[3分短編SF小説]HEAVEN
HEAVEN
西暦3,000年──これまで人類には幾多の変化と時代があった。
まず危機の時代となる2000年~2180年があった。
2001年── 21世紀の戦争と平和を問う非対称戦争テロリズムとの戦いが起こった。
2030年──3度目の世界大戦を経て軍備拡張競争の終焉が訪れた。
2040年──東西は手を取り新しい国際秩序が開かれた。
2050年──細菌戦争が始まった。
2060年──エネルギーの氷河時代が到来した。
2070年──核融合エネルギーの時代が到来した。
2080年──エネルギー経済の改革が起こった。
2090年──温室効果危機が起こった。
2100年──新しい食品が登場した。
2110年──10億人の人々が失われた。
2120年──海洋農業が発展した。
2130年──都市革命が起こった。
2140年──テレスクリーンの王国が生まれた。
2150年──雇用と再雇用の波が起こった。
2160年── 21~22世紀のレジャーが浸透した。
2170年──科学技術が大減速した。
次に2180年~2400年に復興の時代が訪れた。
2200年──エコトピアの創設者が現れた。
2220年──苦しみの改善が起こった。
2240年──人口の制御が起こった。
2260年──世界送電網が建設された。
2280年──産業のルネッサンスが起こった。
2300年──世界経済の計画が起こった。
2320年──月の開発が起こった。
2340年──マイクロワールドの製作がなされた。
2360年──宇宙産業と宇宙探検が再興した。
2370年──バイオテクノロジーの新しい革命が起きた。
2375年──生きた機械が生まれた。
2380年──人間の改造が起こった。
そして転換の時代となる2400年~2650年があった。
2430年──永遠の若さと青春運動が起こった。
2460年──新しいライフスタイルが生まれた。
2490年──都市と国家が攻撃にさらされた。
2510年──人工のエコスフェアが構築された。
2540年──太陽系の征服が行われた。
2570年──恒星の地平線から脱出した。
2600年──人間の多様化が起こった。
更に新世界の創造の時代が2650年~3000年となる。
2650年──不老が確立し生と死の問題が薄くなった。
2750年──長寿社会への適応がなされた。
2850年──地球の相続が行われた。
2950年──冒険的大事業が始まった。
西暦3,000年──天空都市ヘブンシティー。そこでは暦年3,000年を祝うカウントダウンイベントが開かれていた。ヘブンシティーを冠する空中に浮かぶコロニーである人口8,000万人の大気圏国家ヘブンでは人工神と人工天使たちの営みの中、天国の様に完璧に近い世界が広がっていた──テロリストと戦う事を仕事とする、対テロリスト暗殺者の21歳の女性カエルムは黒い髪と目、透き通る白い肌、くっきりした鼻筋、ぷっくら膨らんだ唇の美貌の暗殺者だった。彼女がシャワーを浴びている所に脳内に音声が届く。──カエルム。マダムカエルム。
カエルムがバスタオルを取りシャワー室から出るとホログラムの人工天使スカイシティー治安維持担当ピースエンジェル量産型が現れる。翼の生えた美しい女性型のヴェールを羽織ったピースエンジェル量産型が告げる。
「仕事だ華麗なる暗殺者マダムカエルム。次の指令を受け与える──カウントダウンイベントを強襲しようとするテロリストを阻止し暗殺せよ。」
「──了解」と告げるとカエルムは薄化粧をして目立たない黒のスリムフィットワンピースでステルス特性を発揮し街に出る──さぁ仕事の始まりだ。
脳内で声が響く──先ずは首都に迎え。カエルムはカウントダウンイベントに活気付く街中を抜けて歩く。途中で知り合いのレストランの店主から声をかけられる。「お出かけかい?」「ええ友人とカウントダウンイベントを見に行くの」。超低空浮遊列車エアートレインのあるサンドシティー駅に向かう。カエルムの住むサンドシティーは人工の砂で覆われた砂漠地帯の都市で2200年のエコトピアの創設以降、人工オアシスが点在する乾燥地帯だ。カエルムは超低空浮遊列車エアートレインサンドシティー駅のホームで電車を待つ。1人の上半身をサイボーグ化した男がカエルムを掴み線路に投げ飛ばす。カエルムが呟く。
「『押し屋』(電車に人を落とす殺し屋)いや、『投げ屋』か」
エアートレインが駅に到着しようと高速で迫ってくる。カエルムは自身の足首に《羽》のマークを指で描くとカエルムの足から翼が生え空に舞い上がる。エアートレインが無事に停車する。
『押し屋』が呟く。
「やはりお前の特殊能力は『創造』(空中に絵を描く事でそれを具現化する能力)か、噂には聞いていたが初めて見た。2380年。人間の改造が起こって以降様々な特殊能力を人類は身に付けて来たが『創造』に適合出来た人間は今まで1人もいない。体に相当な負荷が掛かっている筈だ。長期戦は苦手だな。」
カエルムは何も答えない。空中に《ロケットランチャー》の絵を指で描くと何もない空気中からロケットランチャーを取り出し『押し屋』に発射した。『押し屋』が吹っ飛ぶ。頭を振り爆煙の中体を起こし『押し屋』が返答する。
「俺の体はバイオスチールだ。生身なら死んでいたぞ。イカれた女だ。」
カエルムが返事する。
「私は行くところがある。貴方に構っている暇はない。」
カエルムは停車中のエアートレインに乗車する。『押し屋』がエアートレインに向け右手のキャノンを構える。扉が閉まる前にカエルムが電車の外に《防護シールド》の絵を空気中に描く。『押し屋』の放ったキャノン砲が防護シールドで防がれる。列車が走り出す。
走り出した列車で駅から未だ此方を睨みつける『押し屋』を確認するとカエルムはエアートレインの窓を開ける。カエルムが《自爆型追尾ドローン》の絵を窓の外に指で描く。ドローンが具現化し『押し屋』に向かっていく。『押し屋』が爆散する。カエルムは「お返しよ」と列車の窓の中で囁く。
──カエルムの特殊能力は『創造』では無い。実際には『転送』という数100万人に1人しか発現しない能力だった。『転送』ではカエルムが空気中に指で絵を描き現れる翼や武器は実際に何処かの生物工場や兵器工場に備蓄されていてそこから空間を超えて量子テレポートでカエルムの元へ送られてくるのだ。『創造』という特殊能力を使える人間はいない。人工神や人工天使の中には『創造』を司る存在がいると人伝に聞くくらいだった。脳内で声が響く。──首都ヘブンシティーの大統領の講演で狙撃事件が起こる可能性がある。今回のテロリストは狙撃チームだ。彼らを阻止せよ。カエルムを乗せてエアートレインは首都、天空都市ヘブンシティーに向かう──