DJ Boonzzyの選ぶ2022年ベスト・アルバム:20位~11位
先週のハワイ出張でなかなか手が付けられなかったこの年末洋楽企画第2弾の「DJ Boonzzyの選ぶ2022年ベスト・アルバム」ようやくエンジンがかかってきてここまで来ました。あと一息なんで、何とか大晦日前までにはフィニッシュしたいものです。ということで11位から20位。このあたりになってくるとやはり一般的にも、そして個人的にも今年を代表するアルバムが並んだな、という感じがします。では20位。
20.I Am The Moon I. - IV. - Tedeschi Trucks Band (Fantasy)
テデスキ・トラックス・バンドは間違いなく自分に取っての21世紀に入ってからのフェイヴァリット・アーティストの一つであり、これまで3回の来日公演に行って(どれも熱狂するパフォーマンスで、特に2016年武道館での、スーザンの火を噴くようなボーカルでのジョー・コッカー『Mad Dogs & Englishmen』の完コピライブは素晴らしかった)、2018年にはUS出張に引っかけてNYビーコン・シアターでのライブ(この日のハイライトはオールマンの「エリザベス・リードの憂鬱」)まで観に行ったくらい大好きなバンド。その彼らが今回4枚のアルバムで一つの作品を構成した新作を出すと聴いてちょっと戸惑ったのは事実。そして届いた4枚、『I. Crescent(三日月)』『II. Ascension(上昇)』『III. The Fall(落下)』『IV. Farewell(別離)』には全24曲、ある曲はポップで、ある曲は彼ららしいブルース・ロックで、ある曲はソウルフルなバラードでといった感じで、いつもと変わらぬ素晴らしい楽曲ばかりだったのだが、といって聴いて熱狂する、という感じでもなく、とても抑えた感じの楽曲が多かった。そしてこれ、ホントに4枚にする必要あったの?という疑問もあり、やや冗長に流れてしまっている嫌いもあるように感じたのだった。そういうこともあってか、そしてアルバムとしては4枚にカウントされることもあって、この作品は彼らが初めてチャートインを逃した作品となってしまっている。
その後いろいろ調べるとこの作品は、彼らが昨年ライブ盤『Layla Revisited (Live At Rockin')』でアルバム全曲再演した、あのデレク&ザ・ドミノスの名盤『いとしのレイラ』(1970)のインスピレーションとなった、12世紀のペルシャ人詩人、ニザーミー・ギャンジャヴィー(Nizami Ganjavi)の悲恋物語「ライラとマジュヌーン(Layla & Majnaun)」を元にしたものらしい。「いとしのレイラ」が報われない愛を悲しむ男(マジュヌーン)の視点からしか歌われていないことから、ちょうどコロナ禍で創作の機会を求めていたデレクとスーザンを中心としたバンドメンバーが、その相手の女性レイラやこの物語に登場する様々な人の視点から書いた曲を集めた作品なんだそうだ。ローリング・ストーン誌のスーザンのインタビュー記事によると、知人を通じて村上春樹からもこのプロジェクトへのサジェスチョンをもらったというから面白い。そういうことを頭に置いて再度この4枚を聴き直してみると確かに一連の映画的な情景が浮かんで来る気がする。まあそれでもいつもの彼らのアルバムとはなかなか比較ができないし、彼らの迫力あるライブへの感動が彼らの最高の魅力だと思ってる自分としては、なかなか評価が難しいけど、まあこのくらいの順位が順当かな。
19.Melt My Eyez See Your Future - Denzel Curry (PH Recordings / Loma Vista)
この間友人と呑んでた時にも言ったけど、2022年はトラップやギャングスタじゃないヒップホップのいい作品が多かったな、という印象がある。もちろんケンドリック・ラマーのあのアルバムはその最たるもんだけど、それ以外でもここ数年では一番いろんなヒップホップ作品を聴いて結構気に行ったものが多かった気がする。その一つがこのデンゼル・カリーのアルバム。ご多分に漏れず毎週のnote投稿「全米アルバムチャート事情!」で、リリース当時51位初登場してたので、記事書くためにそれまで名前は知ってたけどあまり聴いたことのなかったこのフロリダ出身のラッパーのこのアルバムを聴いてみて一発で無茶苦茶気にいったのだ。一曲一曲のエッジが立っていて、90年代のザ・ルーツをちょっと想起させるトラックもそこらのトラップアルバムとは比べものにならないくらいオリジナルでカッコいいし魅力的。オープニングの「Melt Session #1」には今最重要ブラック・ミュージシャンの一人、ロバート・グラスパーがフィーチャーされてて、「Mental」とか他の曲でもロバグラを感じるグルーヴがたっぷり。そしてデンゼルのラップもクリスプでいい。
