今週の全米No.1アルバム事情 #36 - 2020/7/18付
先週後半4日連続新規感染者が200人を超えて、昨日今日で減ったとはいっても依然3桁。そして7/11以降「要入院者数」＞「退院者数」の差は日々広がっていて、これが更なる感染増加の前触れでないことを切に願います。
さて、今週末のBillboard 200チャートの1位、ここのところずっと首位に居座っていたリル・ベイビーを蹴落として今週1位に初登場したのは、やはり先週の予想通り、今年の2月自宅で侵入犯に射殺されてしまった僅か20歳の新人ラッパー、ポップ・スモークの遺作デビューアルバム『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』でした。彼のミックステープ『Meet The Woo 2』がBillboard 200の7位に初登場して華麗なブレイクを果たした2週間後に非業の死を遂げたポップの遺作への期待はずっとシーンで高まってたので、強力な競合がない限り1位は堅いところだと思ってましたが、やはり想定通り。UKでは5デケイド連続1位を記録したポール・ウェラー翁にはさすがにかなわず2位でしたが、全米では251,000ポイントと、ストリーミング190,000ポイント（2.7億回ストリーミング相当）で大きく稼いだだけでなく、ヒップホップには珍しく実売でも59,000枚を売り上げて（2020年ではエミネム、ジャックボーイズ、NAVに続く4番目の記録）今週は売上だけでも１位という文句なしの横綱相撲でした。
2月のミックステープを聴いて、この遺作のエグゼクティブ・プロデューサーを買って出たという50セントの肝いりもあって、その50セントをはじめ今大人気のロディ・リッチ、リル・ベイビー、ダベイビーをはじめスウェイ・リーやミーゴスのクエイヴォなど、まあ豪華ゲスト満載の作品でヒップホップファンなら聴かずにはいられないこのアルバム、彼のスタイルはドリルというトラップから派生したよりダークなリリックとサウンドが特長ですが、彼自身は生前「Shoot For The Stars」基金を立ち上げて、ストリートで苦しんでる若い仲間をサポートする、という活動もしてたらしいですね。しかし去年のニプシー・ハッスル、マック・ミラーからジュースWRLDそしてこのポップと、またここ１〜2年若手や実力派のラッパーの早逝が続いているのが残念な限り。
今週トップ10内初登場はこのポップだけですが、2位に先週14位から急上昇して何とそれまでの最高位（2016/7/2付の3位）を更新してしまったのが、ほとんどが黒人キャストでヒップホップを音楽に取り入れてアメリカ独立戦争時代の物語を綴った人気ミュージカル『ハミルトン』のキャスト・アルバム『Hamilton: An American Musical』（102,000ポイント、実売32,000枚）。『ハミルトン』といえば、全米で大人気を博して一時はプラチナ・チケット化してた、2016年のトニー賞とグラミー賞獲得の超人気ミュージカル。なぜそれが今頃こんなに急上昇したか？それは、7/3にオリジナルのブロードウェイのショーを録画した映像が、ディスニーの映像ストリーミング・サービス「ディズニー＋」で公開されたから。
このアルバム、2015/10/17にチャートインしてから一度もBillboard 200から落ちたことがなく、今週がちょうど250週目（ほぼ5年間チャートイン）。250週かかって2位以上の最高位に辿り着いたというのはもちろんBillboard 200史上の記録。これ以前には、トム・ペティが亡くなった直後の2017/10/21付チャートの2位に再登場した『Tom Petty & The Heartbreakers’ Greatest Hits』が、「リリースから」235週目で2位をマークした、という記録があったそうですが、連続チャートランで250週というのはまあ当分不倒記録になるでしょう。
また、ミュージカルのキャスト・アルバムとしては、1969年に13週連続1位を記録した『Hair』以来の何と51年ぶりの最高位記録。これもコロナの時代、在宅で映像ストリーミングにはまってしまう人が多いのを如実に反映したチャートアクションでした。
ということで今週のトップ10おさらい。さすがにハミルトンは5年もチャートインしてるし、貫禄の6プラチナマーク付です。（順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト）。
1 (-) (1) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
2 (14) (250) Hamilton: An American Musical - Original Broadway Cast ▲6
3 (1) (19) My Turn - Lil Baby ▲
4 (3) (12) Blame It On Baby - DaBaby
5 (4) (44) Hollywood’s Bleeding - Post Malone
6 (5) (16) After Hours - The Weeknd
7 (6) (30) Fine Line - Harry Styles ▲
8 (7) (8) The Goat - Polo G
9 (8) (18) Eternal Atake - Lil Uzi Vert ▲
10 (2) (9) Just Cause Y’all Waited 2 - Lil Durk
さて来週の1位予想ですが、7/10-7/16リリースのラインアップで何といっても目立つのが、ジュースWRLDのこちらも遺作になる3作目。こちらも豪華ゲスト満載の今の売れてるヒップホップのプロデューサー達が集合してる超話題盤なだけに、まあ来週の1位は堅いところでしょう。ではまた来週。