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読書メモ:「たま」という船に乗っていた さよなら人類編

そういえばこれまでコミックの紹介ってしてこなかったですね。そこそこ読んではいるんだけれども続き物のが多いので巻ごとの紹介もどうかと思ってしていませんでした。続きを待つのが辛いので基本的には完結した漫画を読むのが習わしです。

いかすバンド天国(通称イカ天)は毎週楽しみに見ていた番組でした。たまが出たのは89年ですか。時間も、エネルギーもあった10代後半の私は夜シラフで見ていたんだな。今思うと不思議だな。洋楽をやや斜に構えてマニアックに聴いていた私は、思春期なりの幼稚さで日本のバンドやバンドブームを小馬鹿にしていたのですが、そんな私がなぜ楽しみに見ていたかというと、小馬鹿にするために、というかバラエティとしてみていたのです。ほとんどの人がそうだったのではないかな。音楽番組というよりはオーディションバラエティという感じだったと思う。で、音楽のジャンルだけではなくイロモノ、本格派、破天荒、とか個性あふれるバンドが毎週出演し、日本にはこんなにバンドがたくさんあるんだなあと驚きつつ見ていた。バンドをやっている同級生とかは、知り合いの知り合いがオーディションで落ちたとか、あいつは番組を狙うために違う子と組んだとか教室の隅っこで話していたなあ。

番組が放送回を重ねると、バンドブームというかイカ天ブームとなり、番組受けするビジュアルや演出、トークなどがなんとなくできてきた。当初バンドマン的不良感というかアウトロー的な感じが多かったけど、達者でこなれたバンドが増えて、やや苦々しく思っていた。お相撲さんのインタビューも当時はおしなべて無口でしたが、同じような要求を勝手にしていたのですね。同調圧力だ。ただ、深夜とはいえ芸人ではないがお笑い系司会者三宅裕司がバラエティのいじりを不良っぽい青年にぶつけシロートで可愛い感じになったり噛み合わなかったりという部分も一つの面白みだったので、こなれちゃうとつまんないなあ、と特に陽キャラが出ると苦々しく見ていた。勝手なもんだ。

そんな中で、ものすごくコンセプチャルな音楽と佇まいで見た目も音楽性も喋りもコーディネートが抜群なのに全くあざとさが感じられない人たちがいきなり現れて、まるで事故現場を見るように凍りついた記憶が確かにある。それが「たま」だった。雑にいえば「やばすぎ!」なのが「キター!」という感じだ。もう釘付け。音楽が素晴らしいのか、パッと言葉にならず、なんなのかわからないけど情緒がピュアにほとばしっていて、気持ちをもっていかれましたね。

この『さよなら人類編』はたまの結成からイカ天までのストーリーを「ランニング」の石川さんが綴った書籍がこの度コミック版になったものです。たくさんの人が行ったりきたり、当時の、なんらかを志すたまご青年のごちゃごちゃした人間関係が交差する。バンドのコンセプトや目指すものに向かうというよりは、個を尊重したフラットな関係、個同士でコラボしているような関係に感じられるが、そういう意味では今っぽいのかもしれない。そういう種明かしとしても楽しめた。色々思い出しますね。当時私は高校生で、学校は違うが友人3人で自転車登校をしていたのですが、そのうちの一人が担当編集者平田氏である。同じものを同じ時に見て感想など話していたわけで。30年以上たった今このような作品が出るって、やっぱりあざとくないね〜。

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カバー画像:船に乗って演奏しているバンドマンなんだけど、みんなギターなんだな?ドラマー、ドラムセットの前にいないか?・・その前に、中央の人、ギターを持ちつつ、太鼓をぶら下げているではないか。石川さんスタイル。どう演奏するかは全くわからないがなんという偶然。


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