退職して慶應大学院経済学研究科に合格しましたー試験内容や参考書について
Hondyです。久しぶりの投稿になります。
今回は社会人から慶應大学院経済学研究科に合格したので、そこまでの経緯や実際の試験についてを書いていきます。
これから学生や社会人で経済学修士を目指す人に役に立てば幸いです。前半は修士受験自体の進学理由やスケジュール、後半で慶應大学に絞った試験内容、準備内容、実際の面接などを記載しています。
<経済学修士への進学について>
(筆者のバックグラウンド)
慶應義塾大学の経済学部を卒業。その後新卒でIT企業営業職へ就職。
(そもそもなぜ進学しようと思ったか)
仕事とスキル面のミスマッチを感じたからです。また、自分の中に学術研究は結構楽しいという思いがありました。経済学や英語という自分のスキルをもっと活かして伸ばしたい、人生の挑戦をしたい、自分だけにできる仕事をしたい。そんな想いで、IT企業営業職を退職し進学することを決めました。
受験校について
自分の受験大学は母校の慶應と、東大の経済学研究科の2つです。慶應は9月と4月入学が選べるのですが、東大の結果発表が9月末なので4月入学を選びました。
そのほかでは、関東の方なら早稲田や一橋、関西なら京大、阪大、神戸大あたりが人気とのこと。東大は社会人枠があったので、社会人歴が長かったり、退職しない場合は利用するといいかなと思います。
また、データ分析や予測をしたいなら東大や東工大の経営工学もいいと先生に薦められたので、数学に自信があれば検討してもいいと思います。
準備期間
情報収集も含めて4ヶ月間。慶應用の本格的な勉強期間としてはTOEFL対策が2週間、出願準備が2週間、試験対策が1ヶ月半の合計2ヶ月半ほど。
スケジュール
3月 情報収集(この時期はほぼ仕事)
4月 勉強開始(&仕事の引き継ぎ)
5月 退職して本格的に勉強開始
5月中旬 TOEFL受験
6月頭 慶應出願
6月中旬 試験勉強2週間(並行して東大出願準備)
7月9日、10日 慶應1、2次試験(東大出願も同時期)
7月15日 慶應合格発表
<慶應大学院経済学研究科について>
1次試験出題科目
過去4年ほどを分析すると以下のようになっているようです。
ー必ず出る科目
1 ミクロ経済学
2 マクロ経済学
3 計量経済学
4 経済史
5 マルクス経済学
6 経済発展論
ーよく出る科目
7 応用ミクロ経済学(環境経済学や経済地理学など)
8 金融論(株式、ポートフォリオ計算など)
9 労働経済学
試験では分野ごとに大問が合計7つほど出題され、そのうち2つを選択して解答します。必ず出る6つの科目のうちで得意なもの2つを選んで勉強すればいいです。自分の場合はミクロとマクロを勉強しました。本番では応用ミクロも出たので、ミクロと応用ミクロの経済地理学の2つで受験しました。
準備したこと
1 TOEFL
TOEFLについては慶應、東大両方で必要であったので、出願の2週間前には受験をするようにしました。80点以上を目標にして、勉強期間は1~2週間ほどでした。
2年前の留学時には86点を取れていたが外資系にもかかわらず社会人の間ほとんど英語を使わなかったので、その取り戻しも兼ねて過去問メインで取り組みました。
結果85/120 Reading25 Listening22 Speaking18 Writing20
留学時からSpeakingは21から18に、Writing23から20に3点ずつ下がってしまったのですが、なんとか過去問演習で点数をキープできました。
具体的な準備
Reading 問題を先に読んで、重要な接続詞の周りだけを飛ばし読みして答えることに慣れるようにする。大問当たりの時間を30分から18分くらいに縮める。
Listening lectureパートが苦手だったのでlectureの特に馴染みのない生物、考古学、心理系を選んで演習。ノートテイキングは正答率の安定のためにおすすめ。
SpeakingとWriting 回答の型に当てはめて時間内に答えられるようになるまで演習。
2 1次試験対策と使用参考書
ここではミクロ、マクロ経済学について話します。マクロの過去問をみた限り、自分が慶應の3-4年生の頃に受講したマクロ経済学中級の授業と似通っていたので、他の問題も慶應での授業の中級レベルの内容に準拠していると推測しました。そのため、ミクロについてもミクロ経済学中級の公開シラバスも参考にしながら出題範囲や教科書を選んで勉強しました。
ミクロ経済学の勉強について
ミクロ経済学の力/ミクロ経済学の技
出版者 : 日本評論社
出版年 : 2014/ 2018
著者 : 神取道宏
東大の有名な先生。ミクロ経済学の力で基礎の理解をし、ミクロ経済学の技で問題演習をできる。技の本には用語の確認ページがあるので、ワルラス均衡のような経済用語の定義をノートに書き出すと理解が深まる。また、厚生経済学の第一、第二定理の証明が丁寧なので、ここをしっかり説明できるようにする。
ミクロ経済学演習 第2版
出版者 : 東京大学出版会
出版年 : 2018/09/27
著者: 奥野 正寛; 猪野 弘明; 井上 朋紀
こちらも東大の先生。慶應の4つあるミクロ経済学中級の授業のうち2つがこちらを参考書として載せていたが、実際ここの問題と似ている問題が出題されてたので良い。神取先生の本で足りなかった外部性、公共財、ゲーム理論などの問題が充実。
入門ミクロ経済学(ヴァリアン)
