【100分de名著を語ろう】独裁体制から民主主義へ①
こんにちは。
2023年のEテレ「100分de名著」の第一弾は、ジーン・シャープの主著と言える『独裁体制から民主主義へ』です。邦訳は、ちくま学芸文庫で入手できます(ぼくは9日に発注しました)。
今回のシリーズ(1月9日放送開始)についても、毎週木曜の21時から、clubhouseにて「ルーム」を開きますので、遊びにいらしてください。気軽なお話しを楽しみましょう。
以下、放送テキストに沿って「レジュメ」といたします。ご参照くださいますと幸いです。
【はじめに】非暴力に現状打開の希望を託す
「終わりの見えない暴力連鎖」の状況を打開し、「暴力によらずに戦争や様々な抑圧・差別を解消していくにはどうすればよいのか」を示したジーン・シャープの「非暴力論=戦略的非暴力闘争論」。
ガンディー研究を基礎として独自の非暴力論を構築した政治学者。
とりたてて勇敢でも立派でもない「普通の人」が日常生活の延長として平和活動の一翼を担うことを目指したもの。
(平和の)「敵」についてしっかり研究する必要がある。戦略も戦術もない場当たり的な活動が、結果につながりにくいのは当然。
非暴力とは「何もしない」ことではないが、今の自分に無理なくできることから始めればよい。
独裁体制は見かけほど強くない
①「非暴力」の研究に生涯をかけた政治学者
ハーバード大学国際問題センター研究員を30年務め、オックスフォード大で博士号。1983年、アルバート・アインシュタイン研究所を創設。
学者であって、「活動家」ではなかった。
②「普通の人」が担える理論
場当たり的に展開されてきた非暴力闘争に、軍事のような戦略に基づく計画性を持たせることを目指した。
宗教的・道徳的観点からではなく、軍事にも学びながら戦略的な闘争理論として体系化。
③きっかけはミャンマーの民主化闘争
④シャープの驚くべき行動力
⑤「交渉」ではなく「抵抗」
シャープの想定している「独裁体制」とは → 当初はナチス政権やスターリン政権。2011年の定義では、「ある個人・グループが、憲法上の制限や、権限の分担を認めず、被支配者に選挙権を与えぬまま、社会を支配する権利があると主張し、支配者として君臨し続けるような政治体制」で、「そこでは基本的人権が与えられず、反対者は抑圧されることとなる」。
力関係に圧倒的な差があるなかで、「交渉という方法が相互に満足できる解決策をもたらすことはない」としている。
「交渉ではなく抵抗こそが変化をもたらすのに不可欠だ」。成功するかどうかは「手にできるかぎり最強の抵抗手段を、最も適切な方法で賢く使い続けられるかどうか」にかかっている。
⑥いかなる独裁体制も不死身ではない
「暴君政治はどれも長続きしなかった」。「彼らの弱点を悪化させることは可能であり、独裁者の権力を解体させることは可能なのだ」。
支配者の政治的な力は被支配者との相互関係に規定されている。民衆の支えや協力なしには「政治的な力の源を確保し維持することはできない」。
⑦支配権力のアキレス腱
政治的な力の源はすべて、民衆側が政権を受け入れ、降伏し、従順することによっており、また社会の無数の人々や多機関の協力によって成り立っている。
「非協力」が各所で同時に発生し、継続的に実行されれば、独裁体制はおのずと弱体化。
⑧服従から脱け出すために
服従の7要因:
習慣
制裁への恐れ
道徳的義務
自己利益
支配者との心理的一体感
無関心
不服従への自信の欠如
恐怖感と従順の癖を克服すること。
個々人の単独行動では「独裁政権に対してはまったくの無力」。
⑨非暴力でこそ勝算がある
「非暴力でなければ」勝算はない。
「暴力を用いた反乱は相手の残忍な衝動を刺激し、民衆を以前よりもさらに不自由な状況に追い込む」。
⑩暴力は必要悪か?
なぜ暴力的な手段を排除できないのか=自分が無力な存在とは思いたくない=必要悪ととらえているから。
暴力に代わり得る抵抗手段として戦略的非暴力闘争論を提起。
追記
※1月13日(金)以降に、追記の上で再公開する場合があります。お含みおきください。
今回の「レジュメ」は以上となります。最後までお読みくださり、ありがとうございました。それではまた!