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【レジュメ】宮本輝『流転の海』全巻読書会:第5部『花の回廊』第3章
こんにちは。
『流転の海』第5部『花の回廊』第3章の読書会用のレジュメをお届けします。レジュメとは言え、かなりの「ネタバレ」が含まれますので、読書会のご参加以外の方の閲覧については、それぞれのご判断でお願いいたします。
今回の第3章については、大きく分けて3つの内容で構成されているように思われます。
①蘭月ビルの住人が自死を遂げ、腐乱死体で見つかったこと、
②モータープール(大規模駐車場)事業の展開について、
③徳沢と出会ったことから始まる、上海時代についての述懐、
この辺りがポイントになろうかと思います。
登場人物
徳沢邦之 愛川民衆衆議院議員の私設秘書を名乗る。上海時代の熊吾に恩義を感じている。モータープール事業に協力的。
柳田元雄 モータープール事業の出資者。
桜田ヨシ子 丸尾運送店に雇われている新人の事務員。
丸尾美恵 千代麿と不倫相手の間に産まれた5歳の女児。
金静子 伸仁と香根がよく遊びに行っている、裁縫業をしている女性。
唐木鉄兵 睡眠薬で自死、腐乱死体で発見される。最期に会ったのが伸仁。
上野栄吉 「ラッキー」に雇われているプロのビリヤード師。
「蝋燭の女」 詩集「蝋燭」を売っている女性。
主なポイント
蘭月ビルの真夏の西日は、十歳の伸仁の心身を腐らせる。伸仁には、あの浜辺の太陽のようなものを与えてやらねばならない。いまはそれを最も必要とする年代なのだ(p.142)
房江にも人並の「巣」が必要だ(略)そのような巣を奪い、夜遅くまで働かせ、たったひとりの幼い我が子との触れ合いから遠ざけてしまったのはこの俺だ(p.142)
十を得ようとして、転がり込んできた七や六に見向きもしないのは傲慢というものであろう・・・。恩返しか・・・。あの柳田の言葉は本心なのだ(p.142)
熊吾はそれを無機質な魂を持つものの寂しさを代弁しているような気がした。するとふいに、柳田元雄という人間がわかったような気もした(p.144)
熊吾には、外見からは決して屈強さを感じさせない柳田の内なる芯の強さが見えてきた。だがそれは、見えてくるにしたがって、天涯孤独なひとりぼっちの影をひきずる男の姿へと変わった(p.144)
強大な組織をうしろだてにしてふんぞり返っちょるやつが最も恐れるのは、自分がよるべとするその組織そのものです(p.187)
この人間社会には、いつか語らず恩を返そうとする人が確かにいるのだ、ということがいまの自分に活力をもたらしていると熊吾は思った(p.204)
追記
※10月3日(水)以降、追記がされる場合があります。
今回のレジュメは以上となります。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた。
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