今週の全米アルバムチャート事情 #135- 2022/6/11付
今週から関東もいよいよ梅雨入り。そしてエンジェルスは泥沼の12連敗ということでなかなかMLB観戦のモティベーションが沸かない今日この頃。大谷翔平選手にはぜひとも日本の梅雨を吹き飛ばすようなホームランを量産してもらいたいものですが(と言ってたらトラウトが5/28以来、9試合ぶりのホームランを打ったというニュースが。大谷も続け!)。
さて今週の全米アルバムチャート、6月11日付のBillboard 200の1位、先週の予想では2週目で大きくポイントを減らすハリー・スタイルズと、CDリリースで売上ポイントを上積みしてくるであろうケンドリック・ラマーの一騎打ち、と予想してましたが、蓋を開けたらハリーのポイントは確かに69%減と大きく下げたのですが、ケンドリック・ラマーのポイントは実売ポイントは大きくアップしたものの、ストリーミングが伸びず、むしろトータルでは7%減らすという事態で、他に大きなニューリリースもない中、ハリーの『Harry’s House』が無事に2週目の1位をマークする、という結果になりました(160,500ポイント、うち実売56,500枚)。先週アルバム収録曲13曲すべてがHot 100のトップ40内(もとい、トップ30内)にランクインするという、昨年の9月18日付チャートで、ドレイクの『Certified Lover Boy』が収録曲21曲で達成した記録に次ぐ記録達成したこのアルバム、2位のバッド・バニーが意外とポイントを減らさず頑張っているのでちょっと危なかったのですが、先週の勢いの余韻で2週目の1位を確保した感じです。でも来週はまたまた話題のあの人の新譜がチャート対象ですから、来週には多分首位陥落でしょう。ちなみに全英では今週リアム・ギャラガーのアルバムがハリーを蹴落として1位になってますね。
とは言え、今年上半期リリースのアルバムの中ではメディアの評価もそしてリスナーの人気も高いこのアルバム、間違いなく今年を代表するポップ・アルバムであることは間違いないですし、先週以来何度か聴き込むごとによく出来たアルバムだなあ、と感心しながら聴いてるところです。多分ここからはそんなにポイント減らさず、当分の間トップ10の上の方でゆらゆらチャートインし続けるロングセラー・アルバムになるでしょうね。個人的には先週挙げた「Daydreaming」の他、トップ10ヒットの「Late Night Talking」や「Cinema」とかが気に入ってますわ。そしてこの夏はハリーもツアー全開のようで、8月末から9月末までの間にNYはマジソン・スクエア・ガーデンで10公演、その他秋にかけてLAやシカゴ、テキサス州オースティンでもやるらしい。来日しないかなあ。
1位はハリーがキープしましたが、今週のトップ10初登場は1枚のみ、10位に初登場してきたのは何とデフ・レパード、12作目にして7年ぶりの新作アルバム『Diamond Star Halos』(34,000ポイント、うち実売32,000枚)。2019年晴れてロックの殿堂入りを果たしたデフ・レパード、この殿堂入りが新作作りの大きなモティベーションになったんでしょう、今回リリースされたこのアルバム、何の外連味もなく、ひたすらキャッチーで、ドラマティックで、ぶ厚いコーラスと、ヴィヴィアン・キャンベルとフィル・コレンの気持ちいいツインギターがファンにはたまらない、あの90年代の絶頂期のサウンドそのままの作品になってますね。
アルバム・タイトルは、あのTレックスのヒット曲「Bang A Gong (Get It On)」の歌詞の一節から取られてるということもあって、ちょっとグラム・ロックっぽいシングルの「Kick」をはじめ、ギターやメロディがちょっとインド風でクーラ・シェイカーか!wという感じの「Liquid Dust」、そしてピアノが大活躍する、メンバー曰く「エルトン・ジョンっぽくやりたかった」と言う「Goodbye For Good This Time」や「Angels」なんて曲があったり、いい意味でワンパターンな中にもバラエティに富んだ仕掛けがあるのも楽しいところ。そしてちょっと驚いたのは、何とあの「ブルーグラスの女神」アリソン・クラウスが「This Guitar」と「Lifeless」の2曲でボーカルのジョー・エリオットとデュエットしてるんですわ!これがまた見事にハマってまして。いずれにしてもデフレパファンだけでなく、往年の彼らのサウンドが嫌いでない方には充分お勧めできる内容ですね。
さてトップ10同様、圏外11位から100位までの初登場も今週も少なめで2枚。ただ1枚再登場でちょっと話題のアルバムもありますので、これは後ほど触れます。まずはトップ10に惜しくも届かなかった13位初登場、カナダはカルガリー出身の若干18歳の女性シンガーソングライター、テイト・マックレーのデビュー・アルバム『I Used To Think I Could Fly』。
2枚目のEP『Too Young To Be Sad』からのシングル「You Broke Me First」(2020)がいきなりブレイクしてUKでは3位、Hot 100でも17位に登る大ヒットになって、当時17歳だったこともあって「カナダのビリー・アイリッシュ」的な感じでかなりここ数年バズ対象になってるシンガーです。
