店主と、本のある暮らし December 2023
こんにちは。いどうほんやKOKOです。
Instagramにて連載中の、【店主と、本のある暮らし】を月ごとにまとめ、投稿しています。
本との出会いや、交流のきっかけになればとても嬉しいです。
アナベルとふしぎなけいと
December 4, 2023
9歳と5歳の姉弟が、最近そろって気に入っている絵本があります。
それは、『アナベルとふしぎなけいと』です。
冬のあるつめたい午後、アナベルが見つけたのは、色とりどりの毛糸が入った箱でした。
アナベルは、その毛糸でいろいろなものを編んでゆきます。
不思議な箱やいけ好かない王子など、おとぎ話のようなレトロ要素が散りばめられつつも、モダンで洒落た世界観のこの絵本。
長女は、アナベルが住むまちの変化やその色づかいに魅せられ、長男は王子が髭を震わすシーンが面白くて仕方がない様子です。
興味深かったのは、読み聞かせの後、5歳の長男の質問やつぶやきが止まらないことでした。
「あれはどういうことなのだろう?」
「もしこうだったらこうなっていたかもしれないよね!」
「これは考えても何が本当かわからない……。」
布団の中で、舌足らずの可愛い声がぶつぶつ言っています。
そうか、不思議な話に出くわして、あれこれ考えるのを楽しんでいるのだな。
子どもは、絵本の中の世界で遊び、よく見て感じていますね。
着眼点の鋭さにハッとします。
雪の季節にもぴったりな、素敵な絵本です。
ぜひ、お手に取ってみてください!
***
『アナベルとふしぎなけいと』
文:マック・バーネット
絵:ジョン・クラッセン
訳:なかがわ ちひろ
発行:あすなろ書房 2012年初版
まどからおくりもの
December 7, 2023
多くの人に慕われている有名人なのに、多くの謎に包まれた人物、サンタさん。
家庭によって、語られるサンタ像は少しずつ違います。
クリスマス絵本もすてきなものがたくさんありますが、サンタさんの絵本を選ぶことには、慎重になります。
ただ、わたしが慎重になったところで、子どもたちは幼稚園や保育園などで、いろいろなサンタ絵本を読んできますし、クリスマス会にはサンタさんが来たりもしますよね。
子どもたちはというと、そのどれもを受け入れているように思います。
それほど混乱はしないみたい。
子どもたちは、物語を楽しむことが上手です。
でも、いくら大丈夫と言われても、おすすめだと言われても、ためらいを感じるのなら、読まなくていいのです。
絵本は、気がのらないものを選ばないことも大事!
ちなみに、サンタさんが出てこないクリスマス絵本も、たくさんあります。
(リールでは「クリスマスツリーの絵本」もご紹介しているので、覗いてみてくださいね!)
そんなわたしがご紹介する、サンタ絵本。
『まどからおくりもの』は、ヘリコプターに乗ったサンタさんらしき人物が、窓からプレゼントを放り込んでいきます。
あれれ?な展開。
ゆる〜いサンタと予想外の展開に、2、3歳から楽しめる仕掛け絵本です。
クリスマス、ゆる〜く楽しく過ごしましょう!
***
『まどからおくりもの』
作・絵:五味 太郎
発行:偕成社 1983年初版
赤いけいとでつながって
December 9, 2023
相手のことが大好きなのに、ハッピーになることを思い描いていたのに、なぜだかすれ違ったり、もつれたりすることってありますよね。
友達同士でも、恋人同士でも、親子同士でも。
繋がった糸を、乱暴に引っ張りあってしまう。
心情としては……
どうしてわかってくれないの!わたしはこんなに思っているのに!!
そんなところでしょうか。
いろいろ経験して、学んで、でもまた失敗して。
いい塩梅を見つけられるようになったらいいな。
時間と距離が、心を育むこともあるのですよね。
ドキドキするけれど、読み終わったあとは、ほっとした気持ちになれる絵本です。
ケンカしちゃったときにも、ぜひ読んでみてください。
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『赤いけいとでつながって』
文:リサ・モーザー
絵:オルガ・デミドヴァ
訳:よしい かずみ
発行:BL出版 2023年初版
サンタさん
December 10, 2023
サンタさんの絵本をもう一つ。
2020年に刊行された、長尾玲子さんのクリスマスの刺繍絵本『サンタさん』は、よく知られるサンタさんとはちょっと違います。
このサンタさん、はなちゃんという、たった1人の子どもにプレゼントを届けるためだけに、春から準備をして、山越え海越え、長い道のりを進んで行くのです。
サンタさんといえば、世界中の子どもたちにプレゼントを届けるというイメージがありますよね。
それが、どうして1人だけになのか。
福音館書店のwebマガジン「ふくふく本棚」に、長尾さんのインタビュー記事が載っているのですが、それを読んで胸が熱くなりました。
ぜひ、全文をお読みいただければと思うのですが、大人にとっては「みんなのサンタさん」が当たり前でも、「子どもにとっては『自分のところに来てくれるサンタさん』が全て」と、長尾さんはおっしゃっています。
確かに、そうですよね!
サンタさんから受け取った愛情が、世界中の子どもたち何億人分の1の愛情だなんて、感じたことがあるでしょうか。
お子さんが何人かいらっしゃる親御さんにとっては、「1人だけに届けるお話か……」と感じられるかもしれませんが、長尾さんの想いを知れば、きっとすぐに、宝物の絵本に変わるはず。
これは、まぎれもなく本当のお話だ、と。
わたしもその1人です。
ふと、いつも何事にも、100%の情熱で取り組む友人の顔が思い浮かびました。
きっと彼女も、サンタさんに違いありません。
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『サンタさん』
作:長尾 玲子
発行:福音館書店 2020年初版
わたしはしらない
December 12, 2023
わたしが本屋さんや図書館が好きだと思う理由の一つに、たくさんの本を前に「世の中知らないことだらけだ」と立ち尽くすことができる、というものがあります。
小学6年生の頃、学校行事でヘリコプターの遊覧体験をしたのですが、そのときの感覚にも似ています。
ヘリコプターの窓から見下ろした自分の町は、まるで博物館のジオラマのようで、それを眺めているうちに「なるほど!なんとかなりそう」と漠然と思ったものです。
比喩ではなく、本当の意味での「俯瞰」を経験できたことは、とても貴重でした。
俯瞰すると、「これが全てではない」ということに、当たり前に気付かされます。
知らないことがある(むしろ知らないことばかり)と思うときの感覚が、わたしは好きです。
なぜだか、安心するのですよね。
もちろん、知ろうと行動するモチベーションにもなりますが、いろいろなものから少し距離を取ることができ、ゆとりが生まれる気がします。
そんな感覚を、手のひらで味わえる絵本があります。
ぜひお手に取ってみてください。
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『わたしはしらない』
作・絵:まつむら まいこ
発売:果林社 2023年初版
絵本のお菓子
December 16, 2023
憧れの世界が目の前に現れたら……
そんな夢のようなレシピが、ここにあります。
『もりのおきのおちゃかいへ』のタルトや『モチモチの木』のとちもちなどの再現レシピから、『わたしのワンピース』のアイシングクッキーなど、物語をイメージしたレシピまで!
眺める楽しみと、作る楽しみと、食べる楽しみと……
楽しみしかない!
実は、絵本や物語を再現したレシピ集は、他にもいろいろ出版されています。
好きな物語が載っているかどうかや、作りやすさなど、好みのものを探すのもわくわくします。
『絵本のお菓子』は、大人っぽい装丁に一目惚れの一冊!
キッチンに飾っておくのも、いかがでしょうか?
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『絵本のお菓子』
作:太田 さちか
発行:マイルスタッフ 2021年初版
ねこのピート だいすきなしろいくつ
December 21, 2023
今年初めに、お客さまから「かなりおすすめ!」と教えていただいた『ねこのピート だいすきなしろいくつ』。
2013年に出版されたとても有名な絵本ですが、実は読んだことがありませんでした。
さっそく読んでみて、「これは、かなりさいこう!!」とお気に入りに。
店頭に置いていると、保育園で読んだ!という子がいたり、発表会でやった!という子がいたり、歌もすっかり覚えている子もいて、大人気ぶりが伺えます。
アメリカでは作者のエリックさんとジェームズさんのお二人が、日本では訳者の大友さんが絵本ライブをされていて、YouTubeには動画もアップされています。
真っ白な靴が汚れてしまっても、「かなりさいこう!」と、どこまでもポジティブなピート。
もっとも、「汚れ」だなんて思ってもいないのでしょう。
物事をどう捉えるかって、大切ですよね。
でもわたしは、お気に入りのぬいぐるみに鼻血がついてしまって、思わず涙をこぼすあの子も、
新しいコートにブランコのサビがついてしまってしょんぼりするあの子も、好きです。
(そうです、うちの子たちです。)
そういう気持ちも、大切にしてあげたい。
そんなときは、「鼻血もサビも落とせる!まかせろ!」と、ピートとは別の意味で汚れに寛大な、ポジティブ母ちゃんになります。
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『ねこのピート だいすきなしろいくつ』
作:エリック・リトウィン
絵:ジェームス・ディーン
訳:大友 剛
文字画:長谷川 義史
発売:ひさかたチャイルド 2013年初版
てぶくろ
December 24, 2023
この季節に読みたくなる絵本『てぶくろ』。
「くいしんぼねずみ」や「おしゃれぎつね」など、動物たちが名乗る二つ名が印象的で、ストーリーも軽快で覚えやすいので、子どもたちもすっかり暗記しています。
原文を読んだことはありませんが、それでも、訳の素晴らしさを思わずにはいられません。
ときどき、電気を消した布団の中で、寝かしつけのお話として聞かせることもあるのですが、ささいな言い回しの違いに敏感に反応して「ちがうよ!」と指摘されてしまうので、寝かしつけどころではなくなってしまいます。
そして、子どもたちの二つ名を考えたりして……。
自分ならどんなふうに名乗ろうかな。
「のんびり本屋」「マイペース母ちゃん」「ずぼら人間よ!」
……なんて言ったら、手袋の中には入れてくれなさそうですね。
おじいさんの皮の手袋も、いい味を出しています。
絵本にはおじいさんの姿は少しもでてきませんが、皮の手袋を履いて、犬を連れているおじいさんの姿が、ぼんやり頭の中に浮かんでくるようです。
あ、てぶくろを「履く」って、北海道の方言なんでしたっけ!
手にはめるってことですよ!
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『てぶくろ』
ウクライナ民話
絵:エウゲーニー・M・ラチョフ
訳:うちだ りさこ
発行:福音館書店 1965年初版
すいかのたね
December 26, 2023
今年一年を振り返るこの季節、思いがけず、スイカのお便りが届きました。
スイカといえば、夏に親戚が集まって、みんなでキャンプをした時のことが思い浮かびます。
北海道もとても暑く、大変な夏でした。
日中は暑さに大人も子どももへとへとで、楽しみに準備していたスイカ割りもままならないほどに。
その日は断念し、翌朝早くに行ったのですが、朝も暑かったなあ!
でも、さすがはスイカ!!みずみずしくて美味しくて、体がシャキッとしました。
そんな夏の日をありありと思い起こさせてくれた、このリアルな表紙。
作者の沈丁花さんが「保育園をブランディングする」という学校の課題の中で、アイテムのひとつとして制作したのが、この、地元神奈川県特産のスイカの絵本です。
すいかのたねを探すという絵探し絵本なのですが、かんたんかんたん!と思っていたら、終盤でまんまとやられました。
もう見つけられないかと途方に暮れていた矢先に目に飛び込んできたのは、今までの苦労が嘘のようにそこだけ光り輝く、見紛う方なきすいかのたね。
我が子も「あった!!」と得意になって、父親が帰宅するや否や「これやってみてほしい!!」と差し出していました。
冬休み、また会える親戚のみんなにも、見せてあげたいなと思います。
こちらの絵本、お取り扱い店舗が限られております。
いどうほんやKOKOの店頭で見つけたら、ぜひお手にとってみて下さいね!
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『すいかのたね』
作・絵:沈丁花 かおる @kaorujinchoge
発行:かもめ書房 2023年初版
こたつ
December 29, 2023
北海道の家庭では、あまり馴染みのない文化、「こたつ」。
でも、家族団欒の風景は同じです。
まるで、天井の照明器具に変身して、そこから見下ろしているかのような構図のこの絵本。
日本の年越しの特別なひとときを、じんわりと暖かく浮かび上がらせます。
ああでも、また馴染みのない文化を発見してしまいました。
元日の朝にお節をいただく文化です。
北海道では、お節も大晦日の夜に食べちゃうことが多いですよね?
それも、「お節」と呼んで良いのかどうかも迷う、独特のご馳走というか……。
わたしの実家では、大晦日の夕食にお節のようなご馳走(と、具沢山のけんちん汁!)を、お夜食に文字どおり年越し蕎麦をいただいていました。
そして、元日の朝はお雑煮です。
そんな、それぞれの「我が家の年越し」の話題で盛り上がること請け合いの絵本、団欒のひとときにいかがでしょうか。
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『こたつ』
作:麻生 知子
発行:福音館書店 2020年初版