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今週の全米アルバムチャート事情 #264- 2024/11/30付
あっという間に秋が通り過ぎてしまって既に冬の冷え込みですが、いよいよサンクスギヴィングの週末を目前にアメリカはすっかりホリデーモード。大谷翔平選手も無事NLMVPを満場一致で受賞し、今頃は家族水入らずでアメリカのサンクスギヴィングを楽しんでいることでしょう。さて今週で2024年のチャートイヤーも終わり。週末までには今年の年間チャートの発表もあるでしょうからそちらの予想もしなくては。まあ今年の年間1位はもうあの曲しかないわけですが。
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さて今週の全米アルバムチャート11月30日付のBillboard 200の首位は、てっきりリンキン・パーク7年ぶり、新ボーカリストのエミリー・アームストロングを擁した新作『From Zero』の英米同時1位!と思ってたら、何と何と、蓋を開けてみると先週Geniusのリリーススケジュールをチェックした時は影も形もなかったKポップ8人組ボーイズ・バンド、ATEEZ(エイティーズ)の11枚目のEP(6曲入)『Golden Hour: Part. 2』が184,000ポイント(うち実売179,000枚)という往年のBTS級の出力でぶっちぎりの首位をさらっていってしまったんです(彼ら自身過去最高出力です)!おーい、何て空気読まねえ連中なんだコイツらは?そもそもリリーススケジュールに予定を乗せないってどういうことなんだか意味不明、この連中前回もそうだったし。これだとKポップは別に全てのアーティストのリリーススケジュールをチェックしないといけないってこと?勘弁して欲しいなあ。プンプン。
彼らの全米ナンバーワンは、2023年のセカンド・アルバム『The World EP.Fin: Will』に続く2枚目とたいそうな人気なのですが、前回のアルバム同様、エレクトロ系のちょっとエッジの立った「Ice On My Teeth」とか、明らかにテーム・インパラあたりを意識したと思われるエレクトロ・ビート・ダンス・トラック「Selfish Waltz」などまあキャッチーな楽曲もしっかり押さえてるあたりソツはないところ。でもリンキンの英米同時1位を阻止するだけの価値のある作品?うーんあんまりそうは思えないですね。
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そしてその肝心のリンキン・パーク『From Zero』は97,000ポイント(うち実売72,000枚)という微妙に弱めの出力で初登場2位。エミリーの新ボーカリストとしての加入は当初色々物議も醸しましたが、9月にリリースされた先行シングル「The Emptiness Machine」とそのPVでの圧倒的なパフォーマンスですっかりファンの間でも認められた感がありますね。その「The Emptiness Machine」がロック&オルタナティブ・エアプレイチャート11週連続首位(継続中)、メインストリーム・ロック・トラック・チャートおよびオルタナティブ・エアプレイチャート5週首位と主要なロック系チャートの首位をしっかり確保しているのがその証左と言えるでしょう。
迫りくるようなテンションで聴かせる「Cut The Bridge」やスケールの大きいセカンドシングルの「Heavy Is The Crown」など、楽曲の粒ぞろいもしっかりしていて、マイク・シノダとエミリーのツイン・ボーカルもしっかりと機能してますね。音楽メディアの評価も概ね好意的で(メタクリティック73点)、新生リンキン・パークの門出を飾るアルバムとしてはまずまずの発進状況でしょう。既に9月からこのアルバムのプロモーションのツアーに出ているリンキン、今年は12/12にサウジアラビアのリヤド(!)でツアーの前半を終了、年明けには2月に待望の来日も予定されてるので、これは観に行きたいですなあ(さいたまスーパーアリーナなんで行けるかなあ)。その後も来年いっぱいワールド・ツアーが予定されているリンキン、ますます頑張って欲しいもんです。
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さて今週はどういうわけかKポップ勢が炸裂するトップ10になっていて、ちょっと唖然としてます。しかも首位のATEEZを筆頭にどいつもこいつもGeniusのリリース・スケジュールには影も形もないものばかり。いったいどーなっとるんじゃい!と言いたくなりますが、4位に77,000ポイント(うち実売66,000枚)で初登場してきたのはBTSのジンのソロ・デビューEP(6曲入)『Happy』。BTSのメンバーでは一番先に2022年から兵役に従事していた関係もあって他のメンバーに先にソロデビューされてましたが、今年6月に無事除隊、今回ソロデビューを果たしたわけです。
兵役に行く直前にコールドプレイと共作したシングル「The Astronaut」(2022年51位)を出していたジンですが、今回のEPも同様のメインストリーム・ポップ路線のキャッチーな楽曲で固めてます。何か青春ハツラツ、って感じの曲が並んでて、ジュングクやVのR&B路線、RMやJ-ホープのヒップホップ路線と見事に一線を画してるあたりが潔いと言えば潔いですな。