今回のデビュー・アルバムは先行シングルの「She’s All I Wanna Be」(最高位44位上昇中)もヒット中、UKでも初登場7位で相変わらず人気で、プロデューサー陣もヒップホップR&B系の売れっ子、チャーリー・ハンサムから他ならぬビリーの兄ちゃんのフィニアス、ヒット請負人のグレッグ・カースティン(「She’s All I Wanna Be」共作)、そしてあのチャーリー・プースにあら懐かしやアメアドOBのデヴィッド・クックなど、もうヒット仕掛け人総動員でガッチリ固めてる感じ。でもアルバム全体聴いてると、何かビリーのあの別世界の感じというよりは、2000年代のアヴリル、2010年代のマイリーあたりに通じる、時代コンシャスなポップ・クイーンな感じがするんですよね。天才ではないけど巧みなポップメイカーって感じの。そしてこれは褒め言葉です。なかなかいい感じの作品ですよ。特に2000年代以降のテンション高めの女性シンガーソングライターのお好きな向きにはおすすめですね。
そして先週の予想でトップ10来るか?って言ってた映画『Top Gun: Maverick』のサントラは、レディ・ガガの新曲という強力な実弾があったんですが、残念ながら初登場17位でした。いやこれでも最近サントラ盤がなかなかアルバムチャート上位に入ってこなくなった状況から言えば大健闘ではあるんですが。
既に日本でも先週から封切りで映画館に観に行かれて大変盛り上がってる方も多いみたいで、やっぱ自分も観にいくのかなあ、と思いながら何せオリジナル観てないんで感情移入できないんじゃないかなあ、と思ってます。だいたいあの映画で使われたケニー・ロギンズの曲、ケニー・ロギンズ・ファンとしてはサイテーに大っ嫌いな曲だったしな。でもこの間ジェイムス・コーデンのレイト・ナイト・ショーにトム・クルーズが出演して、トムが無理やりジェームスを飛行機に載せてギャー!っていうのをやってたのは傑作でしたけどw
あと今週は話題のアルバムをもう一つ。初登場ではないですが、今週28位にケイト・ブッシュの1985年のアルバム『Hounds Of Love』が再登場してます。これは既にご存知の方も多いと思いますけど、今年でシーズン4になるネットフリックス配給のSFホラードラマ『Stranger Things』のエピソードで、このアルバム収録の「Running Up That Hill(神秘の丘)」(1985年当時Hot 100最高位30位)が使われたのがきっかけで、これが一気にストリーミングを集めたことによる再登場になったというわけ。ではそのシーンをどうぞ。
その「Running Up That Hill」もHot 100で今週8位に再登場、何とケイト・ブッシュにとっての最大ヒットになってます(UKでも今週8位再登場)。突然蒸発してしまった少年や、サイコキネティック能力を持つ少女、そして現実とパラレルな別世界の存在などを扱って既に数々のTV関係の賞も受賞しているこのシリーズ、いかにもケイト・ブッシュの世界と親和性が高そうなので、一度観てみたいな、と思ってます。そしてこういう形で今のティーン達の間にケイト・ブッシュの世界が紹介されるというのもいいなあ。
ということで今週の初登場はトップ10で1枚、圏外100位までで2枚でした。ここでいつものようにトップ10のおさらいです。今週ドジャ・キャットの『Planet Her』が久々にトップ10に復帰してますが、これはヴァイナル・リリースによるものです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (1) (2) Harry’s House - Harry Styles <160,500 pt/56,500枚>
2 (2) (4) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <141,500 pt/977枚*>
3 (3) (3) Mr. Morale & The Big Steppers - Kendrick Lamar <89,500 pt/27,500枚>
4 (4) (5) I Never Liked You - Future <68,000 pt/336枚*>
*5 (6) (73) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <53,500 pt/1,378枚*>
*6 (12) (49) Planet Her - Doja Cat <41,500 pt/17,000枚>
7 (5) (2) American Heartbreak - Zach Bryan <40,500 pt/1,359枚*>
*8 (8) (54) Sour ▲3 - Olivia Rodrigo <39,000 pt/16,000枚>
9 (7) (4) Come Home The Kids Miss You - Jack Harlow <34,500 pt/709枚*>
*10 (-) (1) Diamond Star Halos - Def Leppard <34,000 pt/32,000枚>
ということで今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。最後に恒例の来週チャートの1位予想。来週チャートの対象期間は6/3-9ですが、この期間のリリースでまあ、まず圧倒的なのはポスティことポスト・マローンの新譜。これはかなりのポイント積み上げで1位くるでしょう。ことによると先週のハリーの今年最高ポイントを更新するかも。ここのところ先月から続いている強力話題盤のリリース、来週も続きそうです。ではまた来週。