商標とは何か⑤ 商標権侵害の問題点と実際に争った企業例

商標権侵害で問題になりうる点と侵害後の賠償

もとの商標と似ているかどうかが大きく関係する。たとえばビールにライジングサンという商品名を付けるとダメ、日本語訳で「朝日」となり意味がアサヒビールと被るので商標法的にはアウト。また、アメリカの番組企画でダムスターバックスコーヒーという店を出した際も、スタバが許すこともなく閉店させられた。商標法違反に引っ掛かると警告所が届き、損害賠償の支払いや看板・パッケージの総取り換えにつながる。商標権の侵害をしていると、過去の分についても賠償請求される可能性があるため、文句を言われたらやめればいいというだけではすまない。商標については特許庁の特許情報プラットフォームの商標検索で確認できる。また、商標権者から商標を譲り受けたり使用させてもらうといった契約をしたり、権利者がその商標を使っていない場合には「不使用取り消し審判」にかけて相手の商標権を失効させたりできる。        

商標権侵害を争った例

新聞紙の場合、「日本経済新聞出版社」と「日系プレミアシリーズ」は商標だが、署名やキャッチコピーは商標にならない。井上陽水のアルバム名「UNDER THE SUN」が出た際に、このワードを商標登録していた人が損害賠償請求をした事件があったが、これはあくまでCDのタイトルであり商品を選ぶ際の目印ではないとして商標権侵害には当たらないとされた。また、POSという商標が登録されていたが「POS(問題思考システム)実践マニュアル」といった書籍が販売された際も、POSはあくまで内容を示しただけにすぎないとして侵害にはならなかった。本は内容そのものは著作権で守られるがタイトルは守られない。音楽は局の内容や旋律は著作権法で守られているが曲名は守られていない。

司法書士事務所での事例

司法書士は土地の登記などの申請を行う資格業で、主に地域の不動産業者や銀行と仕事をすることが多い。京都のひかり司法書士法人は東京の司法書士法人ひかり法務事務所を商標侵害で訴えた。広域的な事業を行っていたりインターネットを活用した事業があれば、その商圏は全国と見なされるので、被告側の営業地域が異なるので大丈夫だ、という反論も退けられた。

面白い恋人

吉本興業は販売した面白い恋人は、北海道の石屋製菓株式会社の商標登録である白い恋人と問題になった。最終的には両者の和解で終了。一文字違う程度では商標的に問題にならないわけではない、似ていると捉えられた時点で販売製造元が止められるようにもなる。そしてこの商標が似ているかどうかは特許庁の判断と裁判所での判断とでやや基準が異なる。特許庁は商標が登録できるかを問題とし、裁判所は商標が権利侵害になるかを問題とする。そのため過去には特許庁が登録できると判断した事例でも、その後の裁判所では無効になったこともあった。

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