CHOTTOの選書02
【第58回産経児童出版文化賞受賞】
はやくはやくっていわないで
作・益田ミリ 絵・平澤一平
益田ミリさんのことばは、とても優しく寄り添ってくれる強くて暖かいことばです。
平澤一平さんのイラストは受け取る人の心の状態によって「今のあなたはどう読む?」と語りかけてくるような広大な余白が存在しています。
最近はこどもだっておとなだって、みんな何かを我慢しすぎているような気がします。
多様性を認め合って、個性を尊重し合って、互いに理解し合おうとすることで世の中が一歩前進するんだと思います。
0さいから100歳までを対象としたこの絵本は、誰もが抱える違和感を否定せず、肯定もせず、ただ受け入れてくれます。
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後藤
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【著者より本書刊行によせて】
わたしの心を温かくしてくれる思い出のひとつに、小学校一年生のときの教室でのできごとがあります。
その日、クラスのみんなでくじ引きを引くことになりました。なにをもらうためのクジだったのかは忘れてしまったけれど、楽しい雰囲気だったから、きっとレクレーションの時間だったのでしょう。
担任は若い男の先生でした。順番にクジを引きなさいと先生が言ったので、生徒たちはいっせいに前に走っていきました。
だけど、わたしはグスグズしていて出遅れてしまった。クラスメイトの中で一番ビリ。
こんな最後に並んだら、もういいものなんてもらえない・・・。
そう思うと悲しくて、せっかくの楽しかった気持ちもしぼんでしまったのです。
すると、思ってもみないことが起こりました。先生がわたしのところにやってきて、みんなの前でこう言ったのです。
「一番最後に並んでえらかったな」
わたしは先生に誉められてびっくりしました。びっくりしたけど、すごくうれしかった。うれしくて、うれしくて、もう35年も昔のことなのに、思い出すと今でも温かい気持ちになるのです。
先生は、最後の子供までちゃんと見ていて、待っていてくれた。はやくはやくって言わないで、待っていてくれたのです。
励まされたり、なぐさめられたり、人はたくさんの言葉を受け取って前に進んでいく。でも、一番うれしいのって、誰かが待っていてくれたことじゃないかなとわたしは思うのです。
ながく読みつがれる絵本になることを願って。
2010年10月
益田ミリ
ページ数54
判型210(横)×260(縦)角背上製
装丁鈴木成一デザイン室