【人生を変えた1000時冊の本棚シリーズ1】
『祝祭』❽/全8回
エピローグ〜祝祭
いよいよポリコレの幕が上がる。
ステージの裏側でドキドキと胸が高鳴るのを感じながら、私は深呼吸を繰り返していた。ショーが始まる瞬間を待ちながら、緊張と期待が胸の奥深くまで染み渡り、そのどちらもが私の心を支配していた。
出演者たちも同じように緊張している様子が伝わってきた。
背中を押し合って励まし合う姿や、最後の確認をしながら衣装を整える姿が見える。みんながこの瞬間に全力を注いできた。そんな思いが会場全体を包んでいた。
「大丈夫、みんな素敵だよ」と私は小さな声で出演者たちに呼びかけた。
笑顔が返ってきて、少しだけ緊張がほぐれたように見えた。
会場にはジャズの軽やかなリズムが流れ、観客たちの期待と興奮が交じり合うざわめきを一層引き立てていた。
ステージの中央に設置された巨大なスクリーンが色鮮やかな映像を映し出し、会場全体が幻想的な雰囲気に包まれている。
会場に流れている音楽がいつの間にか一際大きくなったかと思うと、暗転と同時にフッと消える。
一瞬の空白。
いよいよだわ……
そう思うと同時に、真っ暗闇の中、私たちの晴れ舞台を彩る音楽が最高のタイミングで流れだす。
湧き上がる拍手と歓声。
照明が一斉にバッと点灯し、眩しい光のシャワーがステージを包み込む。
そして幕が静かに上がり始める。
ステージの幕が上がる瞬間、私は過去の自分を振り返った。
失敗や挫折、そしてそのたびに立ち上がってきた経験が、この瞬間のためにあったと感じた。かつての私は、弱さや不安に打ちひしがれていたが、今は違う。
「世の中には悲しいことや悪いことばかりじゃない。あなたにもできることがある」
どこからか確かに声が聴こえたような気がした。
私の視界に飛び込んできたのは、煌びやかな光と出演者たちの姿だった。
彼らは自信に満ちた表情でランウェイを歩き始めた。
観客の拍手と歓声が会場に響き渡り、鳴り止まない。
観客席からは「素敵!」という声が聞こえる。
みんながこの瞬間を楽しんでいるのが伝わってくる。
まるで一つの大きな家族のように、会場全体が一体となっていた。
胸が熱くなり、涙が溢れそうになる。
私はその瞬間、これまでの努力が報われたことを実感し、言葉にできない感動に包まれた。
眩しい光が目に飛び込み、一瞬視界が真っ白になる。
ステージの向こうから聞こえてくる歓声と拍手、そのすべてが私の胸に響いた。
おしまい。