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いやそれにしても今週はトップ10が賑やかやな。67,000ポイント(うち実売1,000枚)で6位に初登場してきているのは、プエルトリコのレゲトン・シンガー、ラウ・アレハンドロの5作目のアルバムにして彼にとって初のトップ10アルバムとなった『Cosa Nuestra』。前作の『Playa Saturno』(2023年29位)のあとしばらく音楽活動を休む、なんて言ってたんですが、今回単にレゲトン・シンガーに拘らないいろんなスタイルの楽曲の作品で大きく飛躍することになりました。
今回はゲスト陣も豪華で、バッド・バニーとのレゲトン全開の「Qué Pasaría….」、ファレルとのラテンR&B「Committed」、ラテンの歌姫ローラ・パウジーニとの「Se Fue」など話題曲も満載。NYのプエルトリコ移民、その名もラウル・アレハンドロを主人公にしたというコンセプトのこのアルバム、有名なサルサ曲のカバー「Tú Con Él」なんか聴いてると何か楽しくて、単純に楽しめるあたりが今回のヒットにつながったんでしょう。全米のラテン系コミュニティでのサンクスギヴィング・パーティでは大いにこのアルバムが聴かれてるんでしょうね。
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そして初登場ではないものの、54,000ポイント(うち実売51,000枚)で7位に再登場してきてるのがまたまた炸裂してますKポップ、7人組ボーイズグループ、エンハイプンの『Romance: Untold』。今年7月にエミネムの後塵を拝しながら2位に初登場してたアルバムですが、今回『ROMANCE: UNTOLD -daydream-』というタイトルにリパッケージされて2曲ボートラ追加で再発されてここに入ってきたというわけ。
ということで今週のトップ10は2枚のKポップを含む4枚の初登場とKポップの再登場1枚で半分が入れ替わるという週でした。さてここでお詫びです。この後、普通であれば11から100位までの初登場アルバムについても同様に解説するんですが(ちなみに今週は4枚初登場してます)、先週後半プライベートでカミさんと鹿児島旅行だったのと、金曜日帰ってきたら急な仕事が舞い込んで来て今日日曜日納期を命ぜられてしまった関係で、このブログ始まって以来の時間切れになってしまいました(何とか仕事の方は先程必死に仕上げて納品しましたが)。従って11位以下圏外は今週はリストでの紹介のみにさせて下さい。是非それぞれ(特にジョン・バティーストのベートーベン・オマージュアルバムは興味がそそられますが)ストリーミング等で聴いて見て下さい。すみませんがご理解頂き、よろしくご容赦お願いします。
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25 Reboot II - Brooks & Dunn
26 Shawn - Shawn Mendes
64 Beethoven Blues, Batiste Piano Series, Vol. 1 - Jon Batiste
95 Bouquet - Gwen Stefani
一方、Hot 100ではとうとうシャブージー「A Bar Song (Tipsy)」が19週目の首位をキープして、リル・ナズXの「Old Town Road」と並ぶ歴代最長1位記録を達成してしまいました。これで来週も1位だと新記録ですよ。たださすがに来週はケンドリック・ラマー祭だと思うので記録もここまででしょうね。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
*1 (-) (1) Golden Hour: Part 2 (EP) - ATEEZ <184,000 pt/179,000枚>
*2 (-) (1) From Zero - Linkin Park <97,000 pt/72,000枚>
3 (1) (4) CHROMAKOPIA - Tyler, The Creator <81,000 pt/540枚*>
*4 (-) (1) Happy (EP) - JIN <77,000 pt/66,000枚>
5 (3) (13) Short N’ Sweet - Sabrina Carpenter <72,000 pt/13,770枚*>
*6 (-) (1) Cosa Nuestra - Rauw Alejandro <67,000 pt/1,000枚>
*7 (RE) (13) Romance: Untold - ENHYPEN <54,000 pt/51,000枚>
8 (4) (22) The Secret Of Us - Gracie Abrams <50,000 pt/4,536枚*>
9 (5) (27) Hit Me Hard And Soft ▲ - Billie Eilish<49,000 pt/10,254枚*>
10 (6) (35) The Rise And Fall Of a Midwest Princess - Chappell Roan <43,000 pt/9,471枚*>
いずこからともなく現れた複数のKポップアルバムが炸裂してリンキンの首位を阻止してしまった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。さて最後はいつもの来週の首位予想(チャート集計対象期間:11/22~28)ですが、突然ドロップされたケンドリック・ラマーのニューアルバムが既にSpotifyデイリーチャートを席巻してますのでこれがぶっちぎりの首位でしょう。ではまた来週(てかもう明日が来週だなw)。