爆発、それはエネルギー
もう先週になるだろうか、午後から鶴見で学会があったので、久々に土曜日の午前中が空いた。
せっかくだから神奈川の方で何かないかと思ったら、岡本太郎美術館の特別展が気になっていたのを思い出した。
これである。
霊性とマンダラ。こんな言葉を並べられたらもう、行くしかない。
大学時代に知った小松美羽さんのおどろおどろしくもなぜか目を引く芸術
最近本を読み始めたけど太陽の塔くらいしか作品を見たことがない岡本太郎さん
この二人の組み合わせは斬新だけど、どこかしっくりくるように思えた。
圧倒的な日差しが容赦なく照りつける土曜日の朝、僕は向ヶ丘遊園駅に降り立った。
今回の目的地である岡本太郎美術館は、駅から少し離れた生田緑地の中にある。
タクシーでも拾って向かおうと思ったが、全く駅前のタクシー乗り場に車が来ない。
途方に暮れてうろうろするうちに、バスが来て事なきを得た。
そしてついた生田緑地、ここがもう最高すぎた。
見渡す限りの緑、久しく見かけないほど背の高い木
久しぶりの林に、少し湿って熱を帯びた空気すらうれしく感じる。
林の中ではホトトギスが鳴いていた。
公園内の道に従い、少し開けた丘の上に、目的の美術館があった。
朝食を食べ損ねていたので、美術館併設のカフェでサンドイッチとコーヒーをいただく。
腹ごしらえをして、美術館に入る。岡本太郎の常設展から順路が始まる。
ビビッドな色彩と、抽象的な図案で、いかにもなアートが並べられている。
しかし一枚一枚の存在感と圧がすごい。絵自体が確かにエネルギーを放っている。
思ったほど線の多くない画風が、洗練された混沌を際立たせる。
絵から彫刻、工芸品までさまざまな作品が並べられ、中には父の岡本一平氏、かの子氏のコーナーもあった。
作品ひとつひとつが濃く、じっくり観ながら進んで行くと、小松美羽展に辿り着く頃には精神的にヘトヘトになっていた。
ダメだ、この空間は濃すぎる…
岡本太郎とスパーリングを繰り広げたような気持ちになって、少し息を整えて本命の展示に向かう。
ようやく小松美羽展である。
フルコースを食べた後に2軒目の暖簾をくぐったような気持ちであるが、仕方ない。
小松美羽作品も、岡本太郎作品に負けず劣らず一枚一枚が強い存在感を放っている。
岡本太郎の、「芸術はうまくあってはならない、心地よくあってはならない、綺麗であってはならない」という言葉がこの展示にはとてもしっくりくる。
上辺の「よさ」を全て取り払ってあるからこそ、作品には魂が宿り、見るものの心を鷲掴みにくるのだ。
魂のスパーリング、第二ラウンドである。
小松美羽作品は、岡本太郎のものとは真逆で、圧倒的に線が多い。
だけど、本質のところではどこか似通ったものを強く感じる。
観る者にただ観させておかない、何か強いものを訴えかけてくる芸術である。
作品一つ一つにパンチを喰らいながら、やっとこさ出口にたどり着いた頃には、半日なのに1日が終わったような充足感を得ていた。
岡本太郎美術館、大変おすすめであります。
小松美羽展は8/28まで。
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