【毎年恒例年末洋楽企画#1】2020年ビルボード誌Hot 100年間チャート予想(のはずだった)Part 3: 10位〜6位
そろそろ音楽メディアやいろんな音楽ブロガーの皆さんが2020年のベストアルバムランキングを発表し始めてますね。僕もこの次の企画は自分の2020年ベストアルバムランキングなんですが、なかなか今選考で悩んでます。今年はいい作品多かったからなあ。そちらもどうかお楽しみに。さて、この年間チャート予想ランキング・カウントダウン、トップ10に突入です。
10. The Bones ▲3 - Maren Morris
(Hot 100 - 43週、Top 40 - 38週/2020.4.18付 最高位12位)
さていよいよ年間予想トップ10の第10位は、今年のCMA(カントリー・ミュージック・アソシエーション)アウォードで最優秀ソング部門を受賞した、名実ともに2020年を代表するマレン・モリスのカントリー・ポップ・ソング「The Bones」です。この曲の歌詞の内容とか、この曲を書いたソングライター・チームのマレン、ジミー・ロビンズ、ローラ・ヴェルツの3人についてとかは、この間のグラミー賞ノミネーション予想のブログで詳細に書いちゃってるので、こちらを見てみて下さい。
グラミー主要部門にはノミネートされなかったとはいえ、これほどの今年を代表する印象の強い曲が最高位12位というのも意外ですね。それというのも、トップ40に38週ステイという、今年の年間チャート対象曲中トップ10ヒット以外では圧倒的な最長記録をマークしたから。もっともカントリー・チャートでは堂々19週1位の大ヒット曲なので、当然といえば当然、今回も主要部門からは無視されましたが、しっかり最優秀カントリー・ソング部門にはノミネートされてますし、ノミニーの顔ぶれを見る限り、ここはマレンががっちり受賞しそうです。
ちなみにこちらのビルボード誌年間チャートの順位は9位。おお何と1位違いとやはりこの曲についての今年のチャート上の評価はゆるぎないようです。
9. Whats Poppin ▲3 - Jack Harlow Featuring DaBaby, Tory Lanez & Lil Wayne
(Hot 100 - 41週、Top 40 - 32週、Top 10 - 13週、Top 5 - 8週/2020.7.11 &8/1付 最高位2位)
さて、今年こつ然と現れた、ケンタッキー州ルイヴィル出身の新世代のホワイト・ラッパー、若干22歳のジャック・ハーロウ。でもちっとも「こつ然」ではなくて、彼は高校時代時代から地元のクラブで満員の観客を相手にギグをこなしていて、既にかなりシーンでは実績を重ねてきているらしい。この曲(1月にオリジナル・バージョンをリリース、6月にジャックで始まり、ダ・ベイビー、トーリー・レインズ、リル・ウェインの順番にマイクを回すリミックスをドロップしてこいつで2位まで急上昇した)も基本単調なトラップのトラックをベースにしていながら、完璧にジャックのフロウの巧さだけで聞かせる、ジャックのラッパーとしてのスキルが全開の曲で、とにかく聴いてて気持ちがいい。しかもビデオに登場するジャックはとにかくフツーのそこらの白人の男の子で、その彼がこんなスキルフルなラップをかますのか!というギャップも受けてる要因の一つなのかも。
思えばエミネムが出てきた時は、ホワイト・ラッパーは特異な存在っていう感じあったし、黒人ラッパーたちと張り合うために血管ブチ切れそうなくらいのテンションと特異性をガンガンに出さないとまともに評価されない、って感じがあったんだけど、このジャックなんて飄々と自分のスタイルとペースでやってるのが時代の変化を感じるというか。今回のグラミーでも最優秀ラップ・パフォーマンス部門で唯一ノミネートされてて、結構競争激しいカテゴリーなんで受賞は難しそうだけど、このレベルのパフォーマンスでブレイクしてるのに、新人賞部門にノミネートされてないのが不思議なところですね。ところでこの曲のビルボード誌年間チャートの順位は13位でした。
8. I Hope ▲3 - Gabby Barrett Featuring Charlie Puth
(Hot 100 - 47週、Top 40 - 36週、Top 10 - 10週、Top 5 - 3週/2020.11.21付 最高位3位)
ギャビー・バレットのこの曲も、もう上述のグラミー賞ノミネーション予想のnoteの記事でさんざん書いたので、もうあんまり書くこともないんだけど、やっぱりどう考えてもこの曲、このアーティストが主要4部門(僕はSOY、新人部門のノミネーションは確実と予想しました)どころか、カントリー部門でもガン無視されたのは理不尽の一言だと思うなあ。だってこの曲、今週もカントリー・ソング・チャートの3回目の1位を独走中で、今週マレン・モリスの「The Bones」の19週1位に並んだんですから!
アメリカン・アイドルでも上位に残ったくらい実力もあるし、曲自体もちょっとひねりの効いた男女関係を歌った秀逸な曲だと思うんだけど。個人的には聴いたこともない訳のわからんノミニーが多い今年の新人賞部門には少なくとも圧倒的にノミネーションされてしかるべきだと思うなあ。ちなみにこの曲のビルボード誌年間チャートの順位は13位でした。でもこの曲、やっぱ2020年を代表する曲だからトップ10で然るべきだと思うな、うん。
7. Life Is Good ▲7 - Future Featuring Drake
(Hot 100 - 38週、Top 40 - 37週、Top 10 - 17週、Top 5 - 12週/2020.1.25-3.14付 8週2位)
今年のドレイクは5月にミックステープ『Dark Lane Demo Tape』をドロップしただけだったんだけど、そのミックステープも堂々初登場2位だったし(余裕で1位だと思ったんですが、僅差でケニー・チェズニーの『Here And Now』に1位を攫われてました)そこに収録の先行シングル「Toosie Slide」(年間チャートでは32位、自分の予想は36位でした)も貫禄のHot 100初登場1位と、活動レベルは地味でも結果はしっかり出している、という優秀な営業マンのような(笑)パフォーマンスを見せてましたね。
そのドレークの今年はソロよりも、これまでも多数やってる他アーティストとのコラボ・シングルでの活動が目立ったんですが(DJカレドなんてドレイクを使い倒して2曲も同時トップ10ヒットを放つという相変わらずあざとい商売してましたねw)、その中でも最大のヒットになったのが、このフューチャーとの豪華なコラボによる「Life Is Good」。フューチャーの7枚目の初登場1位アルバムになった『High Off Life』からのカットで、前半のドレイクのほとんど歌ってるようなヴァースと、後半のいかにもフューチャーらしいどトラップなドスコイなヴァースとの対比がなかなか新鮮で印象に残るトラックでしたね。また、PVでも自分たちのこの曲のPVを自分たち自身が撮影スタッフで撮ってる、っていう遊び心満点の趣向がいい感じで、特にPV監督にコキ使われながら「わかったよ、あんたがボスだから」とサラリーマンっぽく演技するドレイクには結構笑わしてもらいました。
最後にチャート・トリビアを一つ。今回この「Life Is Good」は初登場の週から8週連続2位という、Hot 100の歴史に前例のない高順位での連続週数記録を樹立したんですが、単純に最高位2位での連続週数記録でも歴代5位、10曲目という記録を樹立してます。その具体的なリストと順位は下記の通り。なかなかトップ40ファンには懐かしい曲が並んでますね。
1. (10 wks) Waiting For A Girl Like You ▲ - Foreigner (11.28.1981-1.30.1982)
1. (10 wks) Work It ▲ - Missy "Misdemeanor" Elliott (11.16.2002-1.18.2003)
3. (9 wks) I Love You Always Forever ● - Donna Lewis (1996.8.24-10.19)
3. (9 wks) You're Still The One ▲2 - Shania Twain (1998.5.2 & 6.20-8.8)
5. (8 wks) If I Ever Fall In Love ▲ーShai (1992.11.21 & 12.5-19 & 1993.1.16-2.6)
5. (8 wks) Nobody's Supposed To Be Here ▲ - Deborah Cox (1998.12.5-1999.1.23)
5. (8 wks) Back At One ● - Brian McKnight (1999.11.20-2000.1.8)
5. (8 wks) I Don't Wanna Know ● - Mario Winans Featuring Enya & P. Diddy (2004.4.24-6.12)
5. (8 wks) Thinking Out Loud ▲12 - Ed Sheeran (2015.1.31-3.21)
5. (8 wks) Life Is Good ▲7 - Future Featuring Drake (2020.1.25-3.14)
ちなみにこの曲のビルボード誌年間7位で、自分の予想的中。なかなか気分いいです(笑)。
6. Rockstar - DaBaby Featuring Roddy Ricch
(Hot 100 - 31週、Top 40 - 31週、Top 10 - 26週、Top 5 - 18週/2020.6.13-20 & 7.4-8.1付 7週1位)
去年ブレイクした、ダベイビーことジョナサン・リンデイル・カークも、去年から今年にかけては絶好調。今回のグラミー賞の対象期間中の去年9月末リリースの『Kirk』と今年4月リリースの『Blame It On Baby』の2枚の全米No.1アルバムを放ってて、この7週1位の「Rockstar」の大ヒットもあり、この間のグラミー賞ノミネートでもこの曲がROY部門のノミネートをゲットしてました。しかしヒップホップに興味のないトップ40リスナーにとっては、最近リル何とかだけでなく、リルベイビーとかこのダベイビーとか、何とかベイビーっていうラッパーもいろいろいて、何かよう判らんぞ(笑)というのが正直なところかも知れません。
ただ最近の何とかベイビーの連中、「The Bigger Picture」が絶対ROY、SOYにノミネートされると思っていた(実際は最優秀ラップ・パフォーマンス部門と最優秀ラップ・ソング部門のみのノミネート)リル・ベイビーにしてもこのダベイビーにしても、改めて聴くとかなりしっかりしたスキルで、それぞれちょっとオールドスクールな味のあるフロウ(ダベイビーとかはバスタ・ライムスの雰囲気あるね)の、実は実力派なんですよね。そして新人なのに鋭いフロウをかませるロディ・リッチをフィーチャーしてるこの曲、ヒップホップキッズにウケるのは分かるなあ。
そしてリルベイビーの「The Bigger Picture」に対抗してというか時を同じくして、この「Rockstar」が1位になった6/13付の次の週に「ブラック・ライヴス・マター・リミックス」をリリース(同じ6/20リリース)、オリジナルにダベイビー(ジョージ・フロイドと同じ体勢でBLMバージョンのPVでラップしてます)とロディがそれぞれ警官に暴力的威圧的な取扱を受けた経験をテンションマックスでアジるようなフロウを追加したバージョンで、これが合計7週も1位を記録するのに大いに貢献したのは間違いないところ。もともと銃にでも頼らないと生きていけない、そしてコーダイン(風邪薬だが安くトリップできるドラッグ代用薬として摂取されている)でラリってる奴らばかり、といったダウナーなリリックの曲だったけど、このBLMヴァースの追加でこの曲のソング・パワーというか、インパクトが一気に増幅したんですね。UKでも同時期に通算6週1位を記録したこの曲、ビルボード誌の年間チャートでは5位、惜しくも自分の6位予想とは1位違いですが、この惜しさは次の年間予想5位の曲で更に悔しさを増すんですが、その理由はまた次のパートで。