今週の全米アルバムチャート事情 #256- 2024/10/5付
いやあ大谷翔平惜しかった。最終戦で4安打以上打つと三冠王の目があったんですが、4打数1安打で最終打率.310、首位打者のアラエズ(パドレス)の.314(円周率!)には及びませんでした。それでも今シーズンの大谷はすべての打撃スタッツでキャリアハイ。このままポストシーズンでも活躍を大いに期待したいですね。一方アラエズはこれで2022年のツインズ時、2023年のマーリンズ時、そして今年のパドレスと、3つの異なるチーム、両リーグでしかも3年連続首位打者という偉業達成。これはこれで大いに称えられるべきでしょう。そして我がNYメッツ見事ポストシーズン進出!ドジャーズを倒してWSは厳しいかもですが、2015年以来のWS進出を目指して「OMG」パワーで頑張ってほしいなあ。
ところで今週自分は病気治療の関係で入院しています。今も病院から時間を見つけてこの記事を書いてますが、今週はいつもより短めの記事になってしまうこと、ご容赦下さい。
さてMLBポストシーズンも始まった今週の全米アルバムチャート、10月5日付のBillboard 200の首位は先週の予想どおりフューチャー17本目のミックステープ、『Mixtape Pluto』が初登場。ただミックステープと言ってもフィジカルもフルラインリリースなのでほぼアルバムですし、129,000ポイント(うち実売10,000枚)という出力で先週予想したような「ぶっちぎり」ではないですが、4月に首位を決めたメトロ・ブーミンとのコラボ・アルバム2枚、『We Don’t Trust You』と『We Still Don’t Trust You』に続いてここ半年の間に3枚目の首位を獲ったことになります。これはソロアーティストとしては最速で短期間に3枚首位を取った記録で、過去にはビートルズが1965〜66年に『Beatles IV』、『Help!』『Rubber Soul』で、2010年にはグリー・キャストが『Glee: The Music, The Power Of Madonna (EP)』、『Glee: The Music, Volume 3: Showstoppers』、『Glee: The Music, Journey To Regionals (EP)』で達成してます。
アルバムの内容は、やはりトラップの第一人者、フューチャーとしての自信と自負と実力が存分に感じられる内容。トラップだからといって、トラックの存在感や迫力はそんじょそこらのトラップ野郎の作品とは比較になりませんね。トラップ落ち目と言われる中で、何くそ、とばかりに全編ハードなトラップビートで押し通して、ちゃんと聴かせるあたりはさすがです(トラップビートのないエモ風の「Lost My Dog」もいい味です)。
さて続いて6位に48,000ポイント(うち実売37,500枚)で堂々トップ10初登場してきたのが、ケイティ・ペリー7作目のアルバム『143』。先行シングル「Woman’s World」が63位1週のみチャートイン(UKでも47位)と不発だったので、とうとうケイティの時代も終わり、今回は100位内に入ってくれば御の字では、と先週言ってたんですが、あにはからんや、ケイティ人気根強いものがあると見えて堂々トップ10に初登場。UKでも同じ6位に初登場してますから、やっぱ出るとみんな買うし聴くんですなあ。取り敢えず連続トップ10は継続中です。
ただ今回メディアの評価は軒並みボロクソです。「退屈」「最悪の出来」「ケイティらしいエキセントリックさ皆無」「サブリナやシャペルの展開してる2020年代のポップ世界観から大きく遅れてて、古臭く今の時代では場違い」などもう散々。メタクリティックでも37点という、2020年代最低の点数が付いてます。まあ確かに今どきEDMポップでシームレスに延々と楽曲が続く構成で、マックス・マーティンやサーカット、Dr.ルークと組んだ2000年代っぽいポップ楽曲で固められているのは新しくはないですが、そこまで貶すほど酷いという気もしないんですがね。まあDr.ルークと全面的に組んでる、というのも世のフェミニスト達からは大きく評価を落としているというのもありますが(Dr. ルークはケシャに対する性的暴行を訴えられて、ケシャに賠償してる、という事件覚えてますよね)。まあな~んも考えずにEDMポップを楽しみたい人にはいいでしょうね。
今週トップ10最後の初登場は、42,000ポイント(うち実売13,500枚)で9位にチャートインしてきたリル・テッカの『Plan A』。若干18歳でデビューアルバム『Virgo World』(2020)が全米10位と鮮烈なデビューを飾ったリル・テッカももうアルバム4枚目、トップ10も通算3枚目とすっかり中堅どころになってきた感がありますね。
トラップではないエレクトロ風のトラックに、ところどころにオートチューンを散りばめながら、今回は従来の脱力系ではなく結構テンションの高いフロウで攻めてるリル・テッカ。フロウのスキルもかなり上がって来てる感じがあります。前作くらいからゲストも絞って、今回はドン・トリヴァーをフィーチャーした、こちらもテンションの高い「I Can’t Let Go」だけですが、ドン兄貴と対等に張り合ってる様子にテッカの成長を感じますね。なかなかソリッドな作品です。
