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戯れうたCOMPLEX(18)

さびしいと言えば誰かが優しさを分けてくれてる夜のTL
(2025/01/10)

さびしいと言ったのは、誰だろうか。私だったか、それとも私は「優しさを分け」たのだろうか。ネットの喧騒とは裏腹に、ひとりさびしさを感じてしまうことはないか。文字でレスポンスが返ってきても、その向こうには、確かに誰かがいるのだろうか。これはアプリが反応しているだけではないのか――。

2009年にTwitterとFacebookを始めて以来、私はどっぷりとネットの世界に浸ってきた。今となっては、同窓生や近隣といった「リアル」な知り合いよりも、ネットを介しての「バーチャル」な知り合いの方が多くなった。それでも、「フォロワー」から「友人」にまで格上げできた人は何人もいる。ネットがなかったころ(それを「時代」と言ってしまってもいいのかもしれない)の私には、とても想像は及ばないことだろう。

もっとも、結婚もせず子どももないままにこの年齢を迎えることも想像などしていなかったし、精神疾患の当事者として過ごすことになるのも、思いもよらなかったことだ。

なので、あたかも家族や恋愛感情を詠んだ歌をご覧になった方に事情を話すと、びっくりされることがある。例えばこんな歌。

なぜ君はそんなろくでもないヤツを好きになるんだぼくがいるのに
(2024/10/05)

記憶をたどったとしても、こんな恋情を抱いたことなど、ついぞなかった。かといって、こういう恋をしたかったのかと言えば、そうだとも言い切れない。わからん――。

添い寝してわが子の寝言ふいに聞くその一言に詩心を知る
(2025/01/13)

読んでくださった方に、「実は三歳の息子がいるんです」と言ったら怒られた。そりゃそうだよ。

別に人を煙にまこうとしてこんな歌を詠んでいるのではない。何かしら「普遍的」な感情や、リアリティのある情景を詠めないものかとは思っている。「実際の体験」だけしか詠んではいけないというのは、今のところ聞いたことはないし、それにそうだとしたら、SFやミステリーなどは創作できなくなってしまうだろう。今後はストックしてある「この類」の歌も、適宜紹介してこうと思う次第である。


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しょうじ@マチナカ書房
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