ヴァイナル買ってみたら、日本語で「目が溶ける 未来を目指せ」「究極」とか書いた帯が付いてるので「あれ、オレ日本盤買ったっけ」と思ったが、そうではなく、帯も日本語もオリジナル盤仕様らしい。収録曲にも「Sanjuro(黒澤明監督の『椿三十郎』への言及)」「Zatoichi(座頭市)」とモロに日本文化に言及してるものがあってへー、と思ってたら、デンゼルのローリング・ストーン誌のインタビュー記事を読んだところ、何とデンゼル、大の日本好きで、松田優作とアニメ『カウボーイ・ビバップ』の大ファンらしいことが判明(笑)。なかなか今後好きになれるヤツのようなのだ。そのインタビューで「ギャングスタ・ラップには共感できない。過去ギャングスタ・ラップの後にネオソウルの時代が到来したが、同じような可能性を期待したい」と言ってるの読んでますます彼が気にいった。そういうことを別にしてもこの作品はかなりオススメ、特に90年代でヒップホップが終わった、などと嘯いている向きのヒップホップファンには是非聴いて欲しい(あ、もう聴いてるのかなw)。
18.Midnights - Taylor Swift (Republic)
皆さんご存知、ケンドリックのアルバムと双璧で2022年といえばこのアルバム、的な存在感を備えたテイラーのコロナ期3部作の最終作品。リリースされるや当然のごとく100万超えの圧倒的なポイント数で初登場1位したのに加えて、収録曲全20曲がHot 100にランクインしてしかもトップ10独占というとうとう破られることのない記録を達成してしまった。ただ、『Folklore』『Evermore』(共に2020)のオルタナ・フォーク的なサウンドスケイプからはかなりエレクトロ的なサウンドスタイルにシフトしている感があるので、この3枚の中では一番今っぽいよく出来たポップ・アルバム、というある意味一番普通っぽい作品という印象もある。それでも最近の定番パートナーであるジャック・アントノフをメインプロデューサーを迎えたこのアルバム、彼が最近手がけて、このアルバムでも「Snow On The Beach」でコラボしているラナ・デル・レイの最近の作品を思わせて、凡百のポップアルバムにはなっていないところはさすが。
内容的にはテイラーが真夜中にいろんな自分に関する告白をする、というコンセプトで例によって私小説的な内容の楽曲が多い。一方上記のようにサウンドがエレクトロっぽい分、1位になった「Anti-Hero」などのように前2作よりもビートの強調された楽曲もいくつかあるのでアルバム通して聴いても適度なサウンドやビートの変化がなかなか心地よい。結局作品アプローチ的には最近3作は基本的に変わってないのだが、それでもこのレベルのクオリティの作品を作り出せるということで腐ってもテイラー、ということか。何だかんだ言ってこのアルバムをストリーミングで聴いてることが多いなあ、というそんなアルバムだった。
17.(self-titled) - Marcus Mumford (Island / Capitol)
2010年代にデビューアルバム『Sigh No More』(2009年英米2位)、『Babel』(2012年英米1位)といったアルバムで世界的に大ブレイク、オルタナティブ・ブルーグラス・ロックという独得なスタイルで高い評価を集めたマムフォード&サンズだったけど、2018年の4作目『Delta』(米1位、英2位)以降、メンバーのウィンストン・マーシャルのネット発言を叩かれての脱退や、コロナでのツアー中止などちょっと活動がよどんでいたところで、リーダーのマーカスが、アラバマ・シェイクスの仕事で有名なブレイク・ミルズ(この年間アルバムランキングの37位のジャック・ジョンソンのプロデュースもやってましたね)を初めてプロデューサーに迎えてリリースしたのがこのソロ・デビュー・アルバム。こちらもアルバムチャートに登場したので聴いてみたところ、マーカスの毅然とした、静かな決意みたいなものが伺える、そんな佇まいの楽曲が並んでいて予想以上に気に入ってしまった。
