3分でわかる実務補習プロセス

2019年に中小企業診断士試験合格、その後2020年2月、7月、8月に実務補習を経験した筆者が、その経験を元に全体の流れと、こんな風に進めればスムーズで良い診断報告ができるんじゃないか、ということをまとめた記事です。

1 概要

中小企業診断士試験に合格すると、15日間(15ポイント分)の実務従事または実務補習を受講することで登録することができます。
そのうち、中小企業診断士協会が主催している講習を実務補習といいます。5日間(5ポイント)1セットになっておりすべて実務補習で診断士登録しようとすると3回(3社)受講する必要があります。実務補習受けるなら2回は経験した方が良いと思っています。

2 初日以前

協会からの資料送付があります。そして、実施の4~5日前に指導員からメールがきます。ここからが実質のスタートです。
5日コースと言っても、事前の連絡があり、初日から最終日までの日程は土日、平日を挟んで土日月、といった構成が多いので期間としては10日くらいでしょうか。
最初のメールはBCCで来て(指導員のリテラシー次第ですが)、まずメール受け取ったよーと返信します。そうすると次からはCCでメールがくるようになります。

3 指導員とメンバー

ここで、メンバーの名前やメールアドレスが明らかになります。
事前の自己紹介なんかも早い班では当日までにメールで済ますことになります。指導員の自己紹介もこの時点でされることが多いのではないかと思います。

4 初日までにやっておくと良いこと

診断先企業の情報が事前にどれほど明らかになるかによってできることは異なります。概ね以下の通り。
4.1 外部分析
診断先のホームページは見ておきます。
業界研究は、「●●業協会」とか「●●業連合会」みたいな団体のHPに行くと業界の統計情報とかがサイトからDLできます。●●業界市場動向とか検索してみるとヒットしやすい。
取引先も明らかならチェック。特に大手ならIR情報の中期経営計画が個人的なおすすめ。これを提言として報告書に入れるのもありありのあり。
業種別審査事典(図書館に行ってコピーできます)貸し出しはしていなくて閲覧のみです。

4.2 財務分析
協会から提供されるツールで分析しておきます。
勘定科目がわからない項目は“その他〇〇資産”でOKです。
たぶん不明点が出てくるので訪問時の質問内容になります。

4.3 ヒアリング内容
訪問時にどんな質問をするか事前に考えておきます。どんなに細かく情報公開されていても良い質問は難しいです。良いが質問できない可能性は高い。3回やったけど無理でした。事例の与件文を自分で作らなきゃいけない。その難しさを堪能できます。
強みを聞く場合、「御社の得意としていること(お客様に選ばれている理由、自社にしかない設備etc)はなんだと思いますか?」とかになるわけですが、さらに掘り下げていく必要があって、だいたい社長の人柄やベテランの技術力とかに帰結することになる、と思われます。
切り口のヒントとしては「事業そのものの良し悪し」「採用と育成」「IT化の状況」「財務状況」が挙げられます。

4.4 補助金制度情報
有益情報と思うので概要くらいは把握しておくと良いです。提案するなら、申請方法まで書く必要があります。

5 初日

初日から二日目が一番大事かと思います。
5.1 協会からの説明会※
今は事前にZoomで聞いておくだけと思います。会場集合なら、地域の会長から話があります。

5.2 自己紹介
改めての自己紹介。この時点では指導員がいちばんしゃべります。

5.3 担当分け?
進め方によっては、ここで報告書の各パート役割分担なんかをやる、わけですけど、この段階では誰がどこを書くかは決めないことを推奨します。指導員が決めろといっても、決めないことを推奨。理由は後述します。

5.4 診断先訪問
初日のメインイベントです。質問項目などは整理しておき、議事録係やタイムキーパーを決めておきます。診断先と名刺交換は禁止されています。つまり実務補習に名刺は不要です。

