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田舎で~本屋営業日記⑨

田舎で~本屋営業日記⑨

昨年の今ごろは、全国的な緊急事態宣言下で、掛川の町は閑散としていた。
幼稚園や各学校も休園休校だったから、当然のこととして子どもたちの声は こだま しない。
レジに座り、いつ来るかも分からないお客様を何十分も何時間も待ち続ける日々を送っていた。
休校で、書店が賑わってるらしい。コロナ需要で本が売れているらしい。そんなニュースも飛び込んで来る。
不安を通り越して、諦めのような心境も沸々と湧いてくるのだった。

そんな時でも、購入が目的ではなくても、理由は何であれ、立ち寄ってくれる方々の存在はとても嬉しかったし、勇気づけられもした。

今でも「町の本屋に来る理由は何でも構わないからね」そう思い乍ら、日々レジで皆さんが来るのを待っている。

一人本屋を始めて1年3か月目に入った。
昨年を振り返って、改めて“千里の道も一歩から”を噛みしめている。
徐々にリピートしてくれる読者は増え、中でも定期購読をしてくれる読者はこの一年で100人に達した。地方の小さな本屋にとって、これは凄いことである。100人ものお客様が毎月(或いは毎週)必ずお店に足を運んでくれるということになる。
実際、走る本屋さんの売上構成の4割強は注文(選書含め)・定期・配達・ECが占めるといった具合である。まさに、常連さんあっての「町の本屋」の様相を呈している。あぁ、俺は、読者であるお客様に本屋をさせて貰っているんだという、純粋に感謝の気持ちで満たされるに至った。いま、本気の感謝でお客様と向き合っている。

企業書店員の時代も、出来うる限り読者の方を向いてきたつもりだけれども、まだまだだったと思う。
注文や定期購読は大きな書店においては売上構成の一割にも満たないし、ともすれば面倒でトラブルに繋がりねない案件と心のどこかで思っていた。

お客様(読者)を「大事」に想う。
本屋としての、夢や希望はあるけれどもあまり先のことは考えないで、日々を大切に過ごしていこう。

いま、出版業界のシステムは大きく変わりつつある。身を持って感じている。町の本屋として、その流れに対応出来る準備をして行こう。


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