今週の全米No.1アルバム事情 #54 - 2020/11/21付
アメリカ大統領選の大勢がバイデン勝利でほぼ確定した中、未だにトランプ大統領と共和党のトップは確たる根拠も示さないまま選挙不正を主張、訴訟対応を進めていますが、ほとんどは根拠が不充分とのことで訴えを却下されている模様です。この期に及んで未だに国内の分断をあおるかのような行動を続けるトランプ大統領。最近では大統領選の陰謀説を否定するコメントをした、国土安全保障省の幹部を解任するなど、益々良識を疑うような行動に出ている一方、バイデン陣営は新政権スタートに向けて着々と対応を進めています。とにかくまともな形での政権委譲を早期に進めてもらいたいものです。
さて今週末のBillboard 200は、先週の予想通り、ポイント数を先週の約半分の83,000ポイント(実売は先週の5分の1の8,000枚)に下げながらも、余裕でアリアナの『Positions』が2週目の1位をキープしてます。ただ、来週のチャートの対象となる11/13付リリースで結構強力なアルバムが出てますので、アリアナの天下もまあ今週まで、という感じでしょうか。シングルの「Positions」の方も、UKではまだ1位をキープしてますが、Hot 100の方では先々週1位初登場の後は2位に甘んじてます。
もう一つのシングル「34+35」(これが69を意味するということでファンの間では密かな評判になってるらしいですねw)も、USでは初登場8位の後もうダウンしてますし、UKでも先週9位初登場の後同様にダウン。これから年末にかけて、サンクスギヴィング、クリスマスとショッピングシーズンが続きますから、続くヒットトラックでアルバムの売り上げを支えたいところなので、おそらくザ・ウィークンドとの「Off The Table」(LA在住の日本人プロデューサー/DJ、ヤスダ・シンタロウ氏が共作・共同プロデューサーとしてクレジットされてます)か、ドジャ・キャットとの「Motive」あたりのオフィシャルPVがリリースされるんじゃないでしょうか。しかし昔だとシングル・カット、だったんですが時代も変わったもんです。
そして初登場ではないんですが、8/8付Billboard 200で8位に初登場していたキッドLAROIの『F*ck Love』が、ヒップホップアーティストお得意の(この間カントリーのルーク・コムズもやってましたが)7曲追加のデラックス・バージョン・リリース攻撃で先週の81位→3位に大きく躍進してます(52,000ポイント、実売不明)。タイトルも『F**k Love (Savage)』としたこのバージョンには最新シングル「So Done」(今週Hot 100で59位に急上昇中)や、こちらも今旬になってるヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインとインターネット・マニーをフィーチャーした「Tragic」(Hot 100今週76位初登場)、マシン・ガン・ケリーをフィーチャーした「F**k You, Goodbye」(同99位初登場)などが収録されてたので、これだけの再急上昇になったんですね。これだったらみんなやるよなあ。
そしてちょうど先週圏外の初登場で触れた、キング・ヴォン(本名:デイヴォン・デイクアン・ベネット)。自分のアルバムがチャートインするのを見る前にアトランタで射殺されてしまった彼のアルバム『Welcome To O’Block』が先週の初登場13位→5位にトップ10入り(43,000ポイント、実売不明)。何だかなあ、こういうチャートアクションは悲しいですね。オブロック、というのは彼が生まれてからこのかたずっと暮らしていた、低所得者が住む治安のよくないシカゴ南部のアパートが建ち並ぶパークウェイ・ガーデンズ一帯のことらしく、今回のブレイクで彼がやっとそうした厳しい暮らしから抜け出せる、と思ってただろうことを思うとやるせないですね。
さて今週は全体的に商いが薄いので必然ヒップホップが強めになります。6位にはインド系カナダ人のラッパー、NAVが今年5月のナンバーワンアルバム『Good Intention』に続いてリリースしたミックステープ(従ってデジタルダウンロードオンリー)『Emergency Tsunami』が初登場(42,000ポイント、実売7,000枚)。ジャケには日本語で「緊急津波」とデカデカと書かれて、まるで東宝の怪獣映画のポスターを思わせるデザインですが(笑)なぜ津波なんだか、その意図は不明。アルバムのオープニングでは確かに津波襲来の女性アナウンスが入ってるんですが特にコンセプトアルバムである様子もないので、単なる気分なんでしょうか。
プロデュースは今や売れっ子プロデューサーのウィージーことウェズリー・タイラー・グラス。毎度お馴染みのゆるーい、そういう意味では聴きやすいトラップトラックが並んでます。
さて今週のおさらいです。今週トップ10初登場は1枚のみですが、テイラー『folklore』も以前お伝えしたように従来CDのみだったターゲット・バージョンのヴァイナル発売で10位に返り咲くなど結構派手なチャートになりました。その他圏外初登場では、今週UKでは初登場1位のあら懐かしや、カイリー・ミノーグ『Disco』が26位初登場した他、キング・ヴォンが過去リリースしたミックステープが40位(『Levon James』)と53位(『Grandson, Vol.1』)に再登場してます。R.I.P.(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)
1 (1) (2) Positions - Ariana Grande
2 (3) (19) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
*3 (81) (16) F*ck Love - Kid LAROI
4 (4) (53) What You See Is What You Get ▲ - Luke Combs
*5 (13) (2) Welcome To O’Block - King Von
*6 (-) (1) Emergency Tsunami - NAV
7 (6) (18) Legends Never Die - Juice WRLD
8 (8) (37) My Turn ▲2 - Lil Baby
*9 (10) (268) Hamilton: An American Musical ▲7 - Original Broadway Cast
*10 (27) (16) folklore ▲ - Taylor Swift
ということで来週の1位予想、対象リリース期間は11/13-11/19ですが、13日にはフューチャー&リル・ウジ・ヴァートのコラボ・アルバムという、今ヒップホップで最も強力な2人が組んじゃったアルバムがリリースされてますので、これがかなりのポイント数(売上も結構行くんではないかなあ)でぶっちぎりで1位に飛び込んで来るんでしょうねえ。同じ期間にリリースされるAC/DCやクリス・ステイプルトンなんかも普通の週だったら充分1位取れるはずですが、この2人に組まれたらまあアカンでしょうなあ。ではまた来週。
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