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今週の全米アルバムチャート事情 #245- 2024/7/20付

いやあ、とにもかくにも古江彩佳選手、ゴルフLPGAメジャー大会のアムンディ・エヴィアン選手権見事な優勝おめでとう!これまで何度も海外メジャーの優勝争いに絡んでは逃していた彼女が2日目から首位を走ってることを知って、慌てて唯一中継が見れるWOWOWを今月だけ契約して見始めた。今朝から昨夜録画しておいた最終日の様子を見ながら手に汗握ってたけど、最後の5ホールの古江選手のプレイの圧倒的だったこと!特に最終ホール、自らの手で優勝を決めたイーグルパットには鳥肌が立ちました。これで史上4人目の日本人LPGAメジャー優勝者となった彼女、今後の更なる活躍が期待されます。こうなると今週末の男子PGA全英オープンでの松山選手の活躍に期待が膨らもうというもの。今週末もゴルフ観戦三昧になりそうです。

"The Tortured Poets Department" by Taylor Swift

さて、ザック・ブライアンの先週一日フライングで17位にエントリーしてきた新作がテイラーを首位から引きずり落とすか?と期待された今週の全米アルバムチャート、7月20日付のBillboard 200ですが、何と今週ポイントを落とすどころかまたまた逆に43%も増やしてきたテイラーの『The Tortured Poets Department』がデビューから12週目の首位をガッチリとキープして来ました。今週のポイントは163,000ポイント(うち実売は何と154%増の90,000枚で今週のアルバム・セールス・チャートでも通算6週目のぶっちぎり首位です)という、結構強力な新譜でも寄せ付けないレベルの出力になっており、137,000ポイントという通常だったらぶっちぎりで1位取れてたはずのザック・ブライアンを余裕で上回ってしまっています。何でこんなことが起きてしまったのか。

ここに来て今さらのアルバムセールス再度の大幅増加の要因としては3つあります。
* 6月に追加でリリースされた7種類のバージョン違いCDの注文のうち、在庫なしで発送されていなかったものが、先週在庫補充が行われて一斉に発送されたこと(この時点でチャート集計の対象に算入されるようです)
* 今週のチャートの最終日7/11に一日限定で、3つの新しいデジタル・アルバム・バージョンがそれぞれ4.99ドル(約750円)でリリースされたこと。それぞれのバージョンには現在進行中のヨーロッパのエラス・ツアーのうち、ストックホルムでの「Guilty As Sin?」「How Did It End?」「Peter」のいずれかのライブバージョンが収録されている。
* シングル「Fortnight」のリミックス・バージョンとアコースティック・バージョン(従来一部のCDバージョンのみ収録だったもの)が7/8にリリースされたこと。
前者の在庫補充のタイミングといい、後者2つのプチ・マーケティング・ブラストまたまたの追加実施といい、本当に今回テイラー陣営はこのアルバムのマーケティングとチャート首位キープに命かけてる感じですねえ。さすがにそろそろウンザリしてきてしまいました。これで史上2位のモーガン野郎One Thing At A Time』のデビューから12週にも並んだことだし、来週はそろそろ潔くエミネムに首位を明け渡しても罰はあたらないんじゃないかなあ。

"The Great American Bar Scene" by Zach Bryan

可哀想なのはザック・ブライアンの『The Great American Bar Scene』です。先週1日早くフライングでリリースされ、今週は初めてのフルウィークのポイントで、137,000ポイント(うち実売8,500枚、ただし現在デジタル・アルバムのみ)という立派な出力を見せて普通だったら余裕の1位だったんですが、先週17位→2位というジャンプアップに留まっています。残念だなあ。先週から何度か通して聴いてますが、今回のアルバムは19曲と、前作『Zach Bryan』(2023、1位)の16曲よりも曲数は多くなっていますが、ジョン・メイヤーブルース・スプリングスティーンなどの有名どころの客演曲もあったりして、ややもすると単調になりがちだった前作に比べて結構すーっと聴ける分、締まった印象の作品になってるんですけどね。

前作同様、自分のことをラッキーだと思えるのは…という内容を語る詩の朗読「Lucky Enough」で始まる今回のアルバムの楽曲は、ジョン・メイヤーをフィーチャーした「Better Days」やラウンジ風のエレクトリック・ギター・サウンドの「Oak Island」、そして「I’m On Fire」を思わせるようなビートが効いたブルース・スプリングスティーンをフィーチャーした「Sandpaper」、そして何とブライアン・アダムスジム・ヴァランスの共作による「The Way Back」といった数曲でバンドスタイルの演奏が聴ける他は、基本シンプルなザックのアコギと少人数のバックによるアコースティックなもの。タイトルは「バーでパーティーで盛り上がる」といったどこぞの若手カントリー・シンガーの脳天気な意味合いではなく、むしろアフター・アワーのアメリカの場末のバーで、たまたま隣り合わせになった客と、静かに話をする、といった佇まいを表現しているようです。フィーチャー・ゲストも有名どころだけではなく、ノウライン・ホフマンという、無名ながらザックに寄りそう存在感あるデュエットを聴かせてくれる女性シンガーをフィーチャーした「Purple Gas」とか、ガイ・クラークタウンズ・ヴァン・ザントといった70年代無頼フォーク系シンガーソングライターに影響を受けたというオクラホマ州タルサで活動するジョン・モアランドというこれも比較的知られてない人が書いた、珠玉の楽曲「Memphis: The Blues」など、ザックのおかげで今回名前を知ったゲスト達との作品も素晴らしい。前作のケイシーとの「I Remember Everything」のように華やかな楽曲はないけど、長く長く繰り返し聴き続けられるようなそんなアルバムになる気がします。そしてこの新譜のリリースで、前作『Zach Bryn』も今週先週の12位→10位でトップ10復活。日本でもザックの名前がもう少し知られるといいなあ。

