奇跡の人
「奇跡の人」と聞けば、ほとんどの人は「ヘレン・ケラー」の物語を思い浮かべるでしょう。
「見えない」「聞こえない」「話せない」
そんな三重苦を乗り越えた女史のお話は児童書にもなってますし、何度も映画や舞台になっているので、知らない人はいない、と言っても過言ではないかと思います。
が、今回私が読んだのは、原田マハさんの「奇跡の人」。
マハさんにハマり、ゴッホにハマり、ガラにもなく美術館に通うようになった長女が、カナダに行く前に「ママも読んだら?」と置いていってくれた文庫本。
マハさんの読みやすい文調に一気に読んでしまいました。
ケラー女史の話を、ほぼそのまま日本の明治時代に置き換え、その実話をもとに描かれたフィクション。
何度となく読んだ、見た、ヘレン・ケラー「奇跡の人」の、あのシーン、あのエピソード、、それらを思い出しながら「れん」と「安(あん)」の話が雪深い津軽で展開していくのを追いました。
当時の日本で「障害者」が置かれた状況も伝わります。
土蔵に閉じ込め、「存在しないもの」として扱う。
そんな描写に、今、話題になっている「旧優生保護法下の障害者不妊手術」問題がリアリティさを増します。
「違う」ものを忌み嫌う。
我が子を愛おしく想う気持ちを持ってしても抗えない周囲からの偏見。
きっとたくさんの「子殺し」があっただろうな、と想像に難くありません。
でも、ヘレンケラーにとってのアニーサリバン、れんにとっての安、のような「出会い」でその人生は劇的に変わるのです。
出会いも奇跡
成し遂げたことも奇跡
でもそこに人が人の力を「信じる」気持ちがあったから起きたことなのではないかしら。
そう考えると、単に「奇跡」で終わらせることではないような気がします。
実話には登場しない「キワ」の存在も印象的でした。
一気に読んでしまったので、もう一度、ゆっくりじっくり読み直したい。
そんな気持ちになっています。