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戯れうたCOMPLEX(07)

賢しげに批判ばかりと言う君よそれも批判と言うのでないかね
(24/06/24)

幸か不幸か実際に肉声としては聞いたことがないのだけれど、野党批判として「野党は批判ばかりしている。代案を出さないといけない」というものがあるようだ。実のところ、この地点から批判そのものがいけないというところまでは、あと一歩だと私は考えている。

批判とは、この国と社会とを営んでいくためには欠かせないものである。批判が保証されていなければ、弱者や少数派(両者は重なっていることがとても多い)は、生き延びることが難しくなってしまう。昔に比べて多少なりとも世の中がよくなっているのは、多くの先人たちの労苦の蓄積があったからであって、自然によくなったものでは決してない。批判、とくに健全な批判とは、絶対的に必要なものだ。

しかしながら昨今、そうした批判が「有効」であった記憶があまりなくなってはいないだろうか。批判や反対が巻き起こる度に「丁寧な説明をさせていただく」が繰り返される。政治的な決定が覆ることはない。オリンピックや万博、マイナンバーカード・・・。時として放たれる、背後からの「冷笑」の矢。

ここから学ぶべきなのは「無力感」ではない。声高に叫ぶことでも、ましてや実力を行使することなどでもない。「ない」を重ね尽くした上でなお残るものを、粘り強く探すことなのではなかろうか。そう、かのベートーヴェンの第九交響曲のように。

他の交響曲で見られるように、ベートーヴェンは第九交響曲でも苦悩との闘いを経た勝利と歓喜をうたい(第一から第二楽章)、その先に訪れる平静を描く(第三楽章)。しかし最終の四楽章で現れるのが、「友よ、そのような音楽ではなく!」とした、あの合唱なのである。

他人は皆険しき道と言うけれど一人勇みて荒れ野を歩む
(2025/01/09)

絶望の美酒の盃を傾けるのには、人生はあまりにも愛おしい。踏みしめて歩んだところが、やがて道となっていくのだろう。


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しょうじ@マチナカ書房
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