さて、今週はなかなか時間取れないから圏外大量初登場だとやだな、と思ってたらうまいことに2枚だけでした、ラッキー(笑)。まず圏外一番人気は今週も登場してきたKポップ、6人組のボーイズバンド、P1ハーモニーの7枚目のEP、7曲入りの『Sad Song (EP)』。今年の2月にチャートインしたファースト・アルバム『Killin’ It』(39位)も含めて通算3枚目の全米チャートインで、キャリアハイを記録してます。着実に実績を積み重ねてますが、この辺だと30,000枚くらいの実売を動かしてるでしょうから、この倍くらいを動かせると次作はトップ10入りが望めそうです。
ただ彼らの場合作風が、エッジの立ったヒップホップ寄りでもなく、また全米で受けそうなR&B/ダンス・ポップ風でもなく、どちらかというと聴いてるとJポップにかなり影響を受けた楽曲が多いんじゃないかな、という感じなのである意味全米進出を狙うKポップ勢ではユニークな存在。ただ、それが全米でブレイクするのにプラスなのかどうなのかはよくわかりません。「All You」なんかはシティポップにかなり寄せた悪くない曲だと思うんですがどうなりますか。
そして今週最後の100位までの初登場は38位にチャートインしてきた、最早カントリーのベテランと言ってもいいキース・アーバンのもう13作目になるアルバム『High』。残念ながら5作目『Be Here』(2004年3位)から続いていた連続トップ10は、前作『The Speed Of Now Part 1』(2020年7位)までの8枚連続で終わってしまいました。
キース・アーバンというとオーストラリア人のカントリー・シンガーで、かつあのニコール・キッドマンの旦那というイメージが強いのですが、ちゃんとナッシュヴィルのグランド・オール・オプリーのメンバーですし、ナッシュヴィル・コミュニティではその実績と実力を認められたアーティスト。今回も既にナッシュヴィルのソングライター達との手堅い楽曲「Straight Line」(カントリー5位)や、今旬のレイニー・ウィルソンをフィーチャーした「Go Home W U」(カントリー7位)といった彼らしいアップビートな曲をヒットさせてます(生憎Hot 100にはクロスオーヴァーしてませんが)。ただ今回のチャートダウンを受けて、次作ではちょっと自己変革も必要なのかも知れません。ギターが巧いことでもしられるキースですから、ロック・ギタリストとのコラボ・アルバムとかどうでしょうかね。
ということで今週の100位までの初登場は5枚、久々にトップ10が賑やかでしたね。一方Hot 100の方に目を向けると、シャブージーの「A Bar Song (Tipsy)」が当然のごとく12週目の首位をキープする中トップ10はほとんど動きなし。初登場曲もほとんどがフューチャーのアルバムからのドカ盛りなので、今週はチャートイン21週目にして18位→17位にワンアップしているマシュメロ&ケイン・ブラウンの「Miles On It」に注目してみましょう。なぜこの曲?というと実はこの曲、今週で何とダンス・エレクトロニック・チャートの20週目の首位を突っ走ってるんです。かぶりものでお馴染みのEDMポップDJのマシュメロと、マルチ・レイシャル・カントリー・シンガーのケイン・ブラウン、という取り合わせもユニークですが、ケイン・ブラウンは従来からヒップホップ・アーティストとのコラボも積極的にやってますから違和感はなし。曲も見事なパワーEDMポップ風に仕上がってますね。Hot 100でももう少し上に行くかも知れません。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
*1 (-) (1) Mixtape Pluto - Future <129,000 pt/10,000枚>
*2 (3) (27) The Rise And Fall Of A Midwest Princess - Chappell Roan <105,000 pt/56,000枚>
3 (2) (5) Short N’ Sweet - Sabrina Carpenter <100,000 pt/13,797枚*>
4 (4) (6) F-1 Trillion - Post Malone <53,000 pt/2,738枚*>
*5 (5) (82) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <53,000 pt/767枚*>
*6 (-) (1) 143 - Katy Perry <48,000 pt/37,500枚>
7 (6) (23) The Tortured Poets Department - Taylor Swift <47,000 pt/4,149枚*>
*8 (8) (19) Hit Me Hard And Soft ▲ - Billie Eilish<45,000 pt/5,048枚*>
*9 (-) (1) Plan A - Lil Tecca <42,000 pt/13,500枚>
10 (9) (96) Stick Season ▲2 - Noah Kahan <38,000 pt/2,000枚*>
ということでフューチャーが今年3回目の首位を征した今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか?最後はいつものように来週1位予想ですが(チャート集計対象期間:9/27~10/3)来週はおそらくレディ・ガガ主演映画のサントラ盤でもある彼女の新譜が多分20万ポイントくらい叩き出して首位取るでしょうね。その他トップ10に入ってきそうなのは、ダベイビーのミックステープに、ひょっとすると話題のトミー・リッチマンのデビュー・アルバムが来るかも知れません。ではまた来週。