船旅(21時間)その1
乗船まで
一度新幹線に乗った以外はいつも飛行機で福岡の実家まで帰省していた。新幹線4時間半+在来線30分で腰が大変なことになったので、それ以来何があっても飛行機を使うことにしていたのだが、周囲の悪い人に唆されてフェリーで帰ってみることにした。正直なところ前から興味はあった。エアプはよくないという謎の負けず嫌いと怖いもの見たさ。それに、社会人になったらこんなに時間を贅沢に使うことも難しくなるかもしれない。ツーリストSは埋まっていたので、ツーリストAの女性専用席(部屋ではないので“席”である)を予約した。
予約してから毎日のように旅行系YouTuberのvlogを見ては素敵な船旅に思いを馳せていた。吹き抜けのロビーは豪華だし、レストランのメニューも充実している。デッキからは見渡す限り一面太平洋、晴れていれば夜には星が見えるかも。
乗船、メソメソ、入眠
21時ごろに上野から電車に乗って横須賀中央駅に向かう。割と暗くて人通り少なめの道を頑張って歩いた。スーツケースを引きずる音が響くぐらい静か。
駐車場にはトラック(の背中のとこ)が大量で、ここの陰で殺されてそのまま東京湾に沈められたら誰にも気づかれないのかなとか考えた。
ワクチンの接種証明と学生証を見せて発券。旅行支援と学割の併用で7,500円とかだった。
15分ほどラウンジでぼーっとしてたらすぐに乗船の時間になった。エスカレーターを上ってタラップ(船の場合でもタラップっていうのかな)を歩いていざ乗船。明日21時まで約21時間の船旅が始まる。
幾度となく予習した吹き抜けのロビーがお出迎え。さすがにちょっとテンションが上がる。
ロビーを抜けて一旦今宵の宿へ。
ん、思ったより狭い。思ったより狭いぞ。動揺を隠しつつ荷物を置いて船内探検に出かけた。窓際にはテーブルと椅子が並んでいて、どこで買ったのか、ビールと刺身で早速優勝しているおじさんがいた。明日はここで海を見ながら本でも読もう。
売店、自販機、コインランドリー、風呂、レストランなんかを一通り見て回って、自撮りまでしちゃって満足して帰宅。荷物を整理してカーテンを閉めて固いベッドに寝転んだ瞬間、涙が出てきた。売店も自販機もディズニー価格だった。部屋も廊下に面しててプライバシーなんてあったもんじゃない。アナウンスによれば風が強くてデッキには出られないらしい。東京の部屋に残してきたうさお(抱き枕)に会いたい……。一通りTwitterで駄々をこねたあと、気を取り直して風呂に向かった。
露天風呂からは海が見えると期待していたがフェンスがあった(それはそう)ので、下の隙間から覗いてみたが真っ暗で何も見えなかった。かなり寒かったけど月が綺麗に見えたので機嫌を直すことにした。
ちなみに、脱衣所にある自販機だけなぜか水の値段が安かったので乗船予定の人はぜひここで。
部屋に戻るころには東京湾を抜けていて、湾を抜けたら意外と揺れるんだなと思いながら、日の出の時間に目覚ましをかけて眠りについた。