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冬の戸定邸で過ごすひととき

冷たい北風が頬をかすめる寒い日、私は戸定邸を訪れました。空は澄み切り、冬らしい透明感が広がっています。日陰では北風の冷たさに手がかじかみましたが、日向は思いのほか暖かく、太陽の温もりがなんとも心地よく感じられました。

冬の澄んだ空気に包まれる門。そのお正月飾りが、過ぎ去った特別な時間をそっと思い起こさせてくれました。


戸定邸は、徳川昭武が建てた邸宅です。きらびやかではありませんが、どこか誇り高く、品のある佇まいが印象的でした。家紋や透かし模様が控えめに施されていて、細部に込められた美しさに心を奪われます。

品格と静けさを湛えた空間。戸定邸の細やかな装飾に目を奪われます。


邸内に入ると、風が障子を軽く揺らす音が聞こえました。その静かな音に耳を傾けると、ふ〜っと、子どもの頃の記憶がよみがえりました。近所にあった古いお屋敷、木の柱や畳、襖のある空間。あの頃は当たり前だった景色が、今では懐かしい記憶になっています。初めて訪れた戸定邸なのに、どこかで知っているような温かさを感じました。記憶の奥底に触れるようでした。

戸定邸の入り口。この扉をくぐると、静けさと懐かしさが広がる空間へと誘われます。


邸宅の西側には、江戸川や富士山を望める高台があります。かつてはその眺めが絶景だったそうです。しかし今はタワーマンションが富士山の前にデーンと居座るように建っていました。「富士山が見える」ということが、かつては贅沢だったのに。この変化に悲しくなりました。都市の発展と景観の保全。その折り合いについて考えさせられる瞬間でもありました。

かつては江戸川越しに富士山を望む絶景だった高台。現在は街の風景に変わりつつありますが、ここに立つと当時の人々が見ていた景色に思いを馳せることができます。


庭園は冬の澄んだ空気の中で、ひっそりと息づいていました。枯れ葉の間からのぞく常緑の木々には、冬ならではの美しさがありました。四季折々の表情を見せる場所として多くの人々を迎えています。

庭師の方が静かに作業をする姿を見かけました。その手際の美しさに、庭を維持する大変さと、この場所が長い時間を超えて生き続けている尊さを感じました。

冬の静寂に包まれる庭園。その中で力強く息づく巨木たちが、長い時を超えた生命の営みを物語ります。


もう一つの施設である戸定歴史館は、残念ながら、この日は休館中でした。でも、その分、次に訪れる楽しみが増えたようにも思います。

戸定邸内を見学していると、ここで暮らしていた人たちの足跡がふわりと感じられるようでした。豪華ではないけれど、その分、手の届きそうな温もりが残っているように思えます。冬の日差しが優しく降り注ぐ中、過去から未来へと繋がる流れを感じながら、そのひとときをゆっくり味わいました。戸定邸で過ごす時間は、ただの観光ではなく、心に残る貴重な体験でした。この場所で感じた温もりや歴史を、皆さんにもぜひ感じていただきたいと思います。

また、私が訪れた際には、施設案内の資料や写真の撮影許可を得た上で、この記事を執筆しました。これらの情報をもとに、少しでも戸定邸の魅力が伝われば嬉しいです。

冬の日差しが静かに降り注ぐ戸定邸。時間が穏やかに流れる場所で、過去と未来が交わるひとときを味わいました。



このような静かな美しさを持つ場所や、過去と現在が交錯する空間には、特別な魅力があると感じます。私自身、美術館や庭園を巡る中で、この魅力をもっと深く理解し、感じ取る方法を学んできました。もし、美術館巡りに興味があれば、私の電子書籍『最高の美術館の楽しみ方』で、より豊かな体験をするためのヒントをお伝えしています。

※ 参考資料
この記事では、『戸定歴史館施設案内』を参考にしています。

すべての写真は撮影許可の範囲内で使用しています。


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