いかにもマムフォードを思わせるスケールの大きいフォーク・ロック・アンセム風の「Cannibal」(このPVは何とスティーヴン・スピルバーグ監督)、パワフルなアメリカーナ・ロック・ナンバー「Grace」、そして真夜中に一人アコギをつま弾くマーカスの姿が思い浮かぶ静かな「Only Child」などなどいい曲満載。ゲスト陣も曲作りでジュリア・マイケルズと「Prior Warning」を共作、それ以外にクライロやフィービー・ブリッジャーズなど最近のオルタナティブ・ミュージックを代表する、独得のスタイルの女性シンガーソングライターと共演したりと、このアルバムで様々な新しいアプローチをトライしているのも新鮮。何でもこのアルバム作るにあたり、あのエルトン・ジョンから「絶対に曲は10曲以上入れるな」と言われたらしく、このアルバムのために書いた曲から10曲に厳選するのに苦労したとのこと。そんな作品だから良くないわけがないわけでして、アメリカーナやフォーク・ロック系好きな方には絶対お勧めです。
16.King's Disease III - Nas (Mas Appeal)
「2022年はいいヒップホップのレコードが多かった」という自分のセオリーを裏付けるもう一つの証左がナズがプロデューサーのヒットボーイと組んで2020年から毎年1作ドロップしている「King's Disease」シリーズ3作目のこのアルバム。昨年末にドロップした『Magic』とこれまでのシリーズでもクオリティ高い仕事してるヒットボーイのタイトでオーセンティック・ヒップホップなトラックメイキングと、今年49歳ながらナズの衰えない気迫溢れるフローが今回も素晴らしく、冒頭の「Ghettho Reporter」からスリリングなトラックを軽々と乗りこなすナズのカッコよさ。「オレが50歳になったら50歳の、60歳の、そして16歳のファンが欲しいぜ」というリリックに思わず「ここにいるぜ!」と反応したくなりました。
タイトルの通り、クインシー・ジョーンズやマイケル・ジャクソンらへの言及が楽しい「Michael & Quicy」をはじめ、全編90年代のプリモあたりを思わせるトラックの数々もツボなんですが、個人的に一番反応したのは、最後のボートラ「Til' My Last Breath」。今年ポストシーズンを惜しくも逃したMLBのNYメッツのクローザー、エドウィン・ディアズのウォーク・アップ・ソング「Narco」がガッツリサンプリングされてて、あのトランペットの響きでメッツ・ファンとしては「ポスト・シーズン惜しかったなあ」とあの悔しさを改めて噛みしめてました。メッツの地元クイーンズ出身のナズのこと、きっと同じ思いだったんだろうなあ、でもこのオフでメッツはヴァーランダーと千賀を押さえたんで来シーズンは期待できるけどナズはどう反応するんだろ?と早くも来年のナズの新作が気になっております(笑)。
15.Cheat Codes - Danger Mouse & The Black Thought (BMG)
ヒップホップが続きます。ホント2022年、思わぬところからいいヒップホップのアルバムが登場してきて、90年代熱い思いでヒップホップ聴いてた自分にはうれしい一年でした。このデンジャー・マウスとザ・ルーツ(大好きです)のブラック・ソートのコラボによるアルバムも、アルバムチャートの下の方に登場していたのを聴いて見てその充実した内容にぶっ飛んだ一枚。デンジャー・マウスというと、2000年代以降登場して、シーロ・グリーンとナールズ・バークレーやったり、ブラック・キーズやゴリラズのアルバムをプロデューサーしたりと、そのジャンル関係なしに独得のスタイルやグルーヴを表現する重要なプロデューサーの一人。そのデンジャーとブラック・ソートが組んだら何かスゴそうだぞ、という期待に完璧に応えてくれる内容の作品でした。
彼らが最初に会った2005年にこのアルバムのアイデアがスタートしたとのことなんだけど、全編トラック的にはウータンやトライブ、それこそザ・ルーツが活躍してた90年代後半から2000年代前半のヒップホップが一番クールだった時代のヴァイブを存分に湛えたサウンドで統一されてて、ドウプでクールでスリリングなトラックにブラック・ソートのストイックな感じのフローが乗っかってるというもの。個人的に一番気に入ってるのはB面1曲目、UKのオルタナティブなR&Bシンガー、マイケル・キワヌカをフィーチャーした「Aquamarine」。70年代ブラック・ムーヴィーの一場面を切り取ったようなスリリングなトラックに乗ったブラック・ソートの静かに聴く者をアジるようなフローがひたすらカッコいい。拾いものの一枚でした。
