今週の全米アルバムチャート事情 #263- 2024/11/23付
今週から一気に冷え込んだ日本列島。今日は久しぶりに仕事で外出したけどコートにマフラーにセーターに手袋にヒートテックにとめっきり冬本番体制で身を固めたけど体重減ってるからそれでも寒いなぁ。皆さんも体調崩さぬように、晩秋(というか初冬?)をいい音楽でお過ごし下さい。
そんな寒い今週、全米アルバムチャート11月23日付のBillboard 200の首位はやはり予想通り、タイラー・ザ・クリエイターの『CHROMAKOPIA』が何とかポイント減衰を104,000ポイント(うち実売28,000枚)で食い止めて3週連続の首位をキープしています。これまでの彼の1位は、2019年の『IGOR』(1週)、2021〜2年の『Call Me If You Get Lost』(非連続2週)の2枚なので、今回のアルバムで最長1位を更新したことになります。
何となくアルバムチャートが無風のタイミングでうまいこと3週首位をさらっていった感のあるタイラーですが、それだけではなく、3週連続で自分のウェブサイト限定で販売しているフィジカルの4つの新しいパターンのボックスセットをリリースするなど、マーケティングにも余念ないようです。それでもまったく一般リテールチャネルでのフィジカル販売がない中で14万枚→4万枚→2.8万枚売って今週もアルバム・セールス・チャートの2位にどっしり座っているあたり、やはりタイラーの人気は底強いものがあると実感します。更に来年2月からはミネソタ州セントポールを皮切りに、全米29箇所、ヨーロッパ17箇所、そしてまた全米に戻って12箇所の後オーストラリアに飛んで9月にパースで完結する『CHROMAKOPIA:ザ・ワールド・ツアー』が始まるようなので、おそらく来年のどこかでまた前作のようにフィジカルをリテール・ロールアウトして、またトップ10に戻って来る、ということもあるんだろうなと思ってしまいますね。
さてそのタイラーをもう少しで押さえて今週2枚めの全米ナンバーワンを決められそうだったのが、Kポップ5人組ボーイズ・バンドのTXTことトゥモローxトゥゲザー、7作目のEP(6曲入)『The Name Chapter: Sanctuary (EP)』。98,000ポイント(うち実売95,500枚)ですからわずか6,000ポイント差で去年の『The Name Chapter: Temptation (EP)』に続く2枚目の全米ナンバーワンを逃したことになります。
今年4月リリースの前作EP『Minisode 3: Tomorrow (EP)』(3位)に続いて10万ポイント近い出力を叩き出した今回のEP、昨年10月のアルバム『The Name Chapter: Freefall』(3位)では珍しく彼らにしてはハードでエッジの立った楽曲にも挑戦してたんですが、今回はシングルの「Over The Moon」を始め全曲がみんな大好き、安心して聴けるメインストリーム・ダンス・ポップ路線のTXT炸裂!といった楽曲で染め上げられた作品になってて、まあこれは売れるわなあ、という感じですね。ある意味基本に立ち返ったということですが、悪く言うと進歩がないという見方もできなくはないですが、彼らはこの路線を突っ走って、BTSの全米ブレイクの継承者として頑張ってもらいたいところです。
11位以下に目を向けると、100位までの初登場は今週2枚。1枚は48位にエントリーしてきた、ボストンと言いながらフロリダはタラハッシー出身のラッパー、リアル・ボストン・リッチー(本名:ジェイレン・タヒーン・フォスター)のセカンド・アルバムで4作目のチャートイン作品『Richey Rich』。
相変わらず全面にわたってムニャムニャ言ってるトラップ野郎なんで個人的には全くのスルーパターン。今回もフューチャーのレーベル、フリーバンズからのリリースですが、前作おそらく満を持してリリースしたと思われるデビューフル・アルバム『Welcome To Bubba Land』が94位と奮わなかったこともあるのか、今回はデジタルのみのリリースで、フィジカルは出てません。まあフィジカル買うような内容じゃないですが。
もう1枚の初登場は94位とギリギリに入って来た、Kポップ5人組ガールズグループ、アイリット(ILLIT)のセカンドEP『I’ll Like You (EP)』。今年3月にリリースのデビューEP『Super Real Me』も93位とだいたいこのあたりのチャート実績でしたからまだまだこれから、という感じです。モカ(境萌花)とイロハ(外薗彩羽)と2人の日本人メンバーもいるアイリット、KポップのガールズグループではTWICEやNewJeans以外ではHot 100ヒットを記録している唯一のグループだけに今後の飛躍が期待されるところ(今年4月に「Magnetic」が91位)。
今回5曲収録されてる楽曲はいずれもTWICE路線というか、メインストリーム・スイート・ポップ路線の可愛らしい曲が並んでますが、ここからは一皮むけるような曲への挑戦も必要なのかも。個人的には悪くないなあ、と思いますけどね。
以上、今週の100位までの初登場はわずか3枚でした。Hot 100の方に目を向けると、シャブージーの「A Bar Song (Tipsy)」が今週も首位キープ、とうとう18週目を記録して、歴代トップのリル・ナズX+ビリー・レイ・サイラスの「Old Town Road」の19週にあと1週と迫って来ました。これは来そうだなあ。一方今週の注目曲は、13位→6位といよいよトップ10入りしてきたグレイシー・エイブラムスの「That’s So True」。グレイシー、ここのところ英米でブレイクし始めていて、この曲もUKでは既に2週目の1位を記録してます。先日リリースされたデラックス・バージョン収録のキャッチーな曲でいかにもヒット曲、という感じでこういう曲が上昇してくるとヒットチャートも健全だなあ、という感じがしますね。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (1) (3) CHROMAKOPIA - Tyler, The Creator <104,000 pt/28,000枚>
*2 (-) (1) The Star Chapter: Sanctuary (EP) - TOMORROW x TOGETHER <98,000 pt/95,500枚>
3 (2) (12) Short N’ Sweet - Sabrina Carpenter <68,000 pt/10,905枚*>
*4 (5) (21) The Secret Of Us - Gracie Abrams <52,000 pt/3,304枚*>
*5 (7) (26) Hit Me Hard And Soft ▲ - Billie Eilish<48,000 pt/6,393枚*>
6 (6) (34) The Rise And Fall Of a Midwest Princess - Chappell Roan <47,000 pt/11,919枚*>
7 (10) (89) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <43,000 pt/909枚*>
8 (9) (30) The Tortured Poets Department - Taylor Swift <43,000- pt/4,274枚*>
9 (8) (5) Last Lap - Rod Wave<38,000 pt/49枚*>
*10 (14) (103) Stick Season - Noah Kahan <33,000 pt/2,235枚*>
TXTが惜しくも2枚目の全米ナンバーワンを逃してしまった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:11/15~21)ですが、興味の焦点は、久々のリンキン・パークが10万ポイントレベルを叩き出して見事カムバック首位なるか、という当たり。それに挑むのがショーン・メンデスだけど、タイラーもまだ9万ポイントくらいには持ちこたえそうなのでこの3組の三つ巴で、予想は僅かにリンキンが勝つ(というか勝って欲しい)ということにしておきます。ではまた来週。