ファックミーファックミーファックミーただそれだけのこと
サラリーマン生活が2週間目に突入。初日にボケっとシュレッダーを眺めながら腰砕けにマウスふりふりするだけで一日を潰していたのがウソみたいに忙しい。電話応対、見積もり、メール、外周りで一日がホンマに秒で終わる。特に今日は新規問い合わせの電話が鳴り止まず忙しかった。奇声発する5秒前ドットドットスラッシュいぇーいめっちゃホリデー状態。辛い現状だがニートに戻りたいとは不思議と思わない。本当に。だって暇ニートは結構早々に飽きてしまうって事に気付いてしまったから。忙しニートならなってもいいかな!ブックオフに足繁く通うのもニート後半の時期は作業になりつつあった気がする。今では生活の合間を縫って足繁く通っているからより貴重な来店体験になって恍惚。頻度は変われど足繁く通うのは変わらない。変えない。
そして働いてみて再確認させられる自分のポンコツっぷり。電話に出ればしどろもどろ、ビビって声小さくなって聞き返されて更にしどろもどろのワンループ。ビジネスメールの文言もカタコトカタコトで1通送るのも先輩に確認して貰ってから送るまで修正の繰り返しでトータルでヘタしたら20分くらいかかる。馬がぱかぱか走ってるようなタイピング音を響かせながら「めっちゃ僕ちゃん仕事してんねんで?」みたいな顔でキーボードを叩くもほぼ打ち間違えでデリートキーを押す回数の方がとても多い。媚びるような薄っぺらい愛想笑いだけではどうにもならないパソコン作業という現実。
自分の苦手な部分を認めていく事が年をとるに連れて増えたが、もしかしたら同世代はもっと早くから周りを見て我が振り直せでアップデートをこなしているんだろうなと想像する。だってなんかしっかりしてるもん。TVの街頭インタビューに映る人々とか。まともそうな見た目の人で自分みたいにいっつもお酒飲んでえへへーって雰囲気すら纏わせてる人いない。同世代の周りと比べて自分は全然ちゃんと出来てない。通勤中に女子高生の生脚こっそりガン見しちゃうし。マミーごめん。単純にこれは私自身の問題だと思う。行き当たりばったり生きてきた結果。今はそんな自分自身と向き合う時なのでしょう。
昔先輩に注意された様々な事を思い出す「お前は"俺が俺が”がすぎんだよ」ちゃんと言語化して至らない部分を指摘されたのがはじめてで、悔しくもあり腑に落ちる部分も有りで、胸に響いた言葉はその先輩がはじめてだった気がする。結局巡り巡ってその先輩の友人の方と同じ職場で働いてるっていうのがなんだかむず痒い。先輩周辺の方々のアシストで就職が決まった様なものなので世間の狭さをマジに感じる。
激務で思考回路が非常に遅くなり、以上の様なとりとめもない思考の濁流に飲み込まれながら、この煮え切らない感情をどうにかしなければ余計にこんがらがると思い至る。気持ちを切り替えて自分を取り戻したい。コートの右ポケットをまさぐって白い林檎お墨付きの頼りない紐を取り出す。二股に分かれたソレの先端で耳の穴を塞いで自分の好きが詰まっているプレイリストから最近部屋で一人弾き語った歌の原曲を選択する。指紋の跡が残るくらい強く親指を押し当てると目ん玉の後ろ側にアコースティックギターの爪弾きと辿々しく朧げなピアノが響いてくる。寂しげな音の隙間から、か細くも明るい未来が見える。ような気がする。歌い手の未来であり、自分自身の未来でもあるかの様な錯覚、あるいは願い。気付けば懐かしく胸を暖めてくれる思い出が周囲を取り囲み、お気に入りのタオルケットに包まれている時のような安心感をもたらしてくれる。ここが私の帰りたい場所で、帰るべき場所で、生き永らえている理由だったんだと再確認する瞬間。四分に満たない僅かな時間。現実に生きながら音楽を通じて夢を見る。咽び泣くスライドギターが聴こえる頃には自信と元気を取り戻して、だらしない能天気に戻ってしまうのだけど。両方の耳からはそんな相変わらず能天気な自分を変わらず励まし続けてくれる音楽が流れ続けている。
帰りたい場所が見えにくくなって、自分の所在地が不明に思えてしまったらきっと人生は辛い部分にばかりにどんどん目がいって、どん詰まりに思えてしまって途端に生きづらくなる。
ファックミー私を壊してファックミー全部打ち砕いて淡い夢も枯れた恋も真っ暗闇の中で暴れる光の様にアホみたいに抱き合って落ちていくファックミーお前を壊すファックミー全部打ち鳴らして甘い夢も枯れた愛も明る過ぎる街は朝の光の中
音楽に救われたって表現は自分にとって大袈裟ではない。悲しい気持ちと一緒に寄り添ってくれて、怒りを陽性のエネルギーに変換してくれて、言葉にならない感情の混沌を整理する手助けをしてくれて、音楽が無かったらもっと突拍子の無い行動を選択して今以上にもっとどん詰まりな人生だったと思う。いわば防波堤。心の拠り所。
音楽の偉大さに胸を打たれ、生きる活力を取り戻し、それで少しするといつも通り感傷的になったというだけの数時間前の取るに足らない話。犬も食わないけど、やっぱり音楽すげぇ。って気持ちをどうしても今書きたい。
生ぬるい風をこちらに乱暴に飛ばしながら近付いてくる地下鉄車両を伏目がちに見つめながら、そんな事を考えていた。
ただそれだけのこと。