14.Misadventures Of Doomscroller - The Dawes (Rounder)
今年ライブ関係でうれしかったことの一つがフジロックに3年ぶりにフル参戦できたこと。そして更にうれしかったのは、2015年に4作目『All Your Favorite Bands』に出会って以来お気に入りのバンドの一つだったザ・ドーズが来日初ライブをそのフジロックのフィールド・オブ・ヘヴンでガッツリ観ることができたこと。ローレル・キャニオン風バンドとも言われ、ジャクソン・ブラウンと一時一緒によくツアーしていた彼らのサウンドと楽曲は70年代初期ウェストコースト・ロック(後半商業化する前のね)を彷彿とさせる、レイドバックでウィットに富み、ひたすら心地よく心に染み渡るものが多くて、一度ライブを観たいと思っていた、その願いがかなったわけ。
折からこのアルバムリリース直後で、このアルバムから珍しくボーカル・ギターのテイラー君が延々とギターソロを弾きまくる「Someone Else's Cafe」、ローレル・キャニオン風の魅力が炸裂する優しい「Comes In Waves」や「Everything Is Permanent」などをいきなり披露してくれて、今アルバムを聴き返してもあの時の興奮が甦ってきてうれしい。このアルバムはこれまでに比べると長尺の曲が多かったり、「Someone Else's Cafe」のようにテイラーのギターソロをフィーチャーするなど、アンサンブル中心の演奏スタイルからちょっと変化を見せたあたりが意欲的なところだな、と今聴くと思うけど、ステージで過去作品からの楽曲と一緒にセットで聴いても全然違和感なく、彼らの世界観で統一されてたように思う。ステージの最後で彼らも観客の予想以上の好反応に興奮してか「絶対また日本に戻ってくるからね!」と叫んでいたから、次の新作が出る時はライブもやってくれるだろう。70年代西海岸ロックが未だに好きな方には絶対のお勧めの一枚です。
13.Laurel Hell - Mitski (Dead Oceans)
フジロックと言えば前回参戦した2019年のフジロックのレッド・マーキーで観たミツキのステージもかなり印象的だった。当時彼女の初チャートインとなった前作『Be The Cowboy』(2018年52位)でメインストリーム・ブレイクしたミツキが、木製の長机と椅子だけというむちゃくちゃシンプルなステージ小道具だけで悠然とした、それでいて強烈な存在感溢れるライブを見せてくれたから。そしてそれから3年。次作として届けられたこの『Laurel Hell』では、彼女の出世作の前々作『Puberty 2』(2016)のポスト・グランジ的なサウンドから、前作ではシンセポップやオルタナなギターロック、ピアノとオーケストラのみの静かでドラマチックな曲など多様化したスタイルを基本踏襲。ただ今回はシンセ・ポップ路線のアップビートなサウンドが目立つものの、従来からの彼女のスタイルである内省や男女関係の崩壊などを彼女一流の夢見るようなボーカルで淡々と歌うニコのようなスタイルの楽曲も。
前者の例であるシンセポップ的な「Stay Soft」やトリプルAチャートで1位になった「The Only Heartbreaker」と、後者の例である「Everyone」のようにシンセは使ってるけどダークな感じの楽曲が不思議なバランスで同居しているこのアルバム、メディアからも高い評価を受けてミツキというアーティストのシーンでの地位を確立しただけでなく、日本人アーティストが欧米のロックシーンでちゃんと活躍して評価されることを証明した、ある意味歴史的作品ですよね。やはり今年ブレイクしたリナ・サワヤマと共に今後もフォローしていきたいアーティストです。
12.Dragon New Warm Mountain I Believe You - Big Thief (4AD)
ビッグ・シーフは、彼らが『U.F.O.F.』と『Two Hands』という2枚の素晴らしいアルバムをリリースしてブレイクした2019年に、洋楽友人で音楽ジャーナリストの、サンパウロ在住の沢田太陽君に教えてもらった。たゆとうように頼りないけど実は一本芯の通った、ボーカルのエイドリアン・レンカーの声に惹かれるところがあって、基本生楽器をベースにしたローファイな演奏によるインディー・ロックな感じも好きだった彼らは当時僕のお気に入りのバンドの一つになり、『Two Hands』はその年の自分のアルバムランキング11位に挙げたほど。その後コロナ禍の中、エイドリアンがマサチューセッツ州の小屋でアコギと彼女のボーカルだけで録音した『Songs / Instrumentals』(2020)もそのシンプルな美しさに惹かれて2020年の年間20位に挙げていた。
そのビッグ・シーフが3年ぶりにリリースした新作は、2019年の2作のうち、よりアメリカーナ的だった『Two Hands』の路線を更に進化させたような、よりフォーキーで、よりアメリカーナ的なサウンドを多く含むアルバムになっていて、彼らの魅力が多面的に楽しめるアルバム。もちろん「Time Escaping」や「Little Things」のような、彼らのインディー・ロックなスタイルがこれまで通り聴ける曲もあるが、今回の第65回グラミー賞の最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス部門にノミネートされてる「Certainty」や「Sparrow」なんてほとんどザ・バンド的だし、フィドルやマウスハープをフィーチャーしたレトロなフォーク曲「Spud Infinity」や軽快なアコギワークが楽しい「Simulation Swarm」は正にトラディショナル・フォークの世界。でもそうした楽曲をビッグ・シーフのサウンドにしているのはやはりエイドリアンの独得なボーカル・スタイルであり、それがこのバンドの大きな魅力だと思う。何と知らない間に今年来日してたらしく、ライブを見逃したのが残念だけど、来年のフジロックとかに来ないかなあ。
11.Being Funny In A Foreign Language - The 1975 (Dirty Hit)
The 1975を知ったのは彼らのセカンド『I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It』が英米で1位になった2016年。シンセポップ的アプローチのオルタナ・ロックという、アプローチ的には特にユニークでも新鮮でも何でもないけど、彼らの書く楽曲メロディやアレンジのポップ・センスが気に入ってその年の自分の年間アルバムランキングでも20位に入れていた。ただこのアルバムからその後の作品について、ロッキング・オン誌が年間アルバム・ランキングの上位に入れていることを知って、最近のロッキング・オン誌の音楽に対する評価ポジションに大いに疑問を持っている自分にとってネガティブな感じを受けてしまってその後の作品はちゃんと聴いてなかったことを白状しなくてはいけない。2020年の前作『Notes On A Conditional Form』に至ってはメディアの評価もいまいちだったこともそれに拍車をかけていた面もあった。
しかし2019年そして今年とコロナ禍の元でも通常開催されたサマソニに2回に亘って来日した彼らのライブが、自分の洋楽友人達の間でかなり評判が良かったこともあって「うむ、そろそろ再評価が必要かも」と思っていたタイミングでリリースされたのがこのアルバム。そして聴いて見ると、彼らのシンセポップ・スタイルのポップ・センスは健在だけでなく「Part Of The Band」「Oh Caroline」「I'm In Love With You」「All I Need To Hear」とか、更にそのポップ・センスに磨きがかかったような楽曲も満載で「おお、これなかなかいいじゃないの!」と単純に楽しめるアルバムだったのだ。やっぱり5作連続UKアルバムチャートナンバーワンは伊達ではないということなのだな。もうロッキング・オンがどうしたとかいらんことに拘らずに素直にいい作品は評価しなくちゃいかんな、と思った次第。彼らは来年4月来日が決まっているのでそのライブも行ってみようと思ってます。
ということで残すところはあと10枚。さてどのような10枚がランキングされてるでしょうか。何とか大晦日までには完結できそうです。