"Armageddon: The 1st Album" by aespa

ということで今週トップ10の初登場はゼロ。圏外11〜100位も今週は初登場が2枚と久しぶりに地味な週になっています。その圏外初登場のうち、上位に来たのが25位チャートインの、Kポップ・ガールグループのエスパ(aespa)の初フルアルバム『Armageddon: The 1st Album』。この前のリリースだった4枚目のEP『Drama: The 4th Mini Album (EP)』で初めてUSトップ20を外してましたが(33位)、今回もトップ10復帰とはならず、この順位に甘んじてます。初動としては20,000枚売上くらいの出力でしょうか。前々作の3枚目EP『My World』(2023年9位)では初動39,000ポイントでしたから明らかにちょっとジリ貧ですね。

前作の時もコメントしましたが、最近の彼女達の作品は、北欧系や英米のソングライターの書くちょっとエッジの立ったダンスハイパーポップやヒップホップ・テイストの曲に韓国語の歌詞を乗せるというスタイルですが、今回もその手法で作られていて、正直可もなく不可もなくといった印象を受けます。多分そういうが一部の熱心なファン以外には購入行動が広がって行かない要因になってるような気がしますね。今回は満を持してリリースする初フルアルバムだったし、ダニエル・シーザーが共作してる「Set The Tone」とかもせっかくだからヒップホップ・ハイパーポップにせずにR&B系で迫るとかしても良かったんじゃないかなあ。いろんな意味で残念なアルバムです。

"4eva Us Neva Them" by 42 Dugg

今週もう一枚の圏外初登場はぐーっと下がって76位に登場した、デトロイト・ラップの若手ラッパー、42ダッグのこちらも初フル・アルバム『4eva Us Neva Them』。彼は前2作のミックステープ『Free Dem Boyz』(2021年8位)、『Last Ones Left』(ESTジーとのコラボ、2022年7位)の頃はHot 100ヒットもあったりして盛り上がってましたが、そこから今回のフルアルバムまで丸2年空いてしまってのリリースということで、正直賞味期限がちょっと切れちゃった感がありますね。所詮トレンドとしては下降気味のトラップ野郎ですから、まあ無理もないところ。

それでもこちらも初フルアルバムということで、ミーク・ミル、今旬のカッ飛び娘のセクシー・レッド、ESTジーにアトランタ・ラップ・シーンの大ベテランのジージー、更にはリル・ベイビーといった手堅い有名どころの客演陣を配してはいるのですが、トラックメイキングの方にあまり目を引く名前も見えず、全体的には正直どこにでもありそうなトラップ・アルバムという感じにしか聞こえないのが残念なところです。

以上今週の100位までの初登場アルバムはわずか2枚でした。一方Hot 100の方はというと、先週久々にスリーパー・ヒット的に首位を取ったシャブージーは1週で首位を明け渡して、代わりに首位に9週ぶりに返り咲いたのは、ケンドリック・ラマーの「Not Like Us」ドレイクへのディス曲としてリリースされたこの曲、確かに首位陥落後もスポティファイのデイリー・チャートではずっと上位に居座り続けていただけに、この首位復帰も納得はできるところ。ちなみに首位返り咲きまでの最長記録は、ここのところ毎年クリスマスに1位になるマライアのあのクリスマス・ソングを除くと、去年のオリヴィア・ロドリゴの「Vampire」と2013年のマイリー・サイラス「Wrecking Ball」(共に陥落後10週目に返り咲き)。9週目返り咲きは今回のケンドリック・ラマーの他には2014年のテイラー・スウィフト「Shake It Off」がやってました。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (1) (12) The Tortured Poets Department - Taylor Swift <163,000 pt/90,000枚>
*2 (17) (2) The Great American Bar Scene - Zach Bryan <137,000 pt/8,500枚>

3 (2) (71) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <69,000 pt/1,359枚*>
4 (4) (8) Hit Me Hard And Soft - Billie Eilish<58,000 pt/9,844枚*>
5 (5) (16) The Rise And Fall Of A Midwest Princess - Chappell Roan <54,000 pt/10,251枚*>
6 (6) (183) Dangerous: The Double Album ▲6 - Morgan Wallen <40,000 pt/307枚*>
7 (9) (85) Stick Season ▲2 - Noah Kahan <38,000 pt/2,441枚*>
8 (8) (6) Where I’ve Been, Isn’t Where I’m Going - Shaboozey <36,000 pt/1,202枚*>
9 (3) (2) Megan - Megan Thee Stallion <32,000 pt/2,995枚*>
10 (12) (46) Zach Bryan - Zach Bryan <32,000 pt/2,335枚*>

ザック・ブライアンが惜しくも首位を逃してしまった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。最後に、いつものように来週の1位予想(チャート集計対象期間:7/12~18)ですが、ちょっと前から再三触れてますように、今週エミネムの新作がリリースされていて、普通であればコロナ後の出力減少可能性を計算に入れても15~20万ポイントくらいは叩き出すと思うので、来週はいよいよテイラーとの首位交代ではないかと思いますがさあどうか。それ以外では、ワンリパブリック、そしてNCT127あたりがトップ10入りしてくるかもしれません。ではまた来週。

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