5.5 【超重要】報告書のアウトライン

進め方は指導員のやり方やメンバーしだいです。
作りは、表紙、目次、あいさつ文、経営環境分析(外部分析、内部分析、SWOT分析)、総括提言、総括提言に基づいて章ごとの提言)、財務資料。
ここでの注意は、必ず項目建てなければいけない分野があること。労務管理、IT化、財務分析など。進めていていくと、内容がまたがったりするので注意が必要です。どのように項目建てるか、どれくらいの分量を書くかは裁量があるので、重要項目に注力すればいいと思います。
※個人的にはこの段階でもまだ報告書の担当分けしないことを推奨します。
よくある分担は、事業方針がAさんで労務はBさん、ITはCさん…だけど、この分け方はナンセンス。というのも、全体的な方向性が決まらないことには、各章で書くことも決まらず分量も明らかになりません。そのため負担感も見えない。この段階で担当を分けてしまうとそれぞれが自分の担当部分に何を書くかに心がいってしまうため、ひとつにまとめた時に論理的な整合が取りづらい。
まずは全員で経営環境を共有、分析して、全体の方向性とアウトラインを決定、各章に何を書いていくかの箇条書きまで進めます。
それから箇条書きした部分を誰が肉付けするか担当分けしていくやり方が良い、と思う。
また、章ごとではなく節ごと、項ごとで担当を分けると同じ章を複数人で担当するようになるので相談し合えて良いです。それに負担感も均等になるので公平性が担保しやすいです。

報告書の共有方法、いったん作成した文書を更新した際のバージョン管理方法もきちんと決めておきます。
※決めていてもそうならないケースもままある。
なお、それらを一つの報告書としてまとめる役割(Word屋とかマージ屋と呼ぶ)は非常に負担が重いです。担当者からは肉付け文書の負担は軽くしてあげましょう。そしてバージョン管理ルールはしっかり守りましょう。
Wordマージ屋は全体管理をすることになるので、実質的なリーダーです。

5.6 初日の進捗
報告書前半に書くことになるであろう、SWOT分析と全体の方向性の確定まで行えれば順調と思います。
方向性が初日で定まらなければ二日目午前まで引っ張ってもOK。その場合担当わけも先に延ばします。
個人的にはいらないと思うけど、パワポ報告するかも決めておきます(決めないで最終日に確認して、やったら?みたいなこと言われると痛い目みますw)

6 二日目

二日目が終わると数日のインターバルを挟みます。(三日目までやってからだったかな?)今はZoomなどで会話する機会も多いので対面で集まる必要がない点は便利だけど、方向性の確定から各担当分野の書き込みに入っていければ良い。
二日目~三日目の間もメンバー同誌では密に連絡を取り合うことになります。この間は指導員からのアドバイスはほぼありません(たぶんそういう方針なのだと思われる)
二日目も提言の骨子は改めて確認して認識合わせすると良いと思います。

7 三日目

三日目の集合時点で各担当パートがひとまず書き上げており、悩みどころだけ残していると良いです。この日に指導員にも読んでもらい、指摘をしてもらって修正や詰めを行います。
具体的な行動レベルまで落とし込めているか、その提言が診断先にとって何の意味があるのか?を詰められることが多いです。
この日は追加記述や図の挿入といった作業に加えて、各章ごとなどでまとめて、他の担当に読んでもらったりすると良いです。

8 四日目

四日目は読み合わせと最終調整の日になります。
細かい修正点はたくさん出ますし、体裁も整える必要があります。Wordマージ屋の負担がもっとも重くなる日です。更新情報は細かく報告しあって進めます。
この日に印刷、とじ込みができると最終日は報告に集中できるので進捗としては良いです。
逆にこの日の晩までまとまらず、解散後も修正が繰り返されるようだと、(指導方法も含めて)ここまでの進め方に問題があったと言えます。

9 最終日

報告の日です。前日夜に読み返して誤字が見つかるとかもあるかもしれませんが、体裁が整っていれば、該当ページを差し替えるだけで済みます。
半日が報告、半日が協会への終了報告になります。
報告書は90ページを超える為、社長が全部読んでくれるのはこの時のみになると思います。90ページもありますものね。だからこそパワポはいらないと。というよりパワポ作る時間あるなら報告書を磨き上げた方がいいもんね。

作り手として、報告書の用途は、『経営で迷ったときに「理論で考えるとどうなのだろう」と読み返す辞書』と認識しておくと作り甲斐もあると思います。

受講する方はがんばってください。

以上です。



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