出版者 : 勁草書房 : オータス研究所
出版年 : 2015.8
著者 : ハル・R・ヴァリアン著 ; 大住栄治 [ほか] 訳
海外の大学で広く使われている教科書。数式はあまりなく、丁寧に記載されているので問題を解くためというより、概念や定義についての理解が深める目的で使うのが良いかも。
マクロ経済学について
マクロ経済学/マクロ経済動学
著者 前田康男
それぞれ著者の担当する慶應経済学部3-4年生向けのマクロ経済学中級の春、秋学期のテキストで、ここの練習問題と試験問題が類似している。特に、マクロ経済動学の第一章ソローモデルの部分がよく出ているので、ここを積極的に勉強するのはおすすめ。入手が難しいのが難点。
動学マクロ経済学へのいざない
出版者 : 日本評論社
出版年 2020/3/24
著者 蓮見 亮
少し別の角度で同じモデルを見ることは理解を深めるのに良い。こちらではマクロ経済動学で紹介したソローモデルからニューケインジアンまでをより丁寧に数式展開しているので、前田より理解しやすい。
3 研究計画
形式:A4用紙2枚
自分は1週間でやりましたが、もっと時間かけられるならかけたかったです。短くまとめるのに苦労しました。
ポイント:
面接を踏まえると、ここでは数学的に精緻なものを用意するというよりは、
過去研究についてはしっかりと最新の主要な論文を含む2-3本を読めているか
論理的に一貫しているか
研究室の選択と研究計画との整合性
などが見られているのでは、と推測してます。先生は主要な論文はほとんどご存知なので、適当なことを書かないよう基本的な単語や定理は論文の中でどう使われているかを押さえた上で用いて、指摘されても大丈夫なようにしておくと良いです。
テーマは希望の先生の研究分野と過去勉強したことのある内容をもとに選びました。慶應の場合は学校側が事前に研究室の先生に連絡を取るように薦めており、実際リストに載っていた先生に連絡をとったところ、一人目、二人目の先生は受け入れが今できないとのことで、三人目の先生で受け入れ大丈夫ですよとなりましたので、早めにするほうがいいと思います。
実際の2022年度の一次試験
長くなるので、別記事にします。
二次試験について
二次試験は面接で、その受験者は一次試験の日の夜19時にオンラインで発表され、翌日実施される。(当日発表はめっちゃ怖い)およそ100人が1次試験を受け、その合格者+1次試験免除者の合計50人ほどが2次試験に進んだ。(内訳は不明)2次試験合格者は例年30人から40人程度とのこと。
形式:面接は20分で、試験官は志望分野の担当教授3名が担当し、受験者は一人で質問に答えていく。受験者は約6つの部屋(おそらく試験分野と同じ)、一部屋にその分野を志望した6-8人ごとが割り当てられ、順番に入室していく。
面接内容:受けた質問を列挙していきます。まずは基本事項から。
Q1 受験番号と名前
Q2 本研究科の志望動機と研究計画について
志望動機は、過去、現在、未来の流れで話すようにしました。研究計画については、テーマは〇〇で、先行研究ではこんな研究がされてきたが、△△が欠けていたので、それを□□という手法でモデル化することで、こういった影響を分析する、という型で説明しました。
ここからは研究計画についての質問。
Q3 研究計画で用いている手法の〇〇の定義を教えてくれ。△△とどう異なるのか説明して。
Q4 先行研究に〇〇は記載があるが、△△の有名な論文を読んではいないのか?
Q5 先行研究と比べてあなたの研究はどんな意義があるか?またその手法は現実的に実現可能か?
Q3は先生も詳しいので結構細かく訊かれました。Q4は素直に読んでいないと答え、ただそのテーマについての別のこれこれと言った論文を読んだ、と答えました。先生から、君のキーワードだと出てこないかもねー、と言われたので、一応面接までに有名な論文をピックアップできるといいと思います。
また、勉強レベルについて訊かれました。
Q6 志望分野関連(数学とゲーム理論)の学習はどの程度までしたか?
Q7 それはどのように、何の教科書で勉強したか?
知識の確認のため、いくつか質問されます。自分はゲーム理論を志望したのでそれらについて訊かれました。(研究計画内でその分野自体の記載が薄かったからかもしれませんが。)
Q8 ナッシュ均衡の定義は?
Q9 ナッシュ均衡は常にパレート効率か?そうでないなら反例を述べよ。
この辺りを問題なく答えると先生も頷いておられたので、合否には重要かもしれないです。この辺りで、結構良い感じかなという雰囲気になり、先生からここにいる3人があなたが入ったら共同体制で指導をする教授であると伝えられ、その後は実際に入学する場合の質問をされました。
Q10 私(志望教授)の研究は確認したか?
Q11 研究分野について(シミュレーションとかなら工学系の研究室もあるが、そちらではなく経済の理論を勉強することで間違いないか?)
Q12 他の大学院も受けているか?
また、自分は博士まで進むと伝えたので、以下も質問されました。
Q13 将来海外の大学院に進むことは考えているか?
以上で終了でした。
総括
受験中はネット上に情報がほとんどなく、また1次試験の合格者数も不明であり、わからないことが多かったので不安でした。また、退職からの受験という背水の陣の中だったので、合格できてよかったです。今後はまた経済学系の投稿も増やせたらと思っています。