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ワクチンとデータとストーリー

看護実習先の病院からワクチンを打っていない学生は受け容れ拒否すると言われた、という話がコロナ以後は毎年のように盛り上がる。

Twitterでは、ワクチンを打たない学生や打たせない親に対して、論理やデータを使って批判・説得がなされる。

しかし。

人はデータではなくストーリーで動く。

日常診療でも、BMIとか血圧とかLDLとか血糖とか、データを見せて、リスクを示して、だからダイエットしましょう、減塩しましょう、運動しましょうと言っても言っても言い続けても変わらなかった人が、「同僚の奥さんの友人が放置してたら倒れた」というストーリーに触れたことで、行動を変え始める。

ワクチンについて、もし以下のようなストーリーが拡がったらどうか。

私はワクチンを打たずに実習でき、問題なく終えました。ただ、受け持った患者さん一人が感染して重症化しました。幸い一命はとりとめました。
私からの感染と決まったわけではない、ご家族の面会もあったし、指導看護師や介護士さんからかもしれない。そう頭では分かっていても、もしかしたら、もしかしたら、と考えて、眠れない夜を重ねることになりました。
こんな想いをするくらいなら、打っておけばよかったと後悔しています。
今日、3回目を打ちます。

これはもちろん創作話だし、ワクチンを打ってもらうためとはいえ人を動かすのに創作を用いるのはデマ屋となにも変わらない。
ただ、データや論理で批判したり、説き伏せたりという反応を見ると、それは「北風と太陽」の北風になっているのではないかと思ってしまう。

いま必要なのは、ここに書いたような創作ではなく、実際に「打っておけば良かった」と大なり小なり後悔している看護師さんの声ではなかろうか。

いわゆる「反ワクチン」が拡散されやすいのは、副作用の話題など「打たなければ良かった」というストーリーが盛り込まれることが多いから。

このストーリーに対抗できるのは、データや論理ではなく、「打っておけば良かった」というストーリーなのだ。

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