今週の全米アルバムチャート事情 #136- 2022/6/18付
連敗は止めたというものの、やはりさあ連勝!という感じでないエンジェルス。トラウトが上り調子なのはいい知らせだけど、とうとう2位からも転落、何とか5割復帰をまずは目指して大谷他エンジェルズの面々には頑張って欲しいもの。一方我らがメッツは相変わらず素晴らしい快進撃。シャーザーとデグローム抜きでこれだから、彼らが帰ってくる7月が楽しみでしょうがないですわ。
さて今週の全米アルバムチャート、6月18日付のBillboard 200の1位、先週の予想ではもう圧倒的にポスト・マローンの新譜が1位でしょう!なーんて言ってたんですが、その後先週の後半くらいから「どうもポスティの新譜、初週のポイントが伸びないらしい」という情報があって、ちょっと様子が違うぞ、と思ってました。で、蓋を開けると案の定ポスティは12万ポイントという、前回の『Hollywood’s Bleeding』の初週489,000ポイントが一気に4分の1になるというある意味「えー?そんなに落ちるの?」という感じで、その合間を縫って今週1位になったのは、5/21付チャートで1位初登場、その後3週連続ポイントをあまり落とさず2位に粘ってた、バッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』でした(137,000ポイント、うち実売1,000枚)。
バッド・バニーのこのアルバム、初週の274,000ポイントから2週目には182,000ポイントと34%大幅ダウンしたものの、その後は週を追う毎に15%減、8%減と減り幅を減らしながら、2位安定のクルーズコントロール状態だったところ、今週は3.2%減とほとんどポイントを減らさず、期待されていたポスティのポイント不振もあって今週まんまと返り咲きの1位を果たしたというわけ。相変わらずポイントの99%はストリーミング(今週はオンディマンドストリーミング1.9億回相当を記録)と、ラテン系のリスナーの音楽消費行動はやはりストリーミング中心、ということになると今後も大きく減らすことはしばらくなさそうですし、8月から年内いっぱいは全米21カ所、ラテンアメリカ22カ所を回る「World’s Hottest Tour」で北南米大陸をかけめぐるので当面ここから大きくポイントを減らすことはなさそう。このパターンは、昨年の1月23日初登場1位以来今週に至るまで1年以上ポイントが4万ポイントを下回ることがなく、トップ10を外したのは今年1月1日付の1週のみという、あのモーガン・ウォレンの『Dangerous: The Double Album』のチャートアクションを辿る感じがあります。そしてこのアルバム、来年のグラミー賞でもラテン部門のみならず、ポップ部門等でもノミネートされる可能性もあり。バッド・バニー、一気に大物に化けた感ありです。
さて一方1位を期待されながら121,000ポイント(うち実売21,000枚)という、先週だったら3位止まりだった大きく予想を下回るポイント数で2位初登場に終わったポスティの『Twelve Carat Toothache』。UKではハリー・スタイルズと何と今頃再上昇中のエド・シーラン『=』に次ぐ3位初登場と、期待が集まっていたはずの今回の新作の不振ぶりはどうも全米だけではなさそうです。確かに前作の『Hollywood’s Bleeding』は先行シングル4枚が全てHot 100トップ3で、うちスウェイ・リーとの「Sunflower」と「Circles」は全米ナンバーワンと、リリース時は絶頂だったのに対し、今回の先行シングル、ザ・ウィークンドとの「One Right Now」が6位、ロディ・リッチとの「Cooped Up」は12位と、かなりスケールダウンしているのも今回の作品の不発感を煽ってますね。
全体通して既に何度か聴いてますが、前回大きく「ポップなトラップ路線」から「トラップの要素のあるメインストリーム・ボップ路線」に舵を切った方向性はそのままに、前作との作品クオリティの差はそんなに大きくは感じない、そこそこそつなく作られた作品だと思うのですが、時の勢いというか流れというのはやはり大きいのか、あるいはこの2年間のコロナ禍が影響したのか。今回も前回同様、ヒップホップ勢(ロディ・リッチ、ドジャ・キャット、ガンナ)やR&Bのザ・ウィークンドらに加えて何とインディ・フォーク系のフリート・フォクシーズとコラボした「Love/Hate Letter To Alcohol」(これが今週Hot 100の70位に初登場して、フリート・フォクシーズ初のHot 100ヒットになってますw)や、今売れに売れてるキッド・ラロイをフィーチャーした「Wasting Angels」など、ゲスト陣も豪華なのですが、それが1位につながらなかったということで、ポスティ陣営のショックは結構大きいものと思われます。しかも今回は集計期間中にデラックスバージョンもドロップしてるだけに。
今週のトップ10内初登場はもう1枚、そしてまたまたKポップ勢の登場で、13人組のボーイズ・バンド、SEVENTEENの4枚目のフルアルバム『SEVENTEEN 4th Album: Face The Sun』が44,000ポイント(うち実売42,000枚で今週アルバムセールス1位)の7位初登場。彼らは昨年EP2枚『Your Choice: 8th Mini Album』(15位)と『SEVENTEEN 9th Mini Album: Attacca』(13位)がトップ20にチャートインしてましたが、トップ10入りは今回が初。前回までのEP2枚はそれぞれ初週売上で2万枚超でいずれもアルバムセールスチャート1位でしtが、今回はその倍の4万枚。Kポップ勢のここ最近の勢いを踏まえても、またKポップおなじみの複数バージョンCD攻撃があったとはいえ、この勢いは刮目すべきところでしょう。
セルフ・プロデュースを信条とする彼らが展開するのは今回も時にヒップホップの味付けが香る、基本エレクトロ系のサウンドを中心にした今どきのメインストリーム・ポップ全開のサウンド。現在世界で大ヒット中のハリー・スタイルズなんか同様、今のメインストリームの一番おいしいところを取ってるだけに、この快進撃はしばらく続くんでしょうなあ。折しもBTSが活動中断を発表して、本国では所属事務所ハイブ(旧ビッグヒット・エンターテインメント)の株価が25%暴落するなんてことも起きてるようですが、Kポップ全体の勢いはまだまだ続きそうです。
ということで今週のトップ10の初登場は以上。今週の11位以下100位までの圏外に目を転じると、今週の初登場はわずかに1枚。ここのところ4週続けて圏外の初登場が2枚以下という状況が続いてますが、これって全体的に新譜のパワーが落ちてるってことでしょうかね。ちょっと気になります。そしてその唯一の初登場が、22位に入ってきた、何とプリンス&ザ・レヴォリューションのライブ盤『Prince And The Revolution: Live』。え?何で今頃プリンス&ザ・レヴォリューションのライブが?と?マークがいっぱい飛んでいるあなた、そうですよねー。実はこれ、1985年にVHSビデオでリリースされ、当時ビルボード誌のミュージック・ビデオ・セールス・チャートで9週間1位を記録した、彼らのNY州シラキューズでの1985年3月のライブを収めたライブ・ビデオの音源が初めてフィジカル音源(CDとヴァイナル)でリリースされたという、ファンの間では有名な音源の初オーディオメディア化リイシュー盤だったんですね。
当時前年にリリースされた『Purple Rain』の映画とサントラの大ヒットで彼らは全米でのパープル・レイン・ツアーを行っていた最中。いわばバンドのテンションが最高の時期のライブだけに、プリンスの遺作を管理しているNPGレーベルの監修によるこの音源化は広くファンに歓迎されたのは間違いないところ。来週実施の2022年2回目のレコード・ストア・デイに合わせてリリースされそうな類の音源ですが、あえて独立リリースに踏み切ったあたりに、プリンスの重要音源のリリースについてのプリンスの遺族とNPGの矜持が伺えますね。それに応えて、今週のこのアルバムは17,000枚を売り上げてます。
ということで今週の初登場は以上。いつものように今週のトップ10のおさらい行きましょう。今週先週の1位から3位に落ちてるハリー・スタイルズですが、相変わらず33,000枚という力強いセールスを維持していて、アルバム・セールス・チャートでは2位(1位はSEVENTEEN)をキープ、すでに44万枚を売り上げてますので、今月中にはゴールド・ディスク・マーク(50万枚売上)が付きそうですね(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (2) (5) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <137,000 pt/1,000枚>
*2 (-) (1) Twelve Carat Toothache - Post Malone <121,000 pt/21,000枚>
3 (1) (3) Harry’s House - Harry Styles <113,500 pt/33,000枚>
4 (4) (6) I Never Liked You - Future <61,000 pt/281枚*>
5 (3) (4) Mr. Morale & The Big Steppers - Kendrick Lamar <54,000 pt/7,000枚>
6 (5) (74) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <52,000 pt/1,406枚*>
*7 (-) (1) SEVENTEEN 4th Album: Face The Sun - SEVENTEEN <44,000 pt/42,000枚>
8 (8) (55) Sour ▲3 - Olivia Rodrigo <37,000 pt/14,000枚>
9 (7) (3) American Heartbreak - Zach Bryan <34,000 pt/928枚*>
10 (9) (5) Come Home The Kids Miss You - Jack Harlow <31,500 pt/506枚*>
ということで今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。最後は高齢の来週の1位予想、対象機関は6/10-16ですが、やー何といってもBTSの活動中断ニュースの反響も含めて、彼らのベスト盤のリリースが強力に1位取りそうな気がしますねえ。シングルの方も同日リリースということでこちらもBTS通算6曲目の初登場1位になりそうな気がします。来週はBTS祭りになりそうですね。それ以外にトップ10に入って来そうなのはキャリー・アンダーウッドの新譜、そして故XXXテンタシオンのコンピアルバムくらいでしょうか。ではまた来週。
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