独立系書店など、FAXをもたない書店に情報を届ける有効手段。FAX用の原稿を作る手間も省けて、業務効率化につながっている。
BookCellarを利用する書店・小売店ユーザーに対して、新刊情報やロングセラーについての広告ページを作成できるプロモーション機能。書店に告知したい内容に、オンライン発注や資料ダウンロードを組み合わせることができ、BookCellar上で申込、制作、公開を一元管理できるものです。
今回お話を伺ったのは、株式会社トランスビューの工藤社長。トランスビューは、出版社として書籍の刊行を行う傍ら、中小出版社の取引代行を行っている、流通代行会社としての顔も持っています。広告ページの開発段階からテスト利用いただいています。
2022年7月の有料化以降も継続利用いただいているトランスビューに広告ページのメリットがどんなところにあるか、教えていただきました。
トランスビューの取引代行は、取次や出版社による見計らい配本(書店が発注していない商品を、見込みで送品すること)を利用しない、「注文出荷制」を採用している。書店は、トランスビューと取引契約を結ぶことで、取引代行で扱う出版社の書籍を1冊から発注することができる。取引代行する出版社は171社(2022年9月末時点)に及ぶ。
自社本の営業方法として定着した広告ページ
――広告ページの利用は何度目ですか?
工藤 通算すると40回以上です。「今週でた本、来週出る本、重版&パブ」を広告ページで制作・公開しているので、毎週1本は利用しています。
――広告ページの作成から公開までの操作はわかりやすかったですか?
工藤 とてもわかりやすかったです。事前に準備ができる新刊や、毎週公開している広告ページの制作は、社内のスタッフが担当しています。全五段広告を掲載するタイミングや新聞に書評が掲載されるタイミングなど、スピードが求められる内容の場合は自分で広告ページを制作しています。まとめて購入しているので、好きなタイミングで制作、公開できるのは便利です。
※広告ページは1度に10枠まで購入できる
独立系書店などFAXを持っていない書店に情報を届けるのに有効
――他の告知手段と比べて「広告ページ」を使うメリットはどんな点でしょうか?
工藤 広告ページを使う理由として、一番大きいのは、FAXを利用しない書店へ情報を届けられることです。それに加えて、FAXする原稿制作の手間が軽減されることも大きいです。書店へのFAXDMは、原稿をデザイナーに依頼する場合や、社内で制作する場合などがありますが、トランスビューでは自社で制作しています。原稿はある程度フォーマットがあるので、数時間程度の作業ですが、事務作業は少ないに越したことはありません。
――FAXのない書店が増えているのでしょうか?
工藤 増えていますね。独立系書店と呼ばれる書店は、FAXをもたないケースが多いです。FAXを置く背景には、トーハン、日販への返品依頼をFAXで送る必要があることが多いため、大手取次と契約せず、仕入れには、子どもの文化普及協会、八木書店、BookCellarなどのオンラインシステムを使うのであれば、メールがあれば事足ります。感覚的には、トランスビューとこの1~2年に取引を始めた書店の半数くらいは、FAXがないかもしれません。
――「広告ページ」とFAXの使い分けはどのようにされているのでしょうか。
工藤 併用しています。広告ページを先に出しているので、FAXでDMを送っている書店から、Webで見られるから送らなくていいよ、という連絡が入る場合もあります。
書籍の営業方法は「FAXする、郵送する、営業に行く」の3つ
――新刊の案内方法というのは、どんな方法があるのでしょうか。
工藤 「FAXするか、注文書を郵送するか、書店に直接営業に行く」が基本です。ただ、直接営業は、時間も経費もかかります。地方であれば、出張するだけの刊行点数があるかが、重要になってきます。
――トランスビューでは、中小出版社の取引代行をされていますが、営業代行はしないそうですね。
工藤 営業は各社が自力でやっています。代わりに営業すると、トランスビューの系列会社として見られてしまうためですね。ただし営業メニューとして、FAXの代理送信は請け負っています。全国1,400店舗ほどに送信しています。コスト的にも大きくないので、取引代行元から新刊が出る際はほぼ100%依頼があります。
――新規で立ち上げた出版社は、取引先書店の開拓から始まるんですね。
工藤 そうですね。書店のホームページで連絡先を調べて、一件ずつ新刊案内を送るなどして注文を取っている会社もあります。
新規出版社は、立ち上げの際にはなんでもやったほうがいい
――BookCellarの広告ページを公開すると、書店アカウントをもつ全ユーザーに通知メールが届きます。知名度のない会社でも書籍に興味をもってもらうことができそうです。
工藤 新規出版社は、名前を売る意味でも、FAXのない書店へのアプロ―チという意味でも、なんでもやったほうがいいです。
――利用後の反響はいかがでしょうか。
工藤 満足しています。
――今後解決したい課題はありますか?
工藤 閲覧する書店をもっと増やしたいですね。あとは、広告ページの機能で、取次ルートで見計らい配本をしている出版社の場合に「配本不要の意思を表明できるボタン」等があれば、返品率の低下につながると思います。
――具体的にはどんな機能でしょう?
工藤 出版社の営業は、書店の要望を伺えない場合に見計らいで送品数を決定します。最終的に取次から配本された書籍と各店舗の必要数がマッチしないケースが起こって、返品率が高くなります。配本要りませんよ、というのを「ゼロ回答」と呼びますが、わざわざFAXの送信費用を負担して、連絡してくる書店さんは少ないのが現状です。それを、ボタン一つで回答できれば、潜在的な書店側のニーズがすくい取れます。
4割以上ともいわれる出版業界の返品率問題。トランスビューでは、必要な注文数を1冊から配送する直取引を構築し、ひとり出版社などの在庫を預かり、仕組みとして提供しています。BookCellarを利用する独立系書店は、約400店。書店の規模にかかわらず、本の情報を入手でき、発注できる。出版社は、広告ページを通じて、事前注文数の精度を高め、配本数を適正化することで、流通コストを軽減できそうです。
工藤さん、貴重なご意見ありがとうございました!
(取材・撮影 BookCellar運営事務局)