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「100分de名著」2024年の私的ベスト

今回はEテレ「100分de名著」の私的ベストについて考えてみたいと思います。まず、2024年の放送内容を掲載いたします。

2024年の放送内容

1月:ジーン・シャープ『独裁体制から民主主義へ』(中見真理)※
2月:ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』(朱喜哲)
3月:forユース(シュリーマン『古代への情熱』齋藤孝/松下幸之助『道を開く』土井英司/ロビンソン『思い出のマーニー』河合俊雄/『石垣りん詩集』文月悠光)
4月:フロイト『夢判断』(立木康介)
5月:トーマス・マン『魔の山』(小黒康正)
6月:宮本常一『忘れられた日本人』(畑中章宏)
7月:キャンベル『千の顔をもつ英雄』(佐宗邦威)
8月:「新約聖書」(若松英輔)※
9月:「ウェイリー訳『源氏物語』」安田登
10月:ロフティング『ドリトル先生航海記』(福岡伸一)
11月:「百人一首」(ピーター・J・マクミラン)
12月:有吉佐和子スペシャル『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『青い壺』(ソコロワ山下聖美)
※はアンコール再放送です。

総評

2024年は、総じておもしろい意欲的な回が多かったと思っています。印象に残っていやすいのは後半の回なのですが、特に優れた内容と思われたのは、ローティや石垣りん、有吉佐和子の各回でした。

本来ですと、朗読担当やらアニメーション担当やらについても検討を加えたいところですが、今回は①特に良かった月(トップ3)、②解説者のベスト、③新人賞(初回登場の解説者)に三つについて挙げたいと考えています。

一方で、複数回登場して解説をされている方も健在でした。再放送ながら、若松英輔さんの「福音書」、またウェイリー訳の『源氏物語』の安田登さんらの解説は見事でした。

特に良かった月

①ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』(朱喜哲)
「結論を出して対話を押し止めてしまうこと」が哲学の役割ではなくて、コミュニケーションを続けることがその役割であるとの指摘が鮮やかでした。また、文学・文芸やジャーナリズムなどのそれぞれの長所と役割にも言及されていて、哲学「こそ」が諸学の王というような立場を取っていないことにも感動しました。

②有吉佐和子スペシャル(ソコロワ山下聖美)
三作品の魅力について、余すところなく語ってくださいました(三作とも電子版を購入してしまいました)。私も『青い壺』のような、未だ書かれることを待っている「幸福」の姿を活写してみたいと思っています。

③forユース:『石垣りん詩集』(文月悠光)
文月さんの清新な語りが印象的でした。石垣りんについては、岩波文庫版で詩集を持っているので、折に触れて読み返してみたいと考えています。

新人賞(朱喜哲/文月悠光)

初登場の解説者のうち、特に年齢の若い方に注目したいと考えて、朱喜哲さんと文月悠光さんのお二人を称えたいと思います。いずれまた、番組で拝見したい方々です。

ベスト解説者(ソコロワ山下聖美)

有吉作品についてと同時に、ご自身を、特に作品をどう読み込んだのかについて語っていらっしゃる点に好感を持ちました。その意味では、番組が一種の読書会の「ライブ」であり、それに参加しているような感じさえ受けました。別のご著書も拝見してみたいと考えています。


これらの他にも、『ドリトル先生』を幸せそうに語る福岡伸一さん、マクミランさんの巧みな語り口(「百人一首」)等々、いずれもが見事な番組となっていたと思います。

今回は以上です。お読みくださいまして、ありがとうございました。






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しょうじ@マチナカ書房
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