に14曲収録の『Brown Boy 2』ディスク(下のジャケご参照)を追加したデラックス・バージョンのリリースがあったのが、実売枚数に大きく貢献したとのこと。いや、一週間以内にデラックスリリースなんて反則でしょ(笑)。
前回の『Bad Habits』の1位以降、トラヴィス・スコットの『Astroworld』に客演したり、リル・ウジ・ヴァートとも再演したりと露出加速しようという動きも見えたので、今回のこういう動きも驚くことじゃないんだけど、何かその姿勢が気に入らないな。ガンナとトラヴィス・スコットをフィーチャーして今ヒットしてる、このアルバム収録「Turks」もピンとこないし、何しろPVが民族紛争っぽいネタを使う最悪のセンスだし。ちょうどコロナの影響でリリーススケジュール延期が相次いで全体低調なところでこういうギミックで1位を取りに行った、みたいなあざとさがオジサンには鼻につきますな。
それより予想外の健闘でうれしかったのは、ケラーニの新作『It Was Good Until It Wasn’t』が何と83,000ポイント(実売25,000枚)で2位初登場を果たしたこと。今個人的に若手R&Bシンガーの中では、ジェネ・アイコに並んで気に入ってる彼女の今回の作品も、その独得の音像世界をバックにクールさとエモーショナルな感じの両方の世界観を表現してくれてるみたい。そのジェネ・アイコと共演してる「Change Your Life」をはじめ、注目の正当派R&Bシンガー、ラッキー・デイや、あのジェイムス・ブレイクとの共演曲なんかもあって、これ、しばらく個人的にパワロテしそうです。そしてこれは前作『SweetSexySavage』(2017)の3位を上回る、彼女に取ってのBillboard 200最高位更新。あとは1位行くしかないな。
そしてやっぱりこういう低調な週はヒップホップ強いねえ、ということで5位にはシカゴ出身のラッパー、リル・ダークの5作目になる『Just Cause Y’all Waited 2』が57,000ポイント(実売3,000枚)というヒップホップ典型のポイント構成で初登場。この人、特にピンのヒットがあるわけでもないんだけど、前作『Love Songs 4 The Streets 2』(2019)の4位初登場くらいで化けて、今回で2作連続トップ5。これで何か一発ヒットが出ると、次作は1位初登場の可能性も出てくるね。まあ今時のトラップなんだけど確かにNAVなんかよりは遙かにパフォーマンスはソリッドだし、何となく人気出てきてるのも判る感じ。
そして今週のトップ10初登場はもう一つ、何と3月に2位初登場して先週までこのトップ10にいた『YHLQMDLG』が出たばかりのプエルトリカン・ラッパー、バッド・バニーが突如ドロップした『Las Que No Iban a Salir』が42,000ポイント(実売8,000枚)で7位に初登場。タイトルが「リリースするはずじゃなかったやつ」って言ってるくらいで、ジャケもCDの絵のみ、って愛想なしなんですが、これまで録音した未完成曲を中心に集めたものらしい。一昨年、あのカーディBと共演したナンバーワン・ヒット「I Like It」からこっち、めっきり上げ調子の彼、人気あるうちに稼いじゃおう、ってな感じなのかな(笑)。PVも楽しそうにやってますな。
ということで今週のトップ10、改めておさらいです。ちなみに先週1位だったケニチェズ、今週は何と38位に一気にダウンだったらしいです。あと今週リル・ベイビー『My Turn』がプラチナ認定されました。ポスティは未だに無印ですねえ。
(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)
1 (-) (1) Good Intentions - NAV
2 (-) (1) It Was Good Until It Wasn’t - Kehlani
3 (2) (2) Dark Lane Demo Tapes - Drake
4 (3) (11) My Turn - Lil Baby ▲
5 (-) (1) Just Cause Y’all Waited 2 - Lil Durk
6 (4) (4) Blame It On Baby - DaBaby
7 (-) (1) Las Que No Iban a Salir - Bad Bunny
8 (5) (10) Eternal Atake - Lil Uzi Vert
9 (6) (8) After Hours - The Weeknd
10 (8) (36) Hollywood’s Bleeding - Post Malone
さて来週の1位予想ですが、対象の5/15-21リリース作品の中で何と言っても光っちゃってるのがフューチャーの新譜。ここんとこ5作連続初登場1位ですからねえ。そしてこれに対抗できそうなのが、5/17リリースされたテイラー・スイフトのパリでのライヴ盤くらいかなあ。個人的にはジェイソン・イズベル、ウィーザーあたりの新譜が気になってます。ではまた来週。