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夏休みに手にとってほしい『英国幻視の少年たち』

前から書きたかった小説について、好き勝手に語るシリーズ。せっかくなので、夏休みに読んでほしい小説について紹介しようと思う。

ポプラ社、深沢仁さんの『英国幻視の少年たち』


1巻が出版された頃から追いかけていた。作者のTwitterを毎日チェックし、新刊情報を心待ちにするほど、のめりこんだ小説である。しかも、ちょうど2巻が夏至のイギリスが舞台なので、この記事を読んで気になった方は絶対に手に取ってほしい。(圧)


あらすじ

とある『過去』から逃げるようにイギリスの片田舎へ留学した主人公カイ。特別な「目」を持っていたことから、妖精に道に迷わされていたところ、ランスという風変わりな青年に助けられる。それから、カイは人ではないものによる事件を解決する報告局に所属しているランスとともに、様々な事件に巻き込まれていく。(巻き込まれに行く)。


一言で言い現わすなら、エモい。エモいという一言で終わらせたくないが、エモい。1巻が発売された当時、「エモい」という言葉は生まれてなかったと思う。だけど、寂寥感と懐かしさと、切なさとノスタルジーを感じながらもワクワクする気持ちを一言で言い表すなら「エモい」かなと思う。


妖精がメインで出てくる現代の小説があまりない気がするし、そもそもがっつりイギリスが舞台の小説で主人公が日本人というのもなかなかない。パッと思いつくのは『魔法使いの嫁』とか…。あくまで私が知っている範囲の中の話なので、イギリスが舞台で日本人が主人公の面白い小説や漫画があったらどんどん教えてほしい。

見どころは、イギリスに行きたくなるところ。作者の方が外国で暮らしたことがあるようで、私は行ったことがないけれど、雰囲気が伝わってくる。日本で異形のものというと、妖怪や幽霊が思い浮かぶけれど、イギリスは妖精。本当だったら関わることのない日本人という微妙な立ち位置のカイが、妖精たちとどのように関わっていくのかも魅力の一つ。何度か妖精の国に足を踏み入れることになるのだが、その描写も素敵。

物語の主軸となるのが、カイとランス。二人の関係性も面白い。コンビとかバディは、正反対の性格だったりするものだけれど、二人とも積極的ではないし、でしゃばることもないので、距離感がここちよい。かといって、ほったらかしではなく、お互いへの思いやりを垣間見ることができる。二人とも地に足がついていないというか、第三者からみると、どこかに行ってしまいそうな儚さを感じる一面がある。そこがまた、妖精との相性と関係してくるのだけれど、あまり詳しく書くとネタバレになりかねないので、二人の関係性がどう変化していくのかも楽しみながら読んでほしい。

あと、同じ作者の方の作品で、『この夏のこともどうせ忘れる』という短編小説もある。こちらも、夏らしく、少年少女の心の微妙な感じを描いている作品でおすすめ。





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