【本094】『さんかく』
著者:千早茜 出版社:祥伝社文庫
私はnoteのほかに、Twitterで読んだ本や日常を綴っているのだけれど、ある日、そこにとても素敵な茶器に中国茶、和菓子やケーキを投稿する作家さんが頻繁に流れるようになってきました。その方が、千早茜さんでした。
お茶やスイーツの他にも美味しそうな料理の投稿も並びます。きっと料理が心を満たす、その極意を知っている方なんだろうなーと思いました。とはいえ、まだ、千早さんの著書は一冊も読んでなくて、何か読みたいと選んだ本が『さんかく』でした。なぜなら、帯に「「おいしいね」を分かち合えるそんな人に出会ってしまった」と書かれていたからです。
この本は、タイトルとおり三角関係の物語です。京都の町屋に住む高村さん、高村さんとルームシェアをすることになった伊東くん、そして、伊東くんの彼女の華さんの微妙な距離感と心の動きを綴ったお話し。三角関係といっても重くなく、かといって、軽くもなく、いろんな場面に共感しながら、日常の風を感じながらさらさらと読める物語です。
その物語の背景にずっとあるのが、高村さんの作る手料理の数々。古い家の湿気や冷たい風が吹き込む感じ、そのなかで作る包丁の音、鍋からたつ湯気、「おいしいね」と囁き合う声、なんだかリアルに感じながら読みました。
三角関係とかいろいろとあるけれど、でも、素直に「おいしい」ものを「おいしい」と言える関係っていいなと思いました。