マンガ家さん100人にインタビューしながら創作支援サービスを成長させていった話
こんにちは。ブックリスタの尾崎(おざき)です。 新規事業開発を行う部署にいます。
新規事業開発室では、クリエイターの創作活動や企業とのコラボレーションを助けるためのサービスを複数検討しています。クリエイターが唯一無二の世界観を表現し、それによって多くの人が幸せになるサイクルを実現するプラットフォームや、コラボレーションが活発化するコミュニケーションツールの開発を目指しています。
現在、検討 / 開発を進めているサービスのひとつに、XやInstagram、ブログなどで活躍するマンガ家の創作支援サービス「YOMcoma(よむこま)」があります。今回は、YOMcomaにフォーカスして、どのようにマンガ家さんとサービスを成長させたか、プロダクト開発を行っているかについて紹介します。
YOMcoma(よむこま)とは?
SNSやブログなどで日々投稿されているショートマンガ作家向け創作支援サービスです。マンガ家さんによっては毎日、毎週、さまざまな場所で作品を発表しており、中には1,000を越える(!)作品を保有している方もいます🎨
新作を発表したり瞬間風速的にバズったりすると読まれる機会が増えますが、2〜3日以上経過すると過去作品はなかなか読まれづらいという課題があります。また、ThreadsやTikTok、YouTubeショート、Blueskyなど、読まれる場所も多様化しており、投稿作業や収益化作業など創作以外の作業に時間がかかっている、という現状があります。
そこで、過去作品もまんべんなくじっくり読まれやすく、SNS投稿や収益化をサポートするサービスとして、YOMcomaを運営しております。
▼マンガ家向けページ
作品を投稿 / ストックするだけでなく、シリーズごとに作品を整理したり、SNSに合わせて画像調整や静止画像の動画化もできます。
▼読者向けアプリ
好きなマンガ家をフォローしたり、過去作品をまとめ読みしたりできます。紙のコミックを購入してマンガ家を応援することも可能です。
YOMcomaが1年間で提供・実験してきたもの
2023年3月にβ版をリリースして以降、さまざまな機能の開発 / テストに取り組んできました。クリエイターの創作活動に伴走する機能になりうるか、私たちのプロダクトの方向性が正しいかを検証しています🧑💻
β版リリースから1週間で投稿作品数が15,000作品を越え、順調な滑り出しだったものの、TwitterからXにサービス変更しAPIが有料化し、アカウントや作品画像の連携などマンガ家さんにとって大きなメリットとなっていた仕組みが使えなくなってしまいました。
そこで、2023年4月以降は、生成AIによる投稿サポートをはじめ、創作仲間のチャットや静止画像の動画化、Bluesky / Threadsなど新しいSNSへの対応など、様々な体験の提供を試みてきました。
2023年3月24日 YOMcoma β版リリース(プレスリリース)
2023年3月31日 投稿作品15,000作品突破(プレスリリース)
2023年4月 生成AIを使ったサポート機能リリース(プレスリリース)
2023年5月 読まれた回数300万回突破(プレスリリース)
2023年6月 初の収益化企画「YOMcomaコミック」リリース(プレスリリース)
2023年7月 グループで創作を頑張るチャット機能リリース(現在はクローズ)、アンソロジー企画リリース
2023年10月 マンガ動画化機能リリース(プレスリリース)、試し読み機能リリース、読まれた回数1,500万回突破
2023年12月 人気マンガ家が登壇するリアルイベントを初開催(プレスリリース)
2024年1月 クリエイターと協働してカプセルトイ企画をスタート
2024年2月 Blueskyに対応(X、Threads対応機能に追加)(プレスリリース)
2024年3月 姉妹サービス「Creator Profile β版」リリース
2024年4月 ウェブでショートマンガをまとめ読みできる機能リリース
Xで活躍するマンガ家さんに、YOMcomaについてのマンガも描いていただきました!
「Xに載せた作品の管理ができること」「過去作品の保管庫として活用できること」「収益化企画を計画していること」などのメリットを、マンガでわかりやすく伝えてもらっています。
淡々と機能を実装してリリースするだけでなく、noteやSNSを通じて新しい体験や機能について日々発信したり、XやInstagramのDMでヒアリングしたり、Google Meetでオンラインインタビューをしたり、マンガ家さんとコミュニケーションをとることを大事にしています。
ちなみにYOMcomaのnoteでは、生成AIを使ったサポート機能や、マンガを動画化できる機能についての記事が伸びる傾向にありました👀
クリエイターを巻き込んでの仮説検証
YOMcomaチームで開発にあたって大切にしているのが、マンガ家の生の体験や反応を元にした仮説探索 / 検証です。具体例を一部ご紹介します💁♀️
①ユーザーインタビュー
β版リリースから約1年間で、マンガ家さん達へのインタビューを100回近く行ってきました。リアルタイムな創作活動の悩みや気になることを収集しながら、お困り事をサービスで肩代わりできないか探索しています。現在は、マンガ家だけでなく、クリエイターと協業する企業の商品企画担当者にも、ヒアリングを行っています。
↓1年間で実施したインタビューのログがこんなにたくさん増えました
↓インタビューで出てきた課題やトピックを言語化・マップ化
↓マンガ家さんにお話を聞く中でいただいたメール
②モックアップによる検証
課題が大まかに見えてきたら、仮説検証に必要な最小限のモックアップをFigmaで作成して、問題解消に寄与しそうか、ユーザーから強く求めるリアクションがあるか、を調べています。
例)創作の目標達成を支援するグループチャット機能
↓Figmaで制作したモックアップを見せながらインタビューを実施したり…
最小限の機能をサイト上に実装して使ってもらうところを観察したりしました。
↓筋良く課題を特定するため、一度のリリースに終わらせず、使われないものは壊す、使われるものは強化する、といった試行錯誤をしています。
↓モックアップに対する反応を集めて整理した例
③手作業による検証
機能をプロダクト上に実装しないで、人間が価値提供したり反応をお伺いすることで、行動やリアクションを観察するMVP制作の手法があります。
例えば、マンガ動画化機能は、コードを書いて実装する前に、弊チームメンバーが手作業でマンガ画像を動画化して、価値を提供するテストをしてみました。実装コストを最小限に抑えつつ、この機能が実際に使われるか、ユーザーにとってのメリットがあるかを検証しました。
作成したマンガ動画を実際にInstagramリールに投稿し、どのようなサムネイルや内容のものが反応が良いかも、実際に観測しました。
かなりの好反応をいただいたため、動画化機能を実装してリリースしたところ、マンガ家さんからいただいた声の一例です。
また、Threads独特の画像横スクロールUIに合わせたマンガの切り出しに価値があるかどうか、弊チームメンバーが手作業で画像を作成したものを提供し、マンガ家さんたちの体験を検証しました。
↓Threads投稿用画像作成を手作業で行った様子
こういった「無駄な実装をはぶいて価値検証をする手法」については、弊チームのデザイナーの登壇スライドで詳しくご紹介していますので、ご興味があればぜひご覧ください。
最新の技術やトレンドを取り入れる
クリエイターの創作活動を取り巻く環境は、リアルタイムで大きく変化していきます。自分達で新しい技術を試し、クリエイターに役立つことがあるか実験することもあります。
↓OpenAIのChatGPTを使ったタイトル・ハッシュタグの提案
↓Bluesky投稿にいち早く対応
クリエイター関連プロダクトの今後の展開は?
YOMcomaに関していうと、2024年度は収益化を軸に、マンガ家と企業の商品企画担当者がスムーズにコミュニケーションできるようにする支援や、マンガ家の作品を紙の冊子に印刷できる「YOMcomaコミック」のパワーアップを目指しています。
YOMcomaはショートマンガに特化したサービスですが、他にも、様々な領域のクリエイターの創作支援やマネタイズに寄与できるものを企画 / 検証しています。
たとえば、xR領域のクリエイターに特化したサービス、イラストレーターや配信者、アニメーターなどのさまざまなクリエイターが自己開示に使えるプロフィールページなど、複数検討を進めています。
また、各領域ごとにプロダクトマネージャー、ディレクター、デザイナー、エンジニアなど3〜4名がチームを組み、週1ペースで新たな仮説検証やリリースが行えるようスピード感を持って議論、言語化を行っています。
最後に
クリエイターと一緒に事業・サービスを成長させる方法やチームでの仮説検証の進め方、リーンスタートアップを参照した事業運営など、気になる方はぜひお話ししましょう!
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