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今週の全米アルバムチャート事情 #141- 2022/7/23付
今週は今シーズン最後のゴルフメジャー大会の全英オープンの開催や、MLBの前半戦が終わり、ホームラン・ダービーやオールスターゲームが大いに盛り上がり(祝大谷選手オールスター初安打!)一つの区切りとなりました。しかし一方コロナ感染者数は再度増加の勢いの中、我が家でも家族に陽性者が出てしまい、今週は自宅待機状況で完全リモートで仕事してます。皆さんも是非ご注意下さい。来週後半スタートのフジロックまでには隔離状況が終わる予定ですので、来週は頑張ってフジロック参戦したいと思ってます。
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さて今週の全米アルバムチャート、7月23日付のBillboard 200、今週はさすがに10万ポイントを切ってくると思われたバッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』が、何と105,000ポイント(うち実売1,000枚弱)と徳俵で持ちこたえて何とか10万ポイントをキープ。1位を争うかと思われたキッド・カディなんてトップ10に影も形もなく、今週も予想通りバッド・バニーが通算5週目の1位を決めました。
ドレイクの『Views』(2016)以来のデビューから10週連続の10万ポイントだとか、去年のモーガン・ウォレンの『Dangerous: The Double Album』以来のデビューから10週間、1位か2位を維持だとか、そういうチャート記録の他は、やっぱりそろそろ書くネタがなくなって来たので、今週も「今週のバッド・バニーの一曲」をお届けしましょう。今日の一曲は、アルバムリリースの週に初登場でHot 100の6位を決めた「Después de la Playa」(ビーチの後で)。こちらは先週の「Tití Me Preguntó」みたいなレガトン・チューンではなく、単純にラテン・パーティーチューン、といった賑やかなアップテンポに乗ってひたすらバッド・バニーがビーチでビール飲んで酔っ払って好き放題とか、ビーチの後はベッドで濡れるぜ、と女の子とキメる話を歌う、というまあこちらも軽いことこの上なしの曲(笑)。
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今週はトップ10内初登場は2枚。2位に飛び込んで来たのは、今回が初のトップ10となる、メリーランド州コロンビア出身のR&Bシンガー、ブレント・ファイヤズのセカンド・アルバム『Wasteland』(88,000ポイント、うち実売6,000枚)。2017年のラッパー、ゴールドリンクのシングル「Crew」(最高位45位)にフィーチャーされて、その年のグラミーで最優秀ラップ/歌唱コラボレーション部門にノミネートされたのがシーンで名前が知られるきっかけでしたが、その後しばらくしてタイラー・ザ・クリエイターとのコラボで「Gravity」(2021年71位)や「Sweet / I Thought You Wanted To Dance」(同60位)といった楽曲や、ドレイクとネプチューンズをフィーチャーした「Wasting Time」(同49位)などをパラパラとHot 100に送り込んで来た、ちょっとディアンジェロあたりを彷彿させる、しなやかさがいい感じのR&Bシンガーです。
今回のアルバムには上記の「Gravity」と「Wasting Time」が収録されている他、アリシア・キーズとの「Ghetto Gatsby」や、タランティーノの映画が好きでよく観るという彼らしい「Jackie Brown」などの楽曲に、この間のケンドリック・ラマーのアルバムを思わせるスキットを交えて彼独得の世界観を作り上げてます。なかなか今後が期待できる、そんな感じを持たせるアーティストですね。
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そして続いて3位に登場は、また来たかKポップ!というわけで先週トップ10入りを予想していたKポップの老舗、SMエンターテインメント所属の4人組ガールグループ、エスパの2枚目のEP『Girls: The 2nd Mini Album』(56,000ポイント、うち実売53,000枚)。デビューEP『Savage』が昨年20位に入ってチャートデビューを果たしてたので、最近のKポップ勢の勢いからいってトップ10はあるな、と思ってたんですが何と3位とは。4月のコーチェラにも出演してたしねえ。
サウンド的には後期のデスチャをもう少しハードにした感じの、硬派なR&Bとロックのミクスチャーな曲もあれば、先日コーチェラで披露された新曲「Life’s Too Short」のようにポップな曲もこなせる達者なガールグループといったイメージで、こういったあたりもティーンエイジャーの女の子とかに受けてるのかな、と思ったりします。Kポップの常として、12種類の異なるCDパッケージでファンの購入意欲をそそるマーケティングで、まんまと今週のアルバム・セールス・チャートの1位を獲得してます。
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ということで今週は上位に初登場が固まってチャートインしたトップ10、一方圏外11位から100位には今週3枚のアルバムが初登場してます。その中で一番人気、もう少しでトップ10入りだったのは、14位に飛び込んで来たナイジェリア出身、ロンドンベースで活動するR&Bシンガー、バーナ・ボーイ(本名:ダミニ・エブノルワ・オグール)の6作目『Love, Damini』。今週のUKアルバムチャートでは見事初登場2位、英米で過去最高の成績を達成してます。2019年の4作目『African Giant』が英米で初チャートイン(UK 16位、US 104位)、ブラック・ミュージック対象のBETアウォーズでは最優秀インターナショナル・アクト賞を受賞してブレイク。前作『Twice As Tall』(2020年UK 11位、US 54位)はグラミー賞の最優秀グローバル・ミュージック・アルバムを受賞してシーンの評価を積み上げ今回のヒットに至ったという流れです。
自分はどうしたわけか彼をラッパーだとばかり思ってて、これまでのアルバムはあまり聴いてなかったんですが、今回聴いてみてなかなか気に入ってます。ナイジェリアということでアフロビートがベースに流れるR&B曲が多いんですが、どっちかというとアフロという言葉で連想されるポリリズミックなビートではなく、むしろジャマイカのダンスホール・レゲエのビートに近い感じで、かといってワールドワールドしてなくって適度にポップやヒップホップの香りもするという、いいとこ取り満載のサウンドなんですよねー。
個人的にはオープニングの「Glory」に一発でやられました。何とあのポール・サイモンのアフロビートを採り入れた名盤『Graceland』(1986)に全面的にフィーチャーされて有名になったレディスミス・ブラック・マンバゾのコーラスで始まり、そこからいきなりスイート・ソウルの名曲、エンチャントメントの「Gloria」の一節をサンプルしてバーナ・ボーイのサウンドが炸裂するというソウル好き親父殺しなナンバーなんですな(笑)。他にもダンスホール・ビートつながりか、ラテンのJバルヴィンをフィーチャーした「Rollercoaster」や、カリードとの「Wild Dreams」、エド・シーランとの「For My Hand」などなど豪華なゲスト陣との楽曲も楽しい内容。ちょっとしばらくハマリそうです。
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そして先週1位を争うんでは、なーんてアホな予想をしてしまった、キッド・カディのベスト盤『The Boy Who Flew To The Moon, Vol. 1』は何と83位初登場という寂しい結果でした。昨年に出た7枚目のアルバム『Man On The Moon III: The Chosen』は初登場2位、それまでのアルバムやコラボ作品は9作品中7作品がBB200のトップ5というキッド・カディだけに、そのベスト盤もトップ5も堅いし、ひょっとすると1位か?と思ったんですが、読みが甘かったようです(涙)。
よく考えてみると、元々ストリーミング比率が圧倒的に高いヒップホップ系で、地人気高いアーティストなんで、今回みたいな過去作からの楽曲コンピなんて、大抵のファンはもう既に音源持ってるし、オリジナル・アルバム聴くわなあ。「このアルバムが新しいファンに取って最高のキッド・カディへの入り口になるように」なんて本人言ってるけど、ちょっと消費行動見誤ってるのかもしれないね。
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100位までの今週最後の初登場アルバムは、何と何と懐かしいというかまだやってたんか、という感じの11年ぶりの新作を発表したジャーニー15作目のアルバム『Freedom』が88位に初登場してます。ジャーニーと言えば1996年の10作目『Trial By Fire』を最後に脱退したスティーヴ・ペリーの代わりにスティーヴ・オーゲリがアルバム2枚でボーカルを務めた後、例の驚異のハイトーンボーカルのフィリピン人ボーカリスト、アーネル・ピネダをボーカルに迎えた13作目『Revelation』(2008)で復活したような気でいたんですが、それから今回の『Freedom』まで、アルバム3枚しか出してなかったんですね。
更に今回のアルバムではドラムスとプロデュース担当に何とあのナラダ・マイケル・ウォルデン、そしてデビュー以来のメンバーだったロス・ヴァロリーがクビになってベースで参加してるのが、何と『アメリカン・アイドル』の審査員で最近は有名なランディ・ジャクソンだというではないですか。これって殆どフュージョン・バンドになりそうなメンツなんですが、よく考えるとジャーニーって、デビュー2作はグレッグ・ローリーを中心にしたフュージョン・ロック・バンドだったんですよね。そういう意味ではスタートに戻ったって感じなのかな、と思って聴いてみるとこれがまあ見事に80年代から一切進化していない感じの(笑)アリーナ・ロック炸裂のアルバムなんですわ。おまけにこのアルバムリリース前にナラダもランディも脱退しちゃっていうし(爆)結局今やニール・ショーンとジョナサン・ケインの手慰みバンドになっちゃってる感じですねえ。それでもこうやってちゃんとチャートインするあたり、ファンは未だに多いんでしょうね。このコロナ時代に昔を懐かしむような「The Way We Used To Be 」のPVなんかは見ててニヤリって感じですが。
ということで今週の初登場は以上5枚。ここでいつものように今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (1) (10) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <105,000 pt/1,000-枚>
*2 (-) (1) Wasteland - Brent Faiyaz <88,000 pt/6,000枚>
*3 (-) (1) Girls: The 2nd Mini Album - Aespa <56,000 pt/53,000枚>
4 (2) (8) Harry’s House ▲ - Harry Styles <53,000 pt/11,432枚*>
5 (4) (79) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <49,000 pt/1,062枚*>
6 (3) (4) Honestly, Nevermind - Drake <42,000 pt/376枚*>
7 (7) (11) I Never Liked You ● - Future <37,000 pt/128枚*>
8 (6) (18) 7220 ● - Lil Durk <35,000 pt/74枚*>
9 (9) (74) The Highlights - The Weeknd <35,000 pt/1,850枚*>
10 (8) (3) Breezy - Chris Brown <33,000 pt/1,170枚*>
ということで今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後はいつもの来週の1位予想に行きましょう。来週のチャート対象期間は7/15-21ですが、ニューリリースで目を引くのは、BTSのj-ホープのソロアルバム、そして今「About Damn Time」大ヒット中のリゾのセカンド。この2枚は10万ポイント超えてくると思うので、いよいよバッド・バニーの天下も今週で終わりか。それ以外にトップ10に入って来そうなのはビーバドゥービーのセカンドと、懐かしやニーヨの久々の新作あたりでしょうか